1話5分で読めるギリシャ神話

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ヘーローとレアンドロス

ヘーローとレアンドロス
ウィリアム・エッティ〈ヘーローとレアンドロス〉

風もおさまった次の日の朝
海辺で街の人々がざわめいていました。塔の上から見ていたヘーローは、胸騒ぎがして走り出しました。そして、人々をかき分けて中に入っていくと、大きな叫び声をあげました。
「あぁ、レアンドロス様〜」

海峡を挟んだ恋
ヨーロッパとアジアを隔てているヘレスポントス海峡(現ダーダネルス海峡)。
ヨーロッパ側のセストスという街にはアフロディーテの女神官ヘーローが住んでいました。
一方、アジア側の街アビュードスには、レアンドロスという若者が住んでいました。

「私は神官ですので、恋は禁じられています」
と、ヘーロー。
「二人が結ばれることを、アフロディーテ様は許してくださる。
なんといったって愛の女神様なんだから」
と、レアンドロスは説得しました。

最初は拒んでいたヘーローも、この言葉に愛を受け入れることにしました。

しかし、昼間は人目があります。そこで、毎夜レアンドロスか海峡を泳いで渡り、会いに行くことになりました。ヘーローが塔の上で火をともし、レアンドロスはそれを目印にしたのです。夏や秋はまだ風も強くなく、海も凪いでいることも多く、彼は海峡を泳ぎ渡ることができました。

ヘーロ−の最後の眺め
フレデリック・レイトン〈ヘーロ−の最後の眺め〉

ある冬の嵐の夜
こんな夜には会わなければ良いと思うのは大人の考えですが、若い二人には通用しません。レアンドロスは今夜も海峡に飛び込んだのです。

「まぁ、どうしましょう!」
ヘーローが火を灯しても、すぐ強い風がその火を消えてしまいます。彼女はレアンドロスのことが心配で心配で、ただただ暗い海峡を見ているしかありません。

レアンドロスはいつも通り、まっしぐらに対岸の塔にむかって泳いでいました。が、荒れた暗い海の中、彼は高い波の上に持ち上げられたかと思うと、真っ逆さまに落とされます。何度もなんども荒波にもてあそばれ、方向も見失い、とうとう力尽きてしまったのです。

いくら待っても、現れないレアンドロス
「今夜は、この嵐ではこれないのね。きっと引き返したのだわ」
ヘーローは、休むことにしました。

風もおさまった次の日の朝、海辺で街の人々がざわめいていました。塔の上から見ていたヘーローは、胸騒ぎがして走り出しました。そして、人々をかき分けて中に入っていくと、大きな叫び声をあげました。

「あぁ、レアンドロス様〜」

ヘーローは泣き叫び、髪をかきむしり、彼に抱きつきました。
しばらくそうしていましたが、彼女はいきなり立ち上がると、塔の上に駆けのぼり、海に身を投げてしまったのです。

※レアンドロスがヘレスポントス海峡を泳いで渡れるはずがないという人々に対して、詩人バイロンは片足が悪いにかかわらず、約1時間10分で海峡を泳ぎ渡ったということです。

ヘーローとレアンドロス
ルーベンス〈ヘーローとレアンドロス〉