1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈アートバイブル〉も、絵画でわかりやすい聖書です。

パリスの審判

パリスの審判
フィリップ・パロット〈パリスの審判〉

黄金のリンゴ
ぺーレウスとアキレウスの母テティスの結婚式の時、すべての神々が招待されました。
が、争いの女神エリスだけは招かれていません。怒った女神は、「一番美しい女神へ」と書いた一個の黄金のリンゴを宴の間に投げ入れました。

ゼウスの妻ヘーラー、美の女神アフロディーテ、知恵の女神アテーナは、それぞれ「黄金のリンゴは私のもの」と主張しました。ゼウスはこの厄介な審判を自分でくだすのをさけ、イーデー山で羊飼いをしている美しいパリスに任せてしまいました。

パリスはトロイアの第二王子として生まれましたが、将来トロイアを滅ぼす原因になるとの不吉な予言があり、追放されていたのです。

アテーナーは「戦場での誉れと名声」を、ヘーラーは「権力と富み」を、アフロディーテは「人間の中で一番美しい女性」をパリスに約束し、それぞれ自分に有利な審判をしてもらおうとしました。

人間なら女神たちを前に恐れおののくところですが、ここがパリスらしいというべきでしょうか?!ためらいもせず、アフロディーテに黄金のリンゴを渡しました。

ヘレネーの略奪
「人間の中で一番美しい女性」それはゼウスとレーダーの娘ヘレネー。かつて、ヘレネーにはたくさんの求婚者がいました。彼女が誰を選ぶか決める前に、求婚者の一人オデュッセウスがある提案をしました。
「結婚後も彼女をあらゆる危害から守り、必要とあれば戦いをも辞さぬ」と。

ヘレネーはメネラオスを選び、幸せに暮らしていました。
この二人の館に、今は王子としてトロイアに戻っていたパリスと兄へクトールが、ギリシャとの協定を結ぶためにやってきました。

女神アフロディーテの手助けもあり、パリスはヘレネーとすぐに恋に落ち、ヘレネーをトロイアの船に隠し、帰途につきました。途中で気づいた誠実な兄へクトールは激怒しましたが、もう後戻りはできません。

パリスとへレネーの恋
ジャック・ルイ・ダヴィッド〈パリスとヘレネーの恋〉ルーヴル美術館

パリスを非難するヘクトル
〈パリスを非難するヘクトール〉

オデュッセウスとアキレウス
一方、怒ったメネラオスはギリシャ中の武将にヘレネーを取り戻すよう声をかけました。ほとんどの武将が、誓いの履行を約束しました。

オデュッセウスは、イタケーで妻ペネロペーと幼い息子テレマコスと楽しく暮らしていました。そこにパラメデスが使者としてやってきました。オデュッセウスは狂人のふりをして、参加するのをはぐらかしていました。
一計を案じたパラメデスは、テレマコスを牛の鋤の前に置きました。息子が危ないので、オデュッセウスは鋤を脇にどけてしまい、正気であるとばれてしまいました。

戦いに行くことになった彼は、英雄アキレウスが必ず必要になると思い、彼を戦いに参加させようとしました。アキレウスの母テティスは、アキレウスが戦いに行くと栄誉を得られるが、死ぬ運命にあると分かっていました。

そこで、アキレウスに女装させて、ある王の館に行かせました。王の娘たちの中に隠したのです。が、オデュッセウスは知恵者です。商人に化けて、様々な宝石や装身具を王の娘たちの前にひろげました。その中に、こっそり武器もまぜていたのです。王の娘たちは美しい装身具を手にしましたが、アキレウスは武器を手にし、正体がばれてしまいました。

トロイア戦争の始まり
二年後、ギリシャ軍はボイオティアのアウリス港に集結、総大将はメネラオスの兄ミュケーナイのアガメムノーン王。しかし、彼がこの地で狩りをした際、女神アルテミスの牡鹿を殺してしまったために、女神は軍隊に疫病をはやらせ、風も止めて船隊の出発を妨げていました。

予言者カルカースは占いをし、告げました。
「一人の処女を生け贄に捧げなければならない、しかもこの罪を犯した者の娘でなければならない」

アガメムノーン王は悲嘆にくれましたが、アウリスの地で娘イーピゲネイアを生け贄にささげました。彼女が殺される瞬間、不憫に思った女神アルテミスは一頭の牝鹿を残し、イーピゲネイアを連れ去り、タリウスの自分の神殿の祭司にしました。

ここにギリシャ軍の遠征が始まり、トロイア戦争の火ぶたが切って落とされたのです。

※ギリシャ悲劇に、エウリピデス作「アウリスのイーピゲネイア」「タウリスのイーピゲネイア」があります。