1話5分で読めるギリシャ神話

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キュクロプス 後編

ポリュペモスの洞穴にいるオデュッセウス
ヤーコブ・ヨルダーンス〈ポリュペモスの洞穴にいるオデュッセウス〉

キュクロプスは帰ってくると、山羊と羊の乳を絞り、また二人の部下を捕まえると、床にたたき落として殺し、手足をばらばらにし夕飯の中に入れ平らげました。

満腹になったキュクロプスにオデュッセウスは言いました。
「人肉を食ったところで、この酒を飲んでみよ。アポロンゆかりの美酒だ」
キュクロプスは三度もおかわりして上機嫌になり、さらに所望し、
「この島の葡萄酒もな、神の酒アンブロシアかネクタルにも負けておらぬ。ところで、お前の名はなんという?」
「"誰もおらぬ"という」

「では、"誰もおらぬ"は最後に食うことにしよう。俺からのご褒美だ」
こうして、その後もおかわりをし酔いつぶれてしまいました。

オデュッセウスたちは、削っておいたオリーブの大木の先を火の灰の中に入れ火がつく寸前まで真っ赤にしました。それを数人で持って、キュクロプスの頭に登っていくと、眼球に錐のように回しながらつき刺しました。主は身の毛もよだつ大きな悲鳴を上げて、仲間たちを呼びよせました。

「ポリュペモス(キュクロプスの名前)よ、いったい何があったのだ!」
「企みによって、わしを殺そうとする奴がいるのだ!"誰もおらぬ"がそうなのだ」
「ひとり住まいのポリュペモスよ、誰もおらぬのなら、それはゼウスの仕業だろう、おまえの父神ポセイドーンにでも祈るがよかろう」
こうして、集まってきた仲間のキュクロプスたちは帰っていきました。

ポリュペモスに対するオデュッセウス
ペッレグリーノ・ティバルディ〈ポリュペモスに対するオデュッセウス〉

オデュッセウスは、内心こうもうまく相手をだませた自分の才覚に満足しました。が、ポリュペモスも馬鹿ではありません。大岩をどけると、手をあてて一行が出てくるの待っていました。

オデュッセウスは、さらに策を練りました。そして、牡羊3頭を一つに並べ藤のつるで結わえ、真ん中の羊に部下をひとりずつぶら下げたのです。彼自身は、一番大きな立派な牡羊の腹にしがみつきました。

朝になると、ポリュペモスは山羊や羊たりを外へ出します。羊をさわって調べますが、まさか真ん中の羊の下に人間がぶら下がっているのには気がつきません。

一行は、外に出ると羊も一緒に連れて船まで逃げました。仲間の船ともども大急ぎで船を沖に漕ぎ出し、遠くまでくると、オデュッセウスはポリュペモスに大声で叫んだのです。
「ポリュペモスよ、我らが馬鹿で間抜けでないことが分かったであろう。客人をもてなさなかった罰をうけて、盲いになったのは自分のせいだ」

ポリュペモスは怒り狂い、山頂を砕いて持ち上げると、声のする方へ投げました。岩は、船のすぐ先に落下し、大きな波は船を陸に押し戻したほどです。ふたたび漕いに漕いで、陸から先ほどの二倍までの距離にきた時、オデュッセウスはまたも叫ぼうとしました。しかし、今度は部下たちが必死で止めようとしました。
「無謀なお人だ!またあの乱暴者を怒らせようとなさるのか?」

それでも、オデュッセウスはいきり立った気持ちを抑えられず、叫びました。

「ポリュペモスよ、眼のことを訊ねるものがいたら、こう答えてやれ、それはイタケの住人、ラエルテスが一子、オデュッセウスにつぶされたとな」

船に大岩を投げるポリュペモス
グイド・レーニ〈船に大岩を投げるポリュペモス〉カピトリーノ美術館

ポリュペモスは叫びました。
「なんということだ、あの昔聞いた予言が、おれの身に起こったのか。キュクロプス一族に予言をしていたテレモスが『いつの日か、オデュッセウスの手にかかって明を失う』と話してくれた。それいらい、おれは武勇すぐれたどんな偉丈夫がやってくるかと待ち受けていたというのに。
オデュッセウスよ、戻ってこい。土産物もたっぷりやろう。また、わが父神ポセイドーンを説いて、おまえを故郷にもどしてやる。おやじなら、この眼も直してくれよう」

「大地を揺るがすどんな神も、おまえの眼を癒すことはできぬだろう。また、おまえの息の根を止めて、冥界に送れたらどんなによかろう」と、オデュッセウスは答えました。

ポリュペモスは天に向かって手を差しのべ、ポセイドーンに祈りました。
「聞いてください。もしおれが真実あなたの倅であり、あなたもおれの親父であると名乗られるのであれば、オデュッセウスを無事に帰国させてくださるな。帰国できる定めなら、帰国を遅らせ、部下をすべて失い、他国の船で帰らねばならぬ惨めな目にあわせて下さい。屋敷に帰ってからも、様々な苦難にあうようにしてください」

ポセイドーンは、息子ポリュペモスのその願いを聞き入れました。こうして、オデュッセウスの苦難の旅は続いていくのです。