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結婚の祝宴〈ダフニスとクロエーの結婚の祝宴〉

クロエーの出生の秘密②

その後、クレアリステーはクロエーを着飾りました。ディオニューソファネースはダフニスにクロエーにはまだ手をつけていないことを確認し、宴会に2人を座らせました。クロエーの美しさに、あらためて一同は目を見張りました。

続く数日の間に、クロエーもダフニスと同じように、羊飼いの品々を神様に奉納しました。

村での祝いも十分にすますと、町に帰ってクロエーの両親を探すことにしました。ラモーンとミュルタレーの夫妻、ドリュアースとナペーの夫妻にたくさんの褒美を与え、一行は馬車でミュティレーネーの町に向かいました。

到着したのは夜でしたが、翌朝にはディオニューソファネースに息子が見つかったことで大騒ぎになり、またクロエーの美しさも人々は触れ回ります。そして、みんなはクロエーのご両親が見つかることを祈りました。

ディオニューソファネースは色々考えているうちに、深い眠りに落ち夢を見ました。ニンフたちがエロスに2人の結婚を許してくれないかと頼んでいます。すると、エロスはディオニューソファネースに向かって、ミュティレーネーの上流階級の人々を宴会に招き、最後にクロエーの品々を見せ、結婚を祝いなさい、と言いました。

ディオニューソファネースは目が覚めると、宴会の準備を命じました。

そして、宴会が最後になると、1人の給仕人が例の証拠品を銀の器にのせて、すべての客に見せて回ったのです。最後の1人が老人メガクレースで、その品々を見ると、老人は大きな声を上げました。

「これはいったい何じゃ。娘よ、お前はどうなったのじゃ。お前はまだ生きているのか、どこかの羊飼いが、この品だけを持っていったのか。ディオニューソファネースよ、頼むから話してください。あなたはわたしの娘の証拠の品をどこから手に入れなすった」

ディオニューソファネースは、メガクレースに娘を捨てた経緯を話してくれと尋ねました。
「以前のわしの生活は、楽ではなかったのです。そんな時に生まれた女の子をニンフの洞に品々を持たして捨てたのです。その後、財産ができても子供には恵まれなかったのですが、やがて神様が〈羊たちがわしを父親にしてくれる〉との夢を、見せてくださるのです」

驚いたのは、ディオニューソファネースです。大きな声を上げると、クロエーを連れてきて老人に告げます。
「この娘が、あなたのお捨てになった娘さんです。羊がこの娘を育ててくれたのです。ダフニスを山羊が育てたようにね。どうぞこれらの品とクロエーをお取りください。そのうえでダフニスの嫁にしてやってください」

ダフニスとクロエーの結婚

メガクレースは礼を言うと妻のロデーを呼びよせ、クロエーを抱きしめました。その夜は、みんなディオニューソファネースの屋敷に泊まることになりました。

夜があけると、一同は村に帰ることにしました。町の暮らしになじめないと、ダフニスとクロエーがそう頼んだのです。やがて一同はラモーンの家に着くと、ドリュアース夫妻とメガクレース夫妻を引き合わせ、盛大な祝宴の準備を始めました。

宴会はニンフの洞の前で開かれました。村人全部、ラモーンとミュルタレー、ドリュアースとナペーの両夫婦、ドルコーンの近親たち、フィレータースとその子供たち、クローミスとリュカイニオン夫婦も列席しました。なんと、クロエーをさらったランピスも許されて顔を見せています。

ダフニスとクロエーの祝宴は、田舎風に行われました。また、2人は生涯、牧人風の暮らしを変えませんでした。2人が神として崇めるのは、ニンフたちとパーン、そしてエロスです。

夜になりダフニスとクロエーは着物を脱ぎ、並んで横になると、しっかりと抱きあい接吻を繰り返しました。そして、ダフニスはリュカイニオンが教えてくれたことを初めてクロエーにこころみます。この時になってようやく、クロエーにも森で二人がしていたことは、幼い遊びにすぎなかったことがわかったのです。

やがて、男の子が生まれるとフィロポイメーン(家畜を可愛がる者)、女の子が生まれるとアゲレー(家畜の群れ)と名前をつけました。

[終わり]

結ばれる2人〈結ばれるダフニスとクロエー〉