1話5分で読めるギリシャ神話

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アーキスとガラテイア

キュプロクス
オディロン・ルドン〈キュプロクス〉オッテルロー・クレラー・ミュラー美術館

スキュラはとても愛らしいニンフ。
いつもたくさんの人々から求婚されていました。が、彼女はそれがうっとうしくて、いつも海神ネーレウスの娘ガラテイアの洞窟にきてはぐちっていました。
「何とかならないかしら。私はちっともその気がないのに言い寄ってくる男がいっぱい」

ある日、ガラテイアはスキュラに髪をとかしてもらいながら言いました。
「みんないい家柄の人達ばかりじゃない。だから、ちゃんとお断りすれば何もおこらないでしょ。それにひきかえ、私は多くの姉妹(ネーレイデス)に守られていながら、獰猛な一眼巨人から海の底に逃げるしかなかったのです」
ガラテイアはのどをつまらせ、目から涙を流しはじめました。スキュラはその涙を白い指でふきながら、たずねました。
「女神さま、どうなさったのですか。その理由を教えてください」

ガラテイアは話し始めました。
「両親にとても愛されていたアーキスは、まだ十六になったばかりの若者でした。でも、私の愛のほうがご両親よりも大きかったのです。私が彼と一緒になろうと思っていると、あの獰猛な一眼巨人ポリュペーモスが私と一緒になろうとしました。アーキスを慕うわたしの心と一眼巨人を憎む気持ち、どちらが大きかったか分かりません。

しかし、さすがアフロディーテ様です。愛とは不思議な力を持っています。あの獰猛で森の恐怖と呼ばれていた、またゼウスをも侮る一眼巨人ですら、愛とはどういうものなのかに気づき、自分の日々の仕事され忘れてしまったのです。熊手で髪をとかしたり、鎌でひげを刈り取ったり、自分の顔を水面に映しては、身なりを整えはじめたのです。また、その獰猛さもおさえられ、わけもなく海辺を散歩しては疲れると自分の洞窟にひそんでしまい、その時は彼の洞窟の近くを通る舟も襲われることがなくなったほどです。

ガラテイア
モロー〈ガラテイア〉オルセー美術館

ある日、ポリュペーモスは海に突き出した絶壁の先端に腰をおろすと、葦笛をとりだし、愛の調べを奏ではじめました。調べは山や森深くまで届きました。それはわたしへの愛の大きさとわたしの冷たさを責めるものでした。

アーキスとわたしは森の中で寄り添っていました。そして、一眼巨人は遠くにいるものとばかり思っていたのです。ところが、葦笛の調べが途切れてからそんなに経っていないにもかかわらず、一眼巨人はすぐ側まできており、私達は発見されてしまいました。

『見つけたぞ!これがお前たちの最後の逢い引きにしてやる!』
ポリュペーモスは岩さえも震えるような大声で叫び、私達に迫ってきました。私はすぐ海の中へ逃げましたが、アーキスは海に逃げることはできず、丘を走っていきました。
『ガラテイア、助けてくれ〜!助けて〜!お母さん、お父さん』
一眼巨人は山の端から大きな岩を砕き持ち上げると、彼に投げつけたのです。岩のほんの一部が当たっただけでしたが、アーキスは岩につぶされ死んでしまいました」

ガラテイアはなおも話し続けました。
「私にはアーキスのためにたった一つのことしかすることができませんでした。かれが押しつぶされた岩の間からは血が流れ出ていましたが、その血の色がだんだん薄くなり、水のようになり、やがて、澄んだ河に変えてあげることです。今もその河はアーキスと呼ばれているのです」

ガラテイア
モロー〈ガラテイア〉ティッセン=ボルネミッサ美術館