1話5分で読めるギリシャ神話

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パリスの審判

ホメロスの『イリアス』は、トロイア戦争の叙事詩です。しかし、『イリアス』には、トロイア戦争10年間のわずか最後の一年しか書いてありません。それも、アキレウスの死やトロイアの木馬による陥落は書いてありません。
とうぜん、トロイア戦争の原因となった、この『パリスの審判』は『イリアス』には書かれていません。『イリアス』はトロイア戦争九年目の「アキレウスの怒り」から始まります。

ペレウスとテティスの結婚
ヤーコプ・ヨルダーンス〈ぺーレウスとテティスの結婚〉三女神が黄金のリンゴ(中央)を争っています。武装したアテーナのすぐ前に裸のアフロディーテ、反対側にぜウスの右横にヘーラー。なんと右端の二人がこの日の主役です。

黄金のリンゴ

アキレウス両親ぺーレウスとテティスの結婚式の時、すべての神々が招待されました。
しかし、争いの女神エリスだけはふさわしくないと、結婚式に招かれていません。怒った女神は、「一番美しい女神へ」と書いた紙とともも一個の黄金のリンゴを宴の間に投げ入れました。

ゼウスの妻ヘーラー、美の女神アフロディーテ、知恵の女神アテーナは、それぞれ「黄金のリンゴは私のもの」と主張しました。ゼウスはこの厄介な審判を自分でくだすのをさけ、イーデー山で羊飼いをしている美しいパリスに任せてしまいました。

パリスはトロイアの第二王子です。出生時、将来トロイアを滅ぼす原因になるとの不吉な予言があり、イーデー山に追放されていたのです。

三女神のパリスへの提示

アテーナは「戦場での誉れと名声」を、ヘーラーは「権力と富み」を、アフロディーテは「人間の中で一番美しい女性」をパリスに約束し、それぞれ自分に有利な審判をしてもらおうとしました。

人間なら女神たちを前に恐れおののくところですが、ここがパリスらしいというべきでしょうか!ためらいもせず、アフロディーテに黄金のリンゴを渡しました。

パリスの審判
フィリップ・パロット〈パリスの審判〉

ヘレネーの略奪

「人間の中で一番美しい女性」それはゼウスとレーダーの娘ヘレネー。かつて、ヘレネーにはたくさんの求婚者がいました。彼女が誰を選ぶか決める前に、求婚者の一人オデュッセウスがある提案をしました。
「求婚者は結婚後も彼女をあらゆる危害から守り、必要とあれば戦いをも辞さぬ」と。
ヘレネーが夫に選んだのは、アトレウス家の次男メネラオス。長男は、ギリシャ総大将のアガメムノンです。

メネラオスの館に、今は王子としてトロイアに戻っていたパリスと兄へクトールが、ギリシャとの協定を結ぶためにやってきました。
その時、女神アフロディーテの手助けもあり、パリスはヘレネーとすぐに恋に落ちました。パリスはトロイアに帰る時、ヘレネーをトロイアの船に隠し、帰途につきました。途中で気づいた誠実な兄へクトールは激怒しましたが、もう後戻りはできません。ヘクトールは、ギリシャとの戦争を覚悟しました。

パリスとへレネーの恋
ジャック・ルイ・ダヴィッド〈パリスとヘレネーの恋〉ルーヴル美術館

オデュッセウスとアキレウス

怒ったメネラオスは、ギリシャ中の武将にヘレネーを取り戻すよう声をかけました。オデュッセウスの提案があったため、ほとんどの武将は提案の履行を約束しました。

オデュッセウスは、イタケーで妻ペネロペーと幼い息子テレマコスと楽しく暮らしていました。そこに、ギリシャ総大将アガメムノンの使者パラメデスがやってきました。オデュッセウスは戦争に行くのを避けるため、狂人のふりをしていました。
『オデュッセウスは息子テレマコスをかばうに違いない』
と一計を案じたパラメデスは、テレマコスを牛の鋤の前に置きました。案の定、オデュッセウスは鋤を脇にどけて、息子を助けたのです。狂人でないことがばれてしま他のです。
戦争に行くことになったオデュッセウスは、英雄アキレウスが必ず必要になると思い、彼を戦いに参加させようとしました。

アキレウスの母テティスは、アキレウスが戦いに行くと栄誉が得られるが、死ぬ運命にあると分かっていました。そこで、アキレウスに女装をさせて、ある王の館に行かせました。王の娘たちの中に隠したのです。が、オデュッセウスは知恵者です。商人に化けて、様々な宝石や装身具を王の娘たちの前にひろげました。その中に、こっそり武器もまぜていたのです。王の娘たちは美しい宝石や装身具を手にしましたが、アキレウスは武器を手にしてしまったのです。こうして、アキレウスもトロイア戦争に参加することになりました。

トロイア戦争の始まり

二年後、ギリシャ軍はボイオティアのアウリス港に集結。総大将はメネラオスの兄ミュケーナイのアガメムノン王。しかし、彼がこの地で狩りをした際、女神アルテミスの牡鹿を殺してしまったために、女神は軍隊に疫病をはやらせ、風も止めて船隊の出発を妨げていました。
「一人の処女を生け贄に捧げなければならない、しかもこの罪を犯した者の娘でなければならない」
予言者カルカースは、占いをし告げました。

アガメムノーン王は悲嘆にくれましたが、アウリスの地で娘イーピゲネイアを生け贄にささげました。彼女が殺される瞬間、不憫に思った女神アルテミスは一頭の牝鹿を残し、イーピゲネイアを連れ去り、タリウスの自分の神殿の祭司にしました。

ここにギリシャ軍の遠征が始まり、トロイア戦争の火ぶたが切って落とされたのです。

※ギリシャ悲劇に、エウリピデス作「アウリスのイーピゲネイア」「タウリスのイーピゲネイア」があります。

イーピゲネイアの犠牲
フランソワ・ペリエ〈イーピゲネイアの犠牲〉

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