1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈アートバイブル〉も、絵画でわかりやすい聖書です。

おおくま座:カリストー

アルテミスに変身してカリストーに近づくゼウス
フランソワ・ブーシェ〈アルテミスに変身してカリストーに近づくゼウス〉プーシキン美術館

森でカリストーは若者に出くわしました。すると、若者は敢然とヤリをかまえました。この瞬間、カリストーは我が子に殺されることを観念しました。

何という運命なのだろうか!カリストーは、一瞬で今までのことを想い出しました。

カリストーは、その名のごとく「最も美しい」ニンフ。男には全く興味がわきません。そして、あの処女神アルテミスを崇拝していました。他のニンフと同じく、女神の狩りのお供に出かけることが幸せでした。

しかし、美しさは禍のもと。ゼウスが目をつけたのです。通常のアプローチでは、男嫌いのカリストーを口説くことはできません。ゼウスは一計を案じ、女神アルテミスに変身し、彼女と戯れている間に身ごもらせたのです。

最初のうちはお腹も目立たず、いつものようにアルテミスのお供をしていました。しばらくして沐浴する時、他のニンフにお腹の膨らみを見られ、妊娠を知られてしまいました。アルテミスは激怒し、カリストーを追放しました。

アルテミスに妊娠を知られるカリストー
ティツィアーノ〈アルテミスとカリストー〉アムステルダム国立美術館

しばらくして、カリストーは男の子アルカスを産みました。

ゼウスの妻ヘーラーは、嫉妬に狂いました。
「あの娘を妻にして、私を追い出すつもりなのだ」
その怒りは頂点に達し、カリストーを呪いました。
「夫をとりこにした、おまえのその美しさを取り上げてやる!」

すると、カリストーは両手・両足を同時に地に着けました。両腕をさしのべて哀願しようとしましたが、その腕はもう黒い毛で覆われています。手はずんぐりと丸くなり、ツメは恐ろしいカギヅメになりました。ゼウスがほめていた美しい口も前に伸びて牙がはえ、声も「ウォーウォー」と叫ぶだけです。

「最も美しい」名のカリストーは、恐ろしい「クマ」になってしまったのです。その心だけが元のままのやさしい乙女でした。クマですので戦えば勝てるのですが、いつも他の動物たちから逃げていました。

そんなふうに森で生活していた時、若者になった息子アルカスに出くわしたのです。カリストーは若者が自分の息子だとすぐに分かりました。アルカスはヤリを構え、クマになった母に投げつけようとしています。彼女は観念しました。

その時、ゼウスが二人を哀れみ、天に連れて行きました。こうして「大熊座」と「子熊座」ができたのです。

大熊座と小熊座

ヘーラーは、カリストー母子が天の名誉の座におかれたことに怒りました。そして、育ての親である大洋の神テテュスとオケアノスに哀願しました。
「私を不憫と思うのならば、あの二人が海に降りてくるのを禁じてください」
こうして、「大熊座」と「子熊座」は海の地平線から下に沈むことはないのです。