1話5分で読めるギリシャ神話

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【第10歌】前編:魔女キルケ

3枚目のジョン・W・ウォーターハウス作〈キルケ〉の後ろの鏡を良くみてください。向かって右、キルケのあげた左手の下に男が写っています。これが、オデュッセウスです。なかなか、気がつきませんよね。
絵画には、こんな演出が良くあります。鏡が描いてありましたら、何が映っているか良く見てください。必ず、意味のある人物や物が写っています。

ライストリュゴネス族
オデュッセウスの船隊を襲うライストリュゴネス族

(オデュッセイア 第10歌 前編)

浮島アイオリエに住むアイオロス

キュクロプスの難を逃れたオデュッセウス一行が、次に着いたのが浮島アイオリエでした。この島には神々の寵愛を受けて住んでいたのがアイオロス。オデュッセウス一行は、ひと月の間歓待を受けました。
アイオロスは、ゼウスにより風の司に任じられています。出港に際して、航海が穏やかになるように、吹きすさぶ様々な風を閉じ込めた革袋をオデュッセウスに渡しました。

九日間昼夜もなく、オデュッセウス一行は漕ぎに漕いで、故郷近くまでやってきました。ところが、オデュッセウスが安心から睡魔に襲われた時、部下たちが革袋を開けてしまったのです。金銀が入っていると勘違いしたからです。凄まじい疾風が起こり嵐となり、なんと浮島アイオリエに逆戻りしてしまったのです。

「オデュッセウスよ、どうしてまた戻ってきたのか」
事情を話し、再度助けを乞うオデュッセウスに
「世にも忌まわしい男だな、即刻この島を立ち去ってもらいたい」
アイオロスは、もはや助けてはくれませんでした。

荒海の中、7日目に着いたのがテレピュロスの町です。ここに住むのはキュクロプスのごとき巨人ライストリュゴネス族。オデュッセウス一行は海岸でいきなり襲われるという、まさに悪夢に遭遇。捕まった部下は焼き鳥のように串刺にされて食べられてしまいました。結果、残ったのはオデュッセウスの船一隻のみ44名になっていました。

魔女キルケのアイアイエ島

テレピュロスの町を離れ、やっとの思いでたどりついたのが魔女キルケの住むアイアイエ島。キルケはイアソンの「アルゴー船の遠征」に出てくる魔女メーデイアの従妹です。

オデュッセウス一行は、疲れから2日間はただただ横になっていました。3日目の朝、オデュッセウスはこの島にはどんな人間、怪物が住んでいるのか、一人探索に出かけました。見晴らしの良い岩だらけの高見に出ると、密生した木立の中に、ひとすじの煙が立っているのが見えました。

オデュッセウスは浜辺に戻ると、残った44名を半分に分け、自分とエウリュロコスを隊長にしました。そして、どちらの隊が煙を確認にいくか、くじで決めました。エウリュロコス隊22名が出発することになりました。

キルケ
ライト・バーカー〈キルケ〉

故郷を忘れる毒(キュルケオーン)

一行が木立の中のキルケの館までくると、館の前には狼や獅子などの凶悪な動物が徘徊していました。一行は驚きましたが、動物は近くに来るとじゃれたりしてとても大人しいのです。それもそのはず、この動物たちはキルケに姿を変えられた人間でしたが、心は人間のままなのです。

館の中からは、機を織る美しい歌声がきこえてきます。一行は扉を叩いて、呼びかけました。キルケは扉を開けると、一行を中に招きました。みんなキルケの後についていきましたが、エウリュロコスだけは何か変な予感がして中に入らず、中をうかがっていました。

豚にされたオデュッセウスの部下たち

キルケは一行にソファーと椅子をすすめると、チーズと小麦粉と蜂蜜をプラムモスの葡萄酒にまぜました。そして、故郷を忘れる毒(キュルケオーン)を入れたのです。この毒入りの飲み物を飲んだ一行をキルケが杖で叩くと、なんとみんな豚に変身してしまいました。
「さあ、豚小屋に行って、仲間と一緒に寝ておいで」

一部始終を驚きとともに見ていたエウリュロコス。急いでオデュッセウスの元に帰り、仲間におこった悲惨な運命を報告しました。残っていた部下たちは悲しみましたが、オデュッセウスはすぐに助けに行こうとしました。
エウリュロコスは反対しましたが、彼は「これは、頭のつとめである」と出かけて行ったのです。

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キルケ
ジョン・W・ウォーターハウス〈キルケ〉

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