1話5分で読めるギリシャ神話

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セイレーンの誘惑

オデュッセウスとセイレーンたち
ハーバード・ジェイムズ・ドレイパー〈オデュッセウスとセイレーンたち〉

(オデュッセイア 第十二歌)
オデュッセウスは、帆柱に縛られたまま叫んだ。
綱を解いてくれ〜、セイレーンの元へ行かせてくれ〜

冥界に行って、予言者テイレシアスの助言をえたオデュッセウス一行はキルケの島に帰ってきました。キルケは一行が帰ってきたのを知り、食べ物と赤ぶどう酒を持参しました。
「生きながら冥界にくだったとは、なんとも不適な人々じゃ。今夜はゆっくり食事と休息をとり、朝日が昇ったら出発しなさい」

キルケの新たな予言
部下たちが眠りにつくと、キルケはオデュッセウスとしばらく語りあった後に新たな予言をしました。
「そなたたちは、これからセイレーンの島に行くことになります。彼女たちは草原にすわり、すき通るような声で歌い、人の心を魅惑します。しかし、彼女たちの周りには白骨と腐りゆく人間の肉が山となっています。

ここを通り抜けねばなりません。セイレーンの声を聞こえぬように、部下の耳を蜜ろうでふさぐのです。そなたがセイレーンの声を聞きたいと思うのであれば、部下に命じて帆柱に立ったまま、手足をしっかり縛らせなさい。万が一、そなたが部下に綱を解いてくれ〜と、頼んだり命じたりしても、さらに綱をまして縛らせるのです。

セイレーンの島を船が通過したら、そなたたちは2つの進路(さまよう岩 or スキュラとカリュブディス)のどちらかを選ばなければなりません...」

セイレーンに襲われるオデュッセウス一行
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス〈セイレーンに襲われるオデュッセウス一行〉

明朝、オデュッセウス一行は出発し、キルケは森の館に帰っていきました。

「よいか皆の者、女神キルケがわたしに語ってくれた予言を全員承知した上で、ともに死ぬか、ともに危地を脱するかだ」
また、オデュッセウスは自分を縛ることもつけ加えました。

キルケが送ってくれた順風で船は進んでいき、しばらくすると、セイレーンの島に近づきました。すると、今までは順風だった風がぴたりとやみました。オデュッセウスは帆を下ろし、櫂で漕ぐよう部下に命じました。また、急いで部下の耳に蜜ろうをつめ、自分を帆柱に縛りつけさせました。

セイレーンの島
さらにセイレーンの島に近づくと、彼女たちは美しい声で歌い言いました。
「世に称えられたアカイアの誇りオデュッセウスよ、船をここにつけ、私たちの蜜のような歌声をお聞き。聞かずして通り過ぎたものは誰もいないのだよ。聞いた者は心楽しく、知識も増して帰っていくのだ」

オデュッセウスは、帆柱に縛られたまま叫びました。
綱を解いてくれ〜、セイレーンの元へ行かせてくれ〜
エウリュロコスともう一人の部下が命令されていたように、オデュッセウスにさらに綱をまきつけました。

こうして、一行は無事セイレーンの島を通り過ぎることができました。
つきの難所は、「スキュラとカリュブディス」です。

セイレーン
クヌート・エクヴァル〈セイレーン〉