1話5分で読めるギリシャ神話

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ペネロペイアの戸惑いと歓喜

オデュッセウスとペネロペイア
フランチェスコ・プリマティッチオ〈オデュッセウスとペネロペイア〉

〈オデュッセイア 第二十三歌〉

信じられないペネロペイア

老女エウリュクレイアは、二階のペネロペイアに知らせた。
「奥様、お目覚めになってください。毎日、毎日見たいとおいでになっていたオデュッセウス様がご帰国になられました。もう、お屋敷においでになり、あの無法な求婚者たちをみごと打ち果たしましたよ」

女神アテーナによって熟睡していたペネロペイアは
「婆やよ、きっと神様がそなたの心を狂わされたのであろう。今まで、これほどぐっすり眠れたことがなかったのに。婆やよ、年を取っていなければ、そんな知らせを持ってきたら、手きびしく追い払いますよ」

「本当にご帰国なさっているのですよ。あの他国の者が、オデュッセウス様だったのです。テレマコス様はご存知でしたが、あの求婚者の手前、隠していたのです」
「大切な婆や、仔細を話しておくれ。あの恥知らずな求婚者たちをどのように倒されたのですか」

ペネロペイアの戸惑い

老女から求婚者の誅殺、広間の浄めなどを聞くと、ペネロペイアは
「婆やよ、喜ぶのはまだ早い。本当であるはずがない。きっと、神様がお怒りになって、彼らを退治されたのでしょう」
「では、証拠をお話しします。わたしが他国の者の足を洗おうとした時、オデュッセウス様がかつて猪につけられた傷跡に気づきました。が、求婚者のことを考えて、オデュッセウス様は、まだ奥様に話さないよう命じたのです」

ペネロペイアは広間に降りていき、壁際に腰を下ろした。この他国の者がまことに夫であるのか、眺めていた。オデュッセウスは反対の壁際に座って、彼女が何か言ってくるのを待っていた。が、しばらく、ペネロペイアは呆然としたまま何も語らず、夫の顔を見つめかと思うと、また下を向いて戸惑っていた。

オデュッセウスとペネロペイア二人だけの秘密

「母上、なんとつれないお心か、どうしてそのように離れたまま、何もお尋ねにならないのですか」
「テレマコスよ、わたしの心はあまりの驚きで、話すこともできぬ。が、わたしには夫オデュッセウスであることを確信できる手立てがあります、私たち二人だけが知っている秘密があるのです」

オデュッセウスはニヤリと笑うと、テレマコスに告げた。
「テレマコスよ、母には存分に試させておけば良い。我らは、これからのことを思案しよう。人を殺した者は他国に亡命せねばならぬ。ましてや、我らはイタケの身分の高い若者を多く殺したのだ。そなたは、このことを考えなければならぬ」
「それは、父上にお任せします。神々をのぞいて、父上にすぐる知略に富んだ人間などおりませんから」

「テレマコスよ、今はまだ、この誅殺を世間に知られてはならない」
オデュッセウスは屋敷の中で、あたかもペネロペイアの再婚が決まったかのように見せかけることを考えた。楽人に竪琴を奏で歌わせ、宴会が行われているように見せかけた。その間に、父ラエルテスの屋敷に行き、戦いの準備を整えるのだ。オデュッセウスとテレマコスは湯浴みした後、衣服を整えた。

オデュッセウス、寝台の秘密を語る

ペネロペイアはオデュッセウスを試そうと、老女に語りかけた。
「婆やよ、寝室の外に寝台を用意しておくれ。そこに羊の皮、毛布、洗った敷布をかけておくれ」
そのことを聞くと、オデュッセウスは
「奥よ、なんとも奇妙なことを言う。神々でも寝台の場所を移すことはできまい。その寝台は、幹が柱ほどもあるオリーブを生えたまま使って、わしが作ったものだ。その周りに石を積み上げて、寝室とした。奥よ、神か誰かがこのオリーブの根元を切って他に移したというのか!」

オデュッセウスの語った二人だけの秘密に、ペネロペイアの心と体、気の張りも全てゆるんでしまった。彼女はオデュッセウスの首に抱きつき、額に接吻すると
「オデュッセウス、怒らないで。わたしは長い間、人に騙されはせぬかと恐れていたのです。そんな連中がよく家に来て、食事や衣のために嘘をつくのです。それでも、あなたのことを話せる喜びで、いつも黙って聞いていたのです」
ペネロペイアが長年抱いてきた悲しみを思い、オデュッセウスは胸が熱くなり、しっかりと妻を抱きしめて泣いた。

その夜、二人は心ゆくまで愛の交わりを楽しんだ。また、ねやの物語が尽きることもなかった。

最後の戦いへ

次の朝、
「奥よ、しかと申しつけておく、陽が昇れば、たちまち、わしが求婚者どもを討ち果たしたことが広まるであろう。そなたは女中たちとともに、二階でじっとして、誰にも会ったり、ものを訪ねたりしてはならぬ」
そう言い残し、オデュッセウスは武具に身をかため、同じく武装したテレマコス、豚飼い、牛飼いを連れて、老父ラエルテスの屋敷に向かった。

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