ウルピアーノチェコ〈ペルセポネの略奪〉
ギガントマキア(巨人戦争)の勝利の後、大神ゼウスがアイトナ山に閉じこめた巨人たちが騒ぐと大地がゆれます。今回の地震は特に大きかったので、冥界の王ハデスは二輪車に乗り、地表との裂け目がないか視察して回っていました。
女神アフロディテの企み
ハデスを山の上から見ていたアフロディテは、息子エロスに命じました。
「ハデスの胸に、一本射っておやり。知恵の女神アテナや狩りの女神アルテミスは、恋にしか関心がないと私をバカにしているのです。
豊穣の女神デメテルの娘ペルセポネも二人をまねして...あぁ、いまいましいったらありゃしない!」
ハデスにペルセポネを恋するように仕向けたのです。息子エロスは、黄金の矢をハデスの胸に放ちました。
その時、ペルセポネは友達とユリやスミレの花を摘んでいました。
ハデスは、その姿を見つけるや、彼女を無理やりさらっていきました。ペルセポネは、母や友人に助けを求めて叫びました。が、冥界の王ハデスが相手ではなす術もありません。飛び散った花々が、あどけない彼女の心を悲しくさせました。
ハデスはキュアネー河まで来ると、三またの槍で堤を撃ちます。大地に裂け目ができると、冥界へと入っていきました。
ペルセポネの母デメテルの悲しみ
ペルセポネの母デメテルは、9日9晩さがし回り、疲れて石の上に座り込んでいました。その姿は、やつれた老婆のよう。
そこはアテナイの北西にある村でした。老人ケレオスと二人の娘がそばを通りかかり、娘が声をかけました。
「おばさん、どうかしたの?」
デメテルは驚きました。女神には、その「おばさん」という声が「お母さん」と懐かしく聞こえたのでした。
老人たちに娘ペルセポネのことを話すと、老人が
「貧しい家ですが、何かお役にたてれば」と、家に招きます。
家には、今にも死んでしまいそうな病気の息子がおりました。デメテルは、その晩その子の命を助け、女神であることを明かし、翌朝また娘を探しに出かけました。
アレトゥーサ、ペルセポネの略奪目撃を告白
デメテルは、めぐりめぐってあのキュアネー河にやってきました。じつは、ペルセポネの誘拐現場を見ていた河のニンフがいました。アレトゥーサです。ハデスの仕返しが怖くて、今まで話せなかったのです。
アレトゥーサは、ペルセポネの腰帯を水の上にそっと浮かべました。それを見たデメテルは、娘の死を思い、大地に八つ当たりしました。
「恩知らずの大地よ、今まで恵んできた牧草や穀物など、もうその恵みを受けることはあるまい!」
デメテルは豊穣の女神と言われるように、穀物の収穫をつかさどる神なのです。
それ以後、日照りが何日も続き、家畜は死に、田をたがやす鋤(すき)も壊れ、種は芽も出さなくなりました。アレトゥーサはいたたまれなくなり、デメテルに告白しました。
「豊穣の女神さま、大地をおとがめになってはなりません。お嬢さまはハデスに冥界へと連れさられたのです。
私は見ていました。お嬢さまは嘆き悲しんではいらっしゃましたが、そのお顔は冥界の女王にふさわしい表情にもお見受けしました。今までハデスの仕返しが怖くて、話せなかったのです。お許しください」
レイトン〈ペルセポネの帰還〉
四季の誕生
これを聞いたデメテルはすぐさま二輪車に乗りました。ゼウスの元へ、娘を取り戻してほしいと嘆願にいったのです。ゼウスは承諾しましたが、1つの条件をつけました。運命の女神たちが決めたことで、変えることが決してできない条件です。
「ペルセポネが冥界でどんな食べ物も口にしていなかったならば、その願いをかなえよう」
ゼウスはヘルメスを使者にすると、彼は春の女神も連れてペルセポネを迎えに行きました。ハデスは承諾しましたが、すでに狡猾にもザクロの汁をペルセポネに飲ませていたのです。これでは、もはや地上に戻ることは許されません。デメテルとて、母として引き下がるわけにはいきません。
話し合いの結果、ペルセポネは一年の半分の6ヶ月は母デメテルと暮らし、残り6ヶ月は冥界の女王として地下で暮らすことになりました。こうして、大地は再びデメテルからの恵みを得ることができるようになりました。春・夏・秋・冬、四季の誕生です。
この後、デメテルはあの老人ケレオスの家を訪れました。助けた息子トリプトレモスに鋤(すき)の使い方や種のまき方を教え、二輪車に乗せて穀物や農業の知識を人々に授け回りました。
トリプトレモスは、エレウシスの地にデメテルの神殿を立て、「エレウシスの秘儀」といわれる、ギリシャでも大きな女神の秘教を創始したのです。
ベルニーニ〈ペルセポネの略奪〉