1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈1話5分で読める聖書-アートバイブル

ギリシャ神話ホームギリシャ悲劇|アガメムノン【3】妻と情夫アイギストスに殺害される

アガメムノン【3】妻と情夫アイギストスに殺害される

(更新日:2021.05.02)

躊躇するクリュタイメストラ
ピエール=ナルシス・ゲラン〈躊躇するクリュタイメストラ〉

アイスキュロス作『アガメムノン』【3/3】オレステイア3部作の第1作
コロス(合唱隊)=アルゴス市の長老たち

アガメムノンの殺害

(王宮の中から)
アガメムノン
ううむ、切りつけおったな、急所を深く......。
コロス
静かに。誰か手傷を受けたと叫んでいる。
アガメムノン
ううむ、またもやられた、二度までひどく。
コロスの長
殿のあの叫びでは、企みが果たされたらしいぞ。どうしたものか皆の衆、思案を。
コロス
誰か殺害を触れ回ったらどうか
中に入って、証拠をおさえよう
これから奥方は圧政をしくつもりだ
圧政よりは死んだ方がまし
文句を言っても殿は生き返らぬ
いや、とても我慢がならぬ

(門が開き、クリュタイメストラ登場、足元には血に染まったアガメムノンとカッサンドラーが倒れている)
コロス
奥方はなんという酷いことを。国から追われましょうぞ。

アガメムノンの殺害
〈アガメムノンの殺害〉

クリュタイメストラとアイギストスの弁明

クリュタイメストラ
私は分かる人々だけに話します。トロイア戦争の時、自分の娘を、この私の腹を痛めた、何よりも可愛い子をアウリスの港で生け贄に捧げられたとき、この人こそ、追放するはずだったのではないの、神への冒瀆の償いとして。
娘のための正義にかけても、愚行を戒めるアーテー女神と復讐の女神らにかけて、私はこの人を生け贄として殺したのです。また、何人もこの王宮へは足を踏み入れさせません。竃(かまど)の火を新たな主アイギストス様がおともしなさるあいだは。
(アイギストス、手下を従えて登場)
アイギストス
ああ、正義をもたらす今日、ありがたい光明よ。とうとう、アガメムノンの父アトレウスが、私の父チュエステスを追放した後に、和解と偽り、二人の子の肉切れを食べさせた企み、その時三人目の子であり産着にくるまれた私をも追放した償いをする羽目になった。されば、私は正義によるこの男の抹殺の計画者なのだ。
コロス
アイギストス殿、不幸のさなかで驕るというのはよくないこと。自らすすんで、この方を殺したと言われるのか。いずれ裁きを受け、市民の呪いを受け、刑を受けるはめになろう。
アイギストス
お前らは、船をこぐ舟子たち、下の段についていながら、上座の座にいて船を支配する者にむかい、そのようなことを言うのか、老人の身で。
コロス
それなら、あなたはこのアルゴスの僭主になろうというのか。アガメムノンの子オレステス様がこの国に帰ってこられ、奥方共々おぬしを殺してくださるように。
アイギストス
そのようなことを言ったりするなら、目にものを見せてやろう。よいか、仲間の者ども刀を構えよ。死も厭うまいぞ。
コロス
こちらも一身の死を持って、刀を構えようぞ。

アイギストスとクリュタイメストラの統治が始まる

(クリュタイメストラ、両陣営の間に入りなだめる)
クリュタイメストラ
ねえ、愛しい方、この上禍いを重ねようとは。双方、たくさんの犠牲者が出てしまいます。さあ、長老の方々、お帰りなさいませ、ひどい目にあわないうちに。
アイギストス
正しい分別を失い、支配者に侮辱をくわえるものではないか。
コロス
このアルゴスには、悪人に尾を振るようなものは一人もいないぞ。
アイギストス
後日、おまえら皆、思い知らせてくれようぞ。
コロス
せいぜい威張りちらすがいいぞ、雌鳥のそばの雄鶏みたいに。
クリュタイメストラ
(アイギストスに)あんな役立たずな遠吠えを気にかけてはいけませぬ。今は、私と愛しいあなたが王宮の主、アルゴスの領主として統治すればよいのですから。

前のページへ 次のページへ