1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。姉妹サイト〈1話5分で読める聖書-アートバイブル

アンティゴネ 3[ソポクレス作]予言者テイレシアス

アンティゴネ

アンティゴネ、町外れの岩窟へ

コロス:町の長老たち。アンティゴネ引き立てられて登場)

アンティゴネ
みてください。祖国の町のみなさん。
黄泉の王が、私を生きながら三途の川の岸辺へと連れて行くのです。婚礼の歌も歌ってもらえず。
コロス
それでも、名誉と賞賛を受けて、あなたは自ら望んで、生きながら黄泉の国へ下っていかれるです。
アンティゴネ
あなたがただけでも、証人になってください。
どんなに私が親しい人たちにも嘆かれず、墓ではなく岩窟に行くことになったのか。
コロス
向こう見ずの結果が、このような結果を招いたのです。
アンティゴネ
ああ、恐ろしい母上の結婚にまつわる禍い。兄弟でもある父オイディプスの禍い。そんな二人の間に生まれた私。なんと惨めなことでしょう。

アンティゴネへの最後通告

(クレオン登場)
クレオン
さあ、さっさと連れて行け。そして、そのままにして、放っておくのだ。もう、この世に戻る道はない。
アンティゴネ
死んでいくにしろ、こうあって欲しいと思っています。あの世に行ったら、
父と母に可愛い娘だと言われますように。
それからお兄様、あなたにも可愛い妹だと。
でも、どんな神々の掟を犯したというのでしょう。だって、道を守ることが、道をはずれたと言われるのですから。それにしても、神々が私を快くお受けなさるのなら、仕置を受けた自分の過ちをきっと覚ることでしょう。でも、もしこの人たちが間違ってるなら、道をはずれた裁きに私を処刑するより、もっともっとひどい目を、この人たちがいつか見ることになりましょう。
コロス
また、激しい心がこの方の胸を占めているようだ。
クレオン
早く、引っ立てろ。時間が経ってもけっして許されることではない。
アンティゴネ
ああ、テーバイ、父祖代々の都、それに祖先の神さま方、もう連れていかれます。ごらんください、テーバイの王家の方々、王族の最後の、たった一人残ったものが、どんな目に、しかも、どんな人間から、あわされるのか、神への道を大切に守ったばかりに。
(アンティゴネ、衛士たちに引き立てられて退場)

予言者テイレシアス

予言者テイレシアス、クレオンに忠告

(予言者テイレシアス、子供に手を引かれて登場)
クレオン
テイレシアス殿、何か変わったことでもあったかな。あなたのご意見はいつも尊重しております。
テイレシアス
では、よく思案なさい。御身はカミソリの刃を渡っていると。
クレオン
何と言われる、この身が震えます。
テイレシアス
私は、いつもどおり、鳥占いの座についていた。そこはあらゆる鳥類が集まり寄るところ。すると、何とも知れぬ怪しい鳥の鳴き声が聞えた。不吉な荒々しさで、まったくわけもわからない叫びなのだ。しかも、互いに殺意を含んで、引き裂きあおうとしていた。

すぐに私は、心配から、十分に火の用意をした祭壇で、焚物占いをやってみた。ところが、その生贄の脂へも、火は燃えうつらず、燃えた薪に、腿肉からじくじくと湧き出た汁がふりかかり、煙を立てて噴き上がって、胆の汁が空高く飛び散ったのだ。そして、腿骨は油を垂らし、包んだ脂肪の層から外へ出てしまった。
これは、オイディプスの息子ポリュネイケスの腐肉のために、この地が穢れたからだ。
だから、よく思案なさい。死人をさらに殺して、それが何の誉れというのか。

クレオンの頑迷

クレオン
いや、ご老人。占いには多くの者が金銭をかけるもの。ご老人も、ついに欲に目がくらんだか。だが、ポリュネイケスの埋葬はさせぬ。
テイレシアス
やれやれ、全くもって、私が真実でない占いをすると罵るのか。
クレオン
占い師という輩は、みな金好きな連中ばかり。
テイレシアス
何だと、口に出してはならぬことまで言わそうというのか。なら、もう黙ってはいない。
クレオン
話すがよかろう。
テイレシアス
では、よく心得たがいい。すぐに御身の血をわけた者の一人が自分から屍となり、代りに差し出すことになろう。それも御身が、アンティゴネを地下に閉じ込めたその償いだ。そのうえに、黄泉の神へ当然属すべきポリュネイケスを、この世に不当にも葬いもせず清めもせずに放っておいた。死んだ者は、もはや御身に関係はない。それを、御身がむりやりに地上に押しとどめたのだ。それらの過ちゆえ、後々から禍いを報いてゆく神たちが、御身を待ち伏せしているのだ。

黄泉の神、また復讐の女神が同じ禍いをもって、御身を苦しめようとされるのだ。すぐにも、御身の家には、男や女の号泣の叫びが起ころう。また、あらゆる町が、敵意を含んで立ち騒ごう。その町からの武士の屍をさんざに引き裂いて、犬や野獣や、または翼をもった大鳥どもが葬いをし、汚れた臭いを故郷の町へと、もたらそう。

またよく、見分けたがいい、私が金を貰いしゃべっているかどうかを。
では子供よ、私を家へ連れ帰ってくれ。
(テイレシアス、小童に手をひかれて退場)

前のページへ 次のページへ

【ギリシャ悲劇関連記事】