〈カオス - 混沌〉
始めにカオス［混沌］ありき！
この世界の始まりは、カオス（混沌）であり、どろんとした塊のようでした。まだ、空や大地もなく、山や河や海もありませんでした。また、どこにも生き物は存在しませんでした。
神あるいは優れた自然が、天空から大地を、大地から海を引き離し、濃密な大気と澄んだ天空に分けました。火からなる軽い霊気は舞い上がり、最も高い空間を占め、軽さにおいて次の大気は２番目の空間を占めました。
密などろどろの大地は、下の方へ押しやられました。周囲の水がその大陸を囲みました。次に、大地がどこから見ても均等な形になるように、大きな球体になっていきました。
それから、海が広がり、陸地の岸を取り囲むようになりました。泉や大きな沼や湖が追加され、河が高地から低地へ流れます。河は、あるものは大地に吸い込まれ、またあるものは海に注ぎます。
さらに、平原が広がり、谷が陥没し、森が木々で覆われ、岩山がそびえ立つようになりました。
様々な生き物と人間の誕生
こうして、神あるいは優れた自然がすべてのものを区分しました。
すると、長い間暗い闇に包まれていた星々が、全天に輝き始めました。どの領域にも生き物が住むように、星々と神々が天界を領有し、海には魚たちが、陸には獣たちが、大気には鳥たちが住み始めました。
そして、神あるいは優れた自然が、自らの神秘的な種から人間を作ったのかもしれません。あるいは、大地の中に霊気が残っていたのかもしれません。イアペトスの子、プロメテウスは、霊気が残っていた土を雨水と混ぜ合わせ、神の姿に似せて人間を造ったとも言われます。
「大地」と「暗黒（エレボス）」と「愛（エロス）」が最初にありました。愛（エロス）は、カオスに漂っていた「夜」の卵から生まれ、手にした矢と松明で生命と歓喜を生み出したと言われています。
このように、愛の女神アフロディテ（ビーナス）よりも、愛（エロス）の方が古いと考える神話も多いようです。
プーレンブルフ〈神々の会合〉
オリュンポスの神々
神々の館は、テッサリアのオリュンポスの頂にあります。ここには、季節（春夏冬）の3人の女神たちが守っている雲の門がひとつあります。この門は、神々が地上に降りていく時と帰ってくる時に開かれます。
ゼウスから神々の招集がかかると、オリュンポスの宮殿に集まります。大広間では会議が開かれたり、アンブロシアーとネクタルの饗宴が開かれたりします。美しい女神ヘーベーがネクタルを注ぎ、アポロンが竪琴を奏でることもあります。その曲に合わせて、美しいムーサの女神たちが歌います。
太陽が沈む頃になると、神々はそれぞれの館に帰って眠りにつくのです。
ギリシャ人が考えた世界
世界は平たくて円盤のようなものです。その世界の中心はオリュンポス山であり、アポロンの神託所があるデルポイの聖地です。
この円盤のような世界は、海によって西から東へと横切られ、北と南に二等分されています。その海を「地中海」と呼びます。この地中海と東の果てにあるエウクセイノス海（黒海）だけが、ギリシャ人には知られていました。
また、世界の周りには大洋河が流れています。世界の西側では南から北へ、東側では北から南へ流れています。
世界の北の地には、ヒュペルボレオスと呼ばれる幸福な民族が住んでいます。彼らはとこしえの春の中で、病気も労役も戦いも知りません。このヒュペルボレオスへは、海からも陸からも行くことはできません。この地の山々にある大きな洞窟からは、凍えるような北風がギリシャに吹いてきます。
一方、世界の南側には、これまた幸福で徳の高いアイティオピアの人々が住んでいます。オリュンポスの神々はこの民族が非常に好ましく、よく訪れては響宴を開いていました。
世界の西の果てには、大洋河の近くにエリュシオンの原があります。ここは「幸運の野」とも「祝福された人々の島」とも呼ばれていました。ここには、神々に特に愛された人間が幸福に暮らしています。（その後、エリュシオンは冥界にあるとも言われます）
曙と太陽（の神）は、東側の大洋河から天空を登り、西の大洋河に降りてきます。そして、翼のある船に乗り、北側の大洋河を巡って東の登り口に戻り、毎朝天空に昇ります。
プーレンブルフ〈神々の響宴〉
