1話5分で読めるギリシャ神話

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カリュプソ島の船出 後編

ポセイドーンの白馬
ウォルター・クレイン〈ポセイドーンの白馬〉

オデュッセイア 第五歌
「えい、なんたることだ!わしがアイティオペス人の国へ行っている間に、オデュッセウスめについて、神々は考えを変えたらしい。この国から故郷に帰る運命になっているパイエケス人の国の近くまで来ているではないか」

ポセイドーンは三叉の矛をとり、雲を集め、東西南北あらゆる風に海を荒らさせた。

「ああ、わしはなんたる不運な男か。仙女カリュプソがまだまだ苦難にあうと言われたとおりになった」

オデュッセウスが叫んだとたん、大きな波が筏をのみ込み、ひっくり返した。彼は海に放り出され、必死で筏にしがみついた。

これを見たカドモスの娘、海の女神レウコテエがオデュッセウスを憐れみ、海中より姿を現し言った。
「不運な男よ、ポセイドーンは何におこり、そなたに数々の苦難をあたえるのか。さあ、ぬれた衣服を脱ぎ、筏はもうあきらめなさい。そして、この霊力をもったヴェールを胸のしたに巻きなさい。陸にあがったら、海を背にしてそのヴェールを海に投げ返せばよい」

※ポセイドーンは、自分の息子キュクロプスの目をオデュッセウスがつぶしたことに腹を立てていた。

このとき、ポセイドーンはまたもや大きな波を起こし、筏を打ち粉々にした。オデュッセウスは壊れた材木にまたがると、衣服を脱ぎ、ヴェールを胸に巻いてから海に飛び込んだ。

「オデュッセウスよ、あてもなく海をさまようがよい。いずれ、パイエケス人の国に着こうが、それだけ苦労すれば、わしはもう文句は言うまい」
ポセイドーンはたてがみ美しい馬にムチをあて、自分の宮殿に帰っていった。

女神アテーナ
〈オデュッセウスを何度も救う女神アテーナ〉出典

二日二晩、オデュッセウスは嵐にもてあそばれた。
三日目の朝、女神アテーナはあらゆる風に命じて眠りにつかせると、オデュッセウスは前方にパイエケス国の陸の影を見、必死で泳いでいった。が、海に突き出た岸壁や岩場ばかりで、上がれる海岸はなかった。

「ああ、情けない。陸に上がれる場所が見当たらぬ。このままでは、またポセイドーンや奥方のアンピトリテーが飼っている海獣をけしかけてくるかもしれぬ。いかにわしを憎んでおられることか」

またもや大波がオデュッセウスを襲い、彼はとっさにギザギザの岩にしがみついた。こうして、何度も何度も波が彼を襲い、その手からは血がふきだし、彼は手を離し溺れそうになった。

この時、女神アテーナは岩場に沿って泳ぎ続けるよう彼を導いた。そして、彼はとうとう清らかな川の入江にたどり着いた。川辺にあがると、彼は倒れてそのまま動くことはできなかった。しばらくしてから起きあがり、女神レウコテエのヴェールをほどき、海を背にして海に投げ入れた。それから、彼は森の茂みを見つけ、木の間にネグラをつくり、乾いた葉をかけて横になった。

女神アテーナは、オデュッセウスの目に眠りをふりかけてやった。
また、のちのちパイエケス国の王女ナウシカアが彼を発見し、宮殿に案内することも計らってやった。