1話5分で読めるギリシャ神話

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【第9歌】後編:キュクロプス(ポリュペモス)

オデュッセウスの自分をわきまえぬ才知が、己の災難を招いたと言えなくはありません。自分だけでなく、故郷イタケでの求婚者により財産の食いつぶし、これはオデュッセウスの暴言が原因していたのです。
まさに、キュクロプス(ポリュペモス)が父ポセイドーンに祈ったことが、すべて現実になってしまたという事です。

ポリュペモスの洞穴にいるオデュッセウス
ヤーコブ・ヨルダーンス〈ポリュペモスの洞穴にいるオデュッセウス〉

(オデュッセイア 第9歌 後編)

オデュッセウスの策略

キュクロプスは帰ってくると、山羊と羊の乳を絞り、また二人の部下を捕まえると、床にたたき落とし手足をばらばらにして夕飯の中に入れ平らげました。

満腹になったキュクロプスにオデュッセウスは言いました。
「人肉を食ったところで、この酒を飲んでみよ。アポロンゆかりの美酒だ」

キュクロプスは三度もおかわりして上機嫌になり、さらに所望し、
「この島の葡萄酒もな、神の酒アンブロシアかネクタルにも負けておらぬ。ところで、お前の名はなんという?」

「〈誰もおらぬ〉という名だ」

「では、誰もおらぬは最後に食うことにしよう。俺からのご褒美だ」
こうして、キュクロプスはその後も美酒のおかわりをし、ついに酔いつぶれてしまいました。

オデュッセウスたちは、オリーブをとがらせた大木を火の灰の中に入れました。火がつく寸前まで真っ赤にし、それを数人で持ってキュクロプスの頭に登っていきました。そして、キュクロプスの眼球に錐のように回しながらつき刺し他のです。キュクロプスは身の毛もよだつような大きな悲鳴を上げて、仲間たちを呼びよせました。

「ポリュペモス(キュクロプスの名前)よ、いったい何があったのだ!」
「企みによって、わしを殺そうとする奴がいるのだ!誰もおらぬがそうなのだ」
「ひとり住まいのポリュペモスよ、誰もおらぬのなら、それはゼウスの仕業だろう。おまえの父神ポセイドーンにでも祈るがよかろう」

こうして、集まってきた仲間のキュクロプスたちは帰ってしまいました。

ポリュペモスに対するオデュッセウス
ペッレグリーノ・ティバルディ〈ポリュペモスに対するオデュッセウス〉

さらに策を練るオデュッセウス

オデュッセウスは、内心こうもうまく相手をだませた自分の才覚に満足しました。が、ポリュペモスも馬鹿ではありません。朝になると、外に出てから大岩をオデュッセウスたちが出てくるの待っていました。洞窟の入り口に手をあてて、彼らを捕まえるつもりなのです。

一方、オデュッセウスは牡羊3頭を一つに並べ、藤のつるで結わえます。真ん中の羊の腹に部下をひとりずつぶら下げるためです。彼自身は、一番大きな立派な牡羊の腹にしがみつきました。

ポリュペモスは山羊や羊を外へ出す時にさわって調べますが、まさか真ん中の羊の下に人間がぶら下がっているのには気がつきません。

オデュッセウスの無謀な挑発

オデュッセウスたちはまんまと外に出ると、羊も一緒に連れて船まで逃げました。仲間の船ともども大急ぎで船を沖に漕ぎ出します。遠くまでくると、オデュッセウスはポリュペモスに大声で叫んだのです。
「ポリュペモスよ、我らが馬鹿で間抜けでないことが分かったであろう。客人をもてなさなかった罰をうけて、盲になったのはお前自身のせいだ」

ポリュペモスは怒り狂い、山頂を砕いて持ち上げると、声のする方へ投げました。岩は、船のすぐ側に落下し、大きな波は船を陸に押し戻したほどです。ふたたび漕いに漕いで、陸から先ほどの二倍までの距離にきた時、オデュッセウスはまたもや叫ぼうとしました。しかし、今度は部下たちが必死に止めました。
「無謀なお人だ。またあの乱暴者を怒らせようとなさるのか!」

それでも、オデュッセウスはいきり立った気持ちを抑えられず、叫びました。

「ポリュペモスよ、目のことを訊ねる者がいたら、こう答えてやれ、それはイタケの住人、ラエルテスが一子、オデュッセウスにつぶされたとな」

船に大岩を投げるポリュペモス
グイド・レーニ〈船に大岩を投げるポリュペモス〉カピトリーノ美術館

ポリュペモスによみがえるテレモスの予言

「なんということだ、あの昔聞いた予言が、おれの身に起こったのか。キュクロプス一族に予言をしていたテレモスが『いつの日か、オデュッセウスの手にかかって明を失う』と話してくれた。それいらい、おれは武勇すぐれたどんな英雄がやってくるかと待ち受けていたというのに。
オデュッセウスよ、戻ってこい。土産物もたっぷりやろう。また、わが父ポセイドーンを説いて、おまえを故郷に返してやる。おやじなら、この眼も直してくれよう」

オデュッセウスは答えました。
「大地を揺るがすどんな神も、おまえの眼を癒すことはできぬだろう。その上、おまえの息の根を止めて、冥界に送れたらどんなによかろう」

ポリュペモス、父ポセイドーンに祈る。

「聞いてください。もしおれが真実あなたの倅であり、あなたもおれの親父であると名乗られるのであれば、オデュッセウスを無事に帰国させてくださるな。帰国できる定めなら、帰国を遅らせ、部下をすべて失い、他国の船で帰らねばならぬ惨めな目にあわせて下さい。屋敷に帰ってからも、様々な苦難にあうようにしてください」

ポセイドーンは、息子ポリュペモスのその願いを聞き入れました。こうして、オデュッセウスの苦難の旅は続いていくのです。そして、故郷イタケでは妻ペネロペイアと息子テレマコスにも災難がふりかかります。

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