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アルペイオスとアレトゥーサマラッタ〈アルペイオスからアレトゥーサを隠すアルテミス〉

美しく男勝りな森のニンフ

娘ペルセポネを探している母デメテルを見ていて、シケリアの泉のニンフのアレトゥーサは可哀相になり、見たことをすべて話すことにしました。

そんなアレトゥーサにも、悲しい過去があったのです。アレトゥーサは、もとは森のニンフ。みんなが彼女の美しさをたたえました。しかし、彼女は狩りに夢中で、狩りの手柄を自慢しているような男勝りでした。

ある日、アレトゥーサは、狩りにほてった体を静めようと森の近くの川辺にやってきました。それは美しい流れで、水は澄み切って川底の小石が数えられるほどでした。片足を入れ、膝まで入ると、水の中に全身をゆったりとしずめました。そして、しばらく晴れた青空を見ながら水に浮かんでいました。

すると、川底から囁き声が聞こえてきます。怖くなったアレトゥーサは岸に上がり、川を離れ駆け出しました。すると、後ろから自分の名を呼ぶ声が聞こえてきます。

河神アルペイオスの横恋慕

「なぜ? 逃げるのかね、アレトゥーサ? わたしはこの川の神、アルペイオスだよ」
アルペイオスはけっしてアレトゥーサより速くはありませんが、彼女を追ってきます。アルペイオスは男神で体力があります。

やがて、彼女はだんだん疲れてき、精も根もつきかけると、女神アルテミスにお願いしました。
「お助けください! あなたの崇拝者をお助けください」

すると、アルテミスは彼女を厚い雲の中に隠しました。

アルペイオスは近くにやってきましたが、あちらこちらと歩き回るだけです。
「アレトゥーサ! アレトゥーサ?」
アルペイオスは大きな声で叫びますが、彼女を見つけることはできません。

アレトゥーサは怖くなりました。全身からは冷や汗がにじみ出し、髪の毛からはしずくが流れ落ちます。そして、アレトゥーサの足元に水がたまり、やがて泉になっていました。

ペルセポネの略奪の目撃

アルペイオスは諦めきれず、アレトゥーサを探し泉を見つけました。このアレトゥーサの急を知ると、アルテミスは地面に穴を掘り逃げ場を開いたのです。彼女は逃げたい一心からこの穴の中に流れ込み、大地の奥を通りぬけ、シチリアの地に出てきました。

この時です。ペルセポネを誘拐した冥界の王ハデスが冥界への入り口を開き、中へと入っていったのです。アレトゥーサは、このことをデメテルにすべて話しました。

「お嬢さまは嘆き悲しんではいらっしゃいましたが、その顔にはもう恐怖の色はありませんでした。冥界の女王さまにふさわしいような凛々しさがありました」

ペルセポネの略奪と四季の誕生