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ダフニスの出生の秘密

父ディオニューソファネースにアスチュロスはダフニスを召使にすることを話し、許可を得ました。ディオニューソファネースは喜んで、ラモーンとミュルタレー夫妻にそのことを告げたのです。

しかし、ラモーンはキッパリ断りました。
「旦那様、これから真実を話します。ダフニスは本当の息子ではありません。捨て子だったのを牝山羊が育てていたのです。そばには高価な品々が一緒にありました。若旦那様の召使にしていただくのはありがたいのですが、グナトーンの慰み者になるのは見逃せません」

そこにいたグナトーンは怒り、ラモーンに「殴るぞ!」と脅しました。ご主人はそんなグナトーンを睨みつけ「黙れ!」と一喝すると、ラモーンに「詳しく話しなさい」と命じました。

しかし、話していても解決しないので、証拠の品々を出すよう命じました。ラモーンの妻ミュルタレーが家から証拠の品々を持ってくると、ご主人は「おお、ゼウス様!」と言って、妻クレアリステーを呼びました。

「まあ、運命の女神様、これらは私らがわが子につけてやった品々。ソーフロシュネーにあの子を抱いていかせたのは、たしかにこのへんの田舎でございました。ダフニスは私たちの子なのですね」

アスチュロスはダフニスが自分の兄弟だとわかると、大勢の人々と庭園の方へ走って行きました。ダフニスはそんな彼らを見ると、恐れから海の方へ逃げていきました。

アスチュロスは、叫びました。
「ダフニス、止まれ。怖がることはない。ぼくは君の兄弟だったんだ。ぼくの両親は、きみの両親でもあったんだ。証拠の品も見せてくれた。振り向いてごらん。みんな祝福したくてニコニコしているだろ」

ご主人がダフニスを捨てた理由

こうして、ダフニスとアスチュロス兄弟、ご主人夫妻、大勢の下僕や女中たちは、うれし泣きし互いに喜びあいました。
ディオニューソファネースは、なぜダフニスを捨てたのか説明しました。

ご主人夫妻には、男の子、女の子、アスチュロスの3人の子がいたのです。その後にできたのがダフニス。3人以上の子は必要ないと、高価な品々をつけて捨てられたのです。(古代ギリシャではよくあることでした)

ところが、上の男の子と女の子は同じ病で死んで、アスチュロスだけが残ってしまいました。
「ダフニスよ、そういうわけで恨んでくれるな。アスチュロスも財産が二分されるが、兄弟仲良くしてくれ。この土地だけはダフニスとラモーン夫妻に与える。山羊も一緒にな」

この後、盛大な宴会が開かれることになりました。ダフニスの噂が広まったので、お祝いにかけつける人々が大勢いました。そんな中でクロエーの養父ドリュアースとナペー夫妻は、一番にかけつけました。

あの酔っぱらいグナトーンだけは出席できず、ディオニュソスの社に隠れていました。

ダフニスは山羊飼いとして使っていた品々を、それぞれの神様に奉納しました。ディオニュソスには肩にかける袋と毛皮、パーンには竪笛と横笛、ニンフたちには牧童杖と乳桶などです。牝山羊と牡山羊にも、別れをしました。

牛飼いランピス、クロエーを拐う

その頃クロエーは、ひっそりと隠れて泣いていました。
「ダフニスはもうわたしのことは忘れ、金持ちの娘と結婚する夢を見ているわ。さよなら、ダフニス。わたしはもう生きていけない......」

こんなクロエーを、高慢な牛飼いランピスがさらっていったのです。これを見ていた者がナペーに知らせ、ナペーは夫ドリュアースに、ドリュアースがダフニスに知らせました。

ダフニスは意気消沈して、自分が高い身分になったことを嘆きました。なぜなら、山羊飼いの時の方が、クロエーと一緒にいられたからです。
これを聞いたグナトーンはダフニスとの仲直りの機会だと考え、若者を連れてドリュアースにランピスの小屋へ案内させました。するとまさにランピスがクロエーを小屋に入れるところでした。

ランピスには逃げられましたが、グナトーンはクロエーをダフニスのところに連れてくると、一部始終を彼に話しました。そして、今までのことは許してもらい、ダフニスもクロエーの恩人だと感謝しました。

クロエー〈クロエー〉

クロエーの出生の秘密①

クロエーを着飾せるクレアリステー〈クロエーを着飾せるクレアリステー〉

ダフニスとクロエーは結婚のことはご主人の妻クレアリステーだけに話し、クロエーをどこかに隠しておこうと相談しました。しかしドリュアースは反対し、ご主人に説得してみせると言いました。

明くる日、ドリュアースはクロエーの証拠の品々を持って、ディオニューソファネースとクレアリステー夫妻を訪ねました。
「ご子息ダフニスと同じように、クロエーも私たちの子ではありません。ニンフの洞で、牝羊に育てられていたのです。証拠の品々もあります。どうか、あの子の両親を探してやってください。ダフニスには似合いの花嫁かもしれません」

ダフニスとクロエー[巻4]大団円③結婚[シャガール]