1話5分で読めるギリシャ神話

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アフロディーテ(ビーナス)の浮気

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〈ヘーパイストスに見つかるアフロディーテとアレース〉出典

「アフロディーテ(ビーナス)を抱けるなら、どんな恥ずかしい姿を晒しても構わない」

女神の中で最も美しいアフロディーテ、その夫は神々の中でも最も醜い鍛冶の神ヘーパイストス。釣り合わない組み合わせの代表といえるだろう。

もともと恋多き女神は、当然のごとく浮気をしていた。相手は軍神アレース(マルス)。大神ゼウスと妃ヘーラーの子である。アレースは、同じ戦いの女神アテーナとよく比べられる。アテーナは守る戦い、アレースは戦いのための戦いで乱暴だったので、人気はなかった。が、美神である。

ヘーパイストスの精巧なワナ
ある日、不義をみかねた太陽神ヘリオスは、アフロディーテの密会のことを夫ヘーパイストスに告げ口した。
ヘーパイストスは憤慨したが、すぐに妻に釈明を求めなかった。
また、その醜さからは想像もできないほどの我慢強さを持った冷静な技術者でもあった。ベッドの上に見えない鎖を張りめぐらした精巧なワナをしかけたのである。

アフロディーテとアレース
ヨアヒム・ウテワール〈神々に見つかるアフロディーテとアレース〉

いつものようにヘーパイストスが出かけると、アフロディーテはアレースを招き入れ、二人は裸になりベッドに入った。その途端、精巧なワナが動きだし、裸の二人は身動きがとれなくなった。あられもない裸のまま抱き合った二人はどうすることもできず、そのまま夫が帰ってくるのを待つほかなかった。

帰ってきたヘーパイストスは怒りに震えたが、オリンポスの神々を大声で呼び集めた。妻の裸を見られることもいとわず、二人を晒し者にしたのである。冷酷である。

アポローンも、うらやましがった浮気
この時、アポローンがヘルメースにささやいた。
「アフロディーテを抱けるなら、どんな恥ずかしい姿を晒してもかまわないと思わないか」
「それができたらどんなによかろう。この三倍の鎖でぐるぐる巻きにされて、神々に見られても構わぬ。アフロディーテと寝られたならな」
と、ヘルメースは答えた。

集まった神々はみな哄笑したが、ポセイドーンだけは笑わずヘーパイストスに言った。
「放してやれ、アレースにはそなたの要求する通りの償いをさせると、私が約束する」
ヘーパイストスが鎖を緩めると、アフロディーテとアレースはそれぞれ自分の神殿に飛んで行った。

鬱憤をはらしたヘーパイストスだが、アフロディーテを離縁することはなかった。
その後、アフロディーテの浮気がおさまったかどうかは...神のみぞ知る?

ちなみにアフロディーテの恋のお相手は多々いるが、有名なのはこの軍神アレース、若きつばめアドニス、トロイアの武将アンキーセース(アイネイアースの父)である。

ボッティチェッリ作ビーナスとアレース
ボッティチェッリ〈アフロディーテとアレース〉