1話5分で読めるギリシャ神話

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ギリシャ神話ホームダフニスとクロエー|ダフニスとクロエー【巻4】大団円②[シャガール]

ダフニスとクロエー【巻4】大団円②[シャガール]

(更新日:2022.07.29)

とうとう、ダフニスとクロエーの出生の秘密が明かされます。
なんとダフニスはご主人の子であったのです。そしてクロエーはやはり有力者の老人メガクレースの娘でした。
こうして、ダフニスとクロエーはめでたく結婚できることになったのです。

ダフニスの出生の秘密

父ディオニューソファネースにアスチュロスはダフニスを召使にすることを話し、許可を得ました。ディオニューソファネースは喜んで、ラモーンとミュルタレー夫妻にそのことを告げたのです。
しかし、ラモーンはキッパリ断りました。

「旦那様、これから真実を話します。ダフニスは本当の息子ではありません。捨て子だったのを牝山羊が育てていたのです。そばには高価な品々が一緒にありました。若旦那様の召使にしていただくのはありがたいのですが、グナトーンの慰み者になるのは見逃せません」

そこにいたグナトーンは怒り、ラモーンに「殴るぞ!」と脅しました。ご主人はそんなグナトーンを睨みつけ「黙れ!」と一喝すると、ラモーンに「詳しく話しなさい」と命じました。

しかし話していても解決しないので、証拠の品々を出すよう命じました。ラモーンの妻ミュルタレーが家から証拠の品々を持ってくると、ご主人は「おお、ゼウス様!」と言って、妻クレアリステーを呼びました。

「まあ、運命の女神様、これらは私らがわが子につけてやった品々。ソーフロシュネーにあの子を抱いていかせたのは、たしかにこのへんの田舎でございました。ダフニスは私たちの子なのですね」

アスチュロスはダフニスが自分の兄弟だとわかると、大勢の人々と庭園の方へ走って行きました。ダフニスはそんな彼らを見ると、恐れから海の方へ逃げていきました。

アスチュロスは、叫びました。
「ダフニス、止まれ。怖がることはない。ぼくは君の兄弟だったんだ。ぼくの両親は、きみの両親でもあったんだ。証拠の品も見せてくれた。振り向いてごらん。みんな祝福したくてニコニコしているだろ」

こうして、ダフニスとアスチュロス兄弟、ご主人夫妻、大勢の下僕や女中たちは、うれし泣きし互いに喜びあいました。

ディオニューソファネースは、なぜダフニスを捨てたのか説明しました。
ご主人夫妻には、男の子、女の子、アスチュロスの3人の子がいたのです。その後にできたのがダフニス。3人以上の子は必要ないと、高価な品々をつけて捨てられたのです。(古代ギリシャではよくあることでした)

ところが、上の男の子と女の子は同じ病で死んで、アスチュロスだけが残ってしまいました。

「ダフニスよ、そういうわけで恨んでくれるな。アスチュロスも財産が二分されるが、兄弟仲良くしてくれ。この土地だけはダフニスとラモーン夫妻に与える。山羊も一緒にな」

この後、盛大な宴会が開かれることになりました。ダフニスの噂が広まったので、お祝いにかけつける人々が大勢いました。そんな中でクロエーの養父ドリュアースとナペー夫妻は、一番にかけつけました。

あの酔っぱらいグナトーンだけは出席できず、ディオニュソスの社に隠れていました。

ダフニスは山羊飼いとして使っていた品々を、それぞれの神様に奉納しました。ディオニュソスには肩にかける袋と毛皮、パーンには竪笛と横笛、ニンフたちには牧童杖と乳桶などです。牝山羊と牡山羊にも、別れをしました。

牛飼いランピス、クロエーを拐う

クロエー
〈クロエー〉

その頃クロエーは、ひっそりと隠れて泣いていました。
「ダフニスはもうわたしのことは忘れ、金持ちの娘と結婚する夢を見ているわ。さよなら、ダフニス。わたしはもう生きていけない......」

こんなクロエーを、高慢な牛飼いランピスがさらっていったのです。これを見ていた者がナペーに知らせ、ナペーは夫ドリュアースに、ドリュアースがダフニスに知らせました。

ダフニスは意気消沈して、自分が高い身分になったことを嘆きました。なぜなら、山羊飼いの時の方が、クロエーと一緒にいられたからです。

これを聞いたグナトーンはダフニスとの仲直りの機会だと考え、若者を連れてドリュアースにランピスの小屋へ案内させました。するとまさにランピスがクロエーを小屋に入れるところでした。

ランピスには逃げられましたが、グナトーンはクロエーをダフニスのところに連れてくると、一部始終を彼に話しました。そして、今までのことは許してもらい、ダフニスもクロエーの恩人だと感謝しました。

クロエーの出生の秘密

クロエーを着飾せるクレアリステー
〈クロエーを着飾せるクレアリステー〉

ダフニスとクロエーは結婚のことはご主人の妻クレアリステーだけに話し、クロエーをどこかに隠しておこうと相談しました。しかしドリュアースは反対し、ご主人に説得してみせると言いました。

明くる日、ドリュアースはクロエーの証拠の品々を持って、ディオニューソファネースとクレアリステー夫妻を訪ねました。

「ご子息ダフニスと同じように、クロエーも私たちの子ではありません。ニンフの洞で、牝羊に育てられていたのです。証拠の品々もあります。どうか、あの子の両親を探してやってください。ダフニスには似合いの花嫁かもしれません」

その後、クレアリステーはクロエーを着飾りました。ディオニューソファネースはダフニスにクロエーにはまだ手をつけていないことを確認し、宴会に2人を座らせました。クロエーの美しさに、あらためて一同は目を見張りました。

続く数日の間に、クロエーもダフニスと同じように、羊飼いの品々を神様に奉納しました。

村での祝いも十分にすますと、町に帰ってクロエーの両親を探すことにしました。ラモーンとミュルタレーの夫妻、ドリュアースとナペーの夫妻にたくさんの褒美を与え、一行は馬車でミュティレーネーの町に向かいました。

到着したのは夜でしたが、翌朝にはディオニューソファネースに息子が見つかったことで大騒ぎになり、またクロエーの美しさも人々は触れ回ります。そして、みんなはクロエーのご両親が見つかることを祈りました。

ディオニューソファネースは色々考えているうちに、深い眠りに落ち夢を見ました。

ニンフたちがエロースに2人の結婚を許してくれないかと頼んでいます。すると、エロースはディオニューソファネースに向かって、ミュティレーネーの上流階級の人々を宴会に招き、最後にクロエーの品々を見せ、結婚を祝いなさい、と言いました。

ディオニューソファネースは目が覚めると、宴会の準備を命じました。

そして、宴会が最後になると、1人の給仕人が例の証拠品を銀の器にのせて、すべての客に見せて回ったのです。最後の1人が老人メガクレースで、その品々を見ると、老人は大きな声を上げました。

「これはいったい何じゃ。娘よ、お前はどうなったのじゃ。お前はまだ生きているのか、どこかの羊飼いが、この品だけを持っていったのか。ディオニューソファネースよ、頼むから話してください。あなたはわたしの娘の証拠の品をどこから手に入れなすった」

ディオニューソファネースは、メガクレースに娘を捨てた経緯を話してくれと尋ねました。

「以前のわしの生活は、楽ではなかったのです。そんな時に生まれた女の子をニンフの洞に品々を持たして捨てたのです。その後、財産ができても子供には恵まれなかったのですが、やがて神様が〈羊たちがわしを父親にしてくれる〉との夢を、見せてくださるのです」

驚いたのは、ディオニューソファネースです。大きな声を上げると、クロエーを連れてきて老人に告げます。
「この娘が、あなたのお捨てになった娘さんです。羊がこの娘を育ててくれたのです。ダフニスを山羊が育てたようにね。どうぞこれらの品とクロエーをお取りください。そのうえでダフニスの嫁にしてやってください」

ダフニスとクロエーの結婚

結婚の祝宴
〈ダフニスとクロエーの結婚の祝宴〉

メガクレースは礼を言うと妻のロデーを呼びよせ、クロエーを抱きしめました。その夜は、みんなディオニューソファネースの屋敷に泊まることになりました。
夜があけると、一同は村に帰ることにしました。町の暮らしになじめないと、ダフニスとクロエーがそう頼んだのです。

やがて一同はラモーンの家に着くと、ドリュアース夫妻とメガクレース夫妻を引き合わせ、盛大な祝宴の準備を始めました。

宴会はニンフの洞の前で開かれました。村人全部、ラモーンとミュルタレー、ドリュアースとナペーの両夫婦、ドルコーンの近親たち、フィレータースとその子供たち、クローミスとリュカイニオン夫婦も列席しました。なんと、クロエーをさらったランピスも許されて顔を見せています。

ダフニスとクロエーの祝宴は、田舎風に行われました。また、2人は生涯、牧人風の暮らしを変えませんでした。2人が神として崇めるのは、ニンフたちとパーン、そしてエロースです。

夜になりダフニスとクロエーは着物を脱ぎ、並んで横になると、しっかりと抱きあい接吻を繰り返しました。そして、ダフニスはリュカイニオンが教えてくれたことを初めてクロエーにこころみます。この時になってようやく、クロエーにも森で二人がしていたことは、幼い遊びにすぎなかったことがわかったのです。

やがて、男の子が生まれるとフィロポイメーン(家畜を可愛がる者)、女の子が生まれるとアゲレー(家畜の群れ)と名前をつけました。
[終わり]

結ばれる2人
〈結ばれるダフニスとクロエー〉

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