1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈アートバイブル〉も、絵画でわかりやすい聖書です。

オリンピックの起源

アキレウスの怒り
ダヴィッド〈アキレウスの怒り〉キンベル美術館

トロイア戦争、10年目
9年間ものあいだ、勝敗が決しなかったトロイア戦争。
トロイアの同盟国のアポロン神殿の祭司クリューセースの娘クリューセーイスが、奴隷として総帥アガメムノン王の手に渡りました。祭司として、父親は娘を返してほしいと懇願しました。しかし、アガメムノン王はその願いをはねつけました。

父親クリューセースはアポローン神にギリシャ軍を苦しめるよう祈願。アポローン神はその願いを聞き入れ、ギリシャ軍の中に疫病を流行らせたのです。

アキレウスの激怒
ギリシャ軍は軍議を開いて、疫病対策を討議しました。そのとき、アキレウスは大胆にも奴隷クリューセーイスを返さなかったからだと、アガメムノン王を糾弾しました。王は激昂しましたが、娘を手放すことに同意。その代わりに、アキレウスの戦利品、処女のプリーセーイスをよこせと要求しました。

その要求を受け入れましたが、アキレウスは激怒しました。
「自分はもう戦わない、故郷に引き上げる」と宣言。これは、ギリシャ軍にとって致命的なことでした。
(ちなみに、ホメロスの『イリアス』はここから始まります)

その後、ギリシャ軍の劣勢が続きます。ある日パリスの放った矢が、医術で有名なアスクレーピオスの息子で軍医のマカーオーンを傷つけました。老将ネストールは彼を自分の戦車に乗せ、自分の陣営には運び入れました。それを見ていたアキレウスは、親友パトロクロスを見舞いにやりました。

パトロクロスの死
老将ネストールはここぞと思い、パトロクロスを説得しました。
「アキレウスを戦いに復帰させてくれ、さまなくば君がアキレウスの甲冑をつけ、戦場に出てくれないか。そうすれば、ギリシャ軍は勢いがつくし、トロイア軍はひるむだろう」

パトロクロスはその件をアキレウスに告げましたが、彼は戦いに出ることは拒みました。ただ、仲間の武将たちが皆負傷いることは知っていましたので、甲冑をかすことは了承し、助言だけしました。
「俺がいなければ、城砦は落ちないであろう、だから決して深追いをしてはならない」

パトロクロスがアキレウスの軍勢ミュルミドーンを率いて戦場に出ると、ギリシャ軍は喝采をあげ、トロイア軍は色を失いました。ゼウスの息子サルペドーンを倒したほか大きな戦果をあげたパトロクロスは、アキレウスの助言を忘れ、城砦の近くまで深追いしていました。

結果、パトロクロスはトロイア随一の勇将へクトールに倒されました。ギリシャ勢により、体だけは自陣に運ばれましたが、アキレウスの甲冑はヘクトールに奪われてしまいました。

アキレウスとパトロクロス
ニコライ〈アキレウスとパトロクロス〉ベラルーシ国立美術館

アキレウスの出陣

アキレウスは大きな悲しみに襲われ、うめき声をあげました。その声を母である女神テティスが聞き、彼を訪れ慰めました。母はヘーパイストスに新たな甲冑を作ってもらうため、オリンポス山のヘーパイストスの鍛冶場に行きました。そして、夜明け前その甲冑をアキレウスの元に届けたのです。

見事な甲冑をつけたアキレウスは、すでにアガメムノン王への怒りも捨て出陣しました。トロイア軍は意気もくじけ、敗退しはじめ逃げだしました。

アポローン神の助言もあり、ヘクトールは少し戦場から離れていましたが、パレス・アテーナがヘクトールの勇敢な弟デーイポボスに変身して、ヘクトールをアキレウスと戦うようにしむけました。『パリスの審判』で負けたアテーナは、ギリシャ勢に加担していたのです。

へクトールの死

こうして、アキレウスはへクトールを倒し、パトロクロスの復讐を遂げたのです。
ヘクトールは死ぬ間際、アキレウスに懇願しました。
「どうか、私の屍だけは許してくれ。私の両親にひきわたし、トロイアの人々から葬儀を受けられるようにしてくれ」
「犬畜生め、いまさら慈悲をこうな、あまりにも大きな悲しみを俺に与えたのだ、購いを20倍にして返すと言っても、俺はこばむ」
アキレウスは無慈悲にもヘクトールの体を自分の戦車に結びつけると、トロイアの城砦の周りを何度も引きずったのです。

オリンピックの起源
その後、ヘクトールを引きずったまま自陣に引き上げたアキレウスは、親友パトロクロスの火葬壇を築き、正式な儀式をとりおこないました。その後、戦車競争、格闘、拳闘、弓術などの葬送競技会が開かれました。

これは、ギリシャ神話における『オリンピックの起源』のひとつの説です。

神々の計らいもあり、ヘクトールの亡骸はアキレウスの陣営に従者一人を連れただけのトロイア王プリアモスに返され、トロイアで大きな葬儀がとりおこなわれました。
(ここで『イリアス』は終わりになります)

ヘクトールの死を嘆く妻アンドロマケー
ダヴィッド〈ヘクトールの死を嘆く妻アンドロマケー〉ルーヴル美術館