1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈アートバイブル〉も、絵画でわかりやすい聖書です。

エウロペーの誘拐

エウロペーの誘拐
マールテン・ド・フォス〈エウロペーの誘拐〉ビルバオ美術館

ゼウスはオリンポス山から下界を見下ろしていました。
そして、浜辺で遊ぶ女たちの中でもひときわ美しい乙女に一目惚れしました。フェニキア王アゲノルの娘エウロペーです。

どう近づいたら良いか思案した後、伝令の神ヘルメースを呼びました。
「山の牛たちを、浜辺のあの女たちの近くに追いやってくれ」
ヘルメースはさっと飛んでいき、牛たちを追いはじめます。

一方、ゼウスはこっそりと白い牡牛に変身すると、ヘルメースにも分からないように牛たちに紛れ込みました。そして、女たちに近づきました。白い牡牛なので珍しく、女たちに気に入られました。また、ゼウスもおとなしく優しそうな牡牛の動きをしていました。

「何とおとなしい牡牛でしょう」
エウロペーもそばにより、頭や背中をさすってやりました。
「いい気持だ。早く、私がその手をさすりたいものだ」
ゼウスは早くも興奮してきましたが、身振りには出ないようにしました。

エウロペーは、すわっている温和な牡牛にすっかり安心してその背に乗りました。その瞬間、牛は立ち上がり、海に入って猛然と泳ぎだしました。その速いこと!はや、岸からは遠く離れています。エウロペーは、その背から落ちないように、必死でツノをつかんでいました。岸では、乙女たちが大騒ぎしています。が、どんどん小さくなって見えなくなってしまいました。

牡牛はエウロペーをクレタ島に連れて行きました。牡牛からもとのゼウスに戻り、正体と明かすとエウロペーと交じりました。やがて、ミーノース、ラダマンテュス、サルペドンという息子が生まれました。ミーノースは、やがてクレタ島の偉大な王になり、ラダマンテュスは冥界の審判者に、サルペドンはトロイア戦争でトロイア側に付きました。

エウロペの誘拐
グイド・レーニ〈エウロペーの誘拐〉ダリッジ・ピクチャー・ギャラリー