オリュンポス12神の〈レア〉なエピソードを取り上げてみました。少しマニアックかもしれませんが、知らない方も多いと思います。
酒神ディオニュソスの代わりに、炉の神ヘスティアが入ることもあります。ヘスティアは自分の代わりに、甥であるディオニュソスに12神の座を譲りました。
ヘスティアは、オリュンポスの神々の中では一番年長者になります。女神はポセイドンとアポロンから求婚されました。しかしどちらも断り、ゼウスに永遠の処女と認められたました。ヘスティア、アテナ、アルテミスの3人が処女神です。
※ハデスは冥界の王ですから、オリュンポスの十二神には入りません。ここでは、ゼウス、ポセイドンと並んで代表的な神なので紹介します。
- 大神ゼウス
- 女神ヘラ
- 海神ポセイドン
- 女神アテナ
- 軍神アレス
- 太陽神アポロン
- 月の女神アルテミス
- 美の女神アフロディテ
- 鍛冶の神ヘパイストス
- 豊穣の女神デメテル
- 嘘と泥棒の神ヘルメス
- 酒神ディオニュソス
- 冥界の王ハデス[番外]
目次
[オリュンポス12神①]大神ゼウス
ゼウスがまだ掟の女神テミスと結婚していたころ、美しかった女神ヘラに恋しました。そのとき、なんとゼウスは鳥のカッコウに化けてヘラに近づいたのです。
なぜ、鳥のカッコウだったのでしょうか? 女神に「可愛い!」と思われたかったのでしょうが、大神としての本来の姿に戻ったとき、なんと説明したのでしょうか? 残念ながら言い伝えはありません。
しかし、既婚者のゼウスをヘラは最初は受けつけず、「結婚してくれれば、抱いてもいいわ」と言ったのです。ゼウスは仕方なく「テミスとは離婚する」と言い、ヘラと結婚することになったのです。
[オリュンポス12神②]女神ヘラ
ゼウスが浮気すると、ヘラは相手の女神や女性に嫉妬して怒ります。また、ヘラクレスの場合は、浮気相手の息子として数々の難行を与えました。このように、ヘラには「嫉妬するおばさん」のイメージがついてしまい、ゼウスにも愛されることが少なくなったようです。
ところが、毎年春になると、ヘラはナウプリアのカナートスの聖なる泉で沐浴します。女神はリフレッシュすると、若さを取り戻し、美の女神アフロディテにも劣らず美しくなります。このときは、さすがにゼウスも他の女神や女性には目もくれずにヘラを愛したといいます。
[オリュンポス12神③]海神ポセイドン
ポセイドンの妃アンピトリテは絶世の女神です。そんな女神ですが、怪物を飼育しています。代表的な怪物は、アンドロメダを救うためにペルセウスが倒した怪物ケートスです。
また、ポセイドンの求婚から逃げたアンピトリテを探し出したのが1匹のイルカです。このお手柄によって、イルカは天にあげられ〈いるか座〉になりました。
ポセイドンとアンピトリテの子供がトリトンです。手塚治虫の漫画『海のトリトン』。トリトンは可愛いですが、トリトンは海の怪物です。
[オリュンポス12神④]女神アテナ
ギリシャ神話の処女神は、アテナ、アルテミス、ヘスティアの3女神です。
アテナは、一度鍛冶の神ヘパイストスに襲われたことがあります。鍛冶の神が、妻であるアフロディテに相手にされなかったときのこと。アテナが仕事場にやってきたとき、ヘパイストスがアテナに欲情したのです。
逃げるアテナを追いかけたヘパイストスは、思わず女神の足に精液を漏らしてしまいました。女神がそれを羊毛でふき取り大地に投げると、そこからエリクトニオスが誕生しました。
この子は、上半身が人間で下半身が蛇です。アテナは彼を自分の神殿で育てました。だから、アテナの子供がエリクトニオスと言われることもあるのです。
[オリュンポス12神⑤]軍神アレス
アレスは軍神ですから、かなり強いのだろうと思われています。ところが、女神アテナよりはるかに弱いのです。それが発覚したのは、トロイア戦争の時です。
トロイア戦争では、オリュンポスの神々もギリシャ側とトロイア側に別れ、戦ったのです。アテナはギリシャ側で、アレスはトロイア側で戦いました。
アテナvsアレス。どちらが勝ったと思いますか?
アレスがアテナに躍りかかり、槍でアイギスの楯を突きます。アテナは後ろに下がると、大きな石を拾い上げ、アレスに投げつけました。
石は、首のあたりを直撃。アレスは大きく手足を伸ばし、仰向けに倒れ気絶してしまいました。
「愚か者アレスよ。私の方がそなたよりどれほど強いか、まだわかっていないのか」と、アテナ。
この時、アレスの愛人アフロディテが、助けおこし連れて行こうとしました。アテナは二人に近づくと、彼女の胸を一撃。今度は二人とも、地面に横たわります。
[オリュンポス12神⑥]太陽神アポロン
アポロンの「初恋」の相手はダプネー。彼女が月桂樹に変身して、アポロンの悲恋に終わったことはよく知られています。
その後も彼女のことが忘れられず、アポロンは月桂樹を自分の樹にし、勝者の冠に月桂樹を使うようになりました。
また、ダプネーだけでなく、アポロンの恋は悲恋に終わることが多いのを知っていますか。
たとえば、トロイアの姫カッサンドラ。アポロンは彼女に予言の力を与えて、恋人にしようとしました。彼女は予言の力を得た瞬間、アポロンとの別れを予知します。
だから、カッサンドラはアポロンを拒みました。アポロンは怒り、彼女の予言を誰も信じないようにしました。トロイアの木馬を城内に入れるとき、カッサンドラは反対しましたが、市民は誰も彼女を信じずトロイアは陥落しました。
また、医学の神アスクレピオスの母コロニスはアポロンを裏切り、イスキュスという男を愛しました。アポロンはコロニスを弓矢で射殺しました。
このとき、アポロンにコロニスの不義を伝えたのが、白いカラス。その後、アポロンの怒りによって黒いカラスとなったのです。
[オリュンポス12神⑦]月の女神アルテミス
アルテミスは、冷酷なの処女神といえましょう。
アクタイオンは狩りの後涼しげな場所を求めて、たまたまアルテミスの聖なる泉を見つけました。このとき女神と従者のニンフたちが、水浴していたのです。アルテミスは怒り、言い放ちました。
「わたしの裸を見たと言いふらすがいい。それができればね」
アクタイオンは、牡鹿に変身させられました。その後、狩の彼の友と犬たちに追われ、死をむかえます。
また、付き従っているニンフのカリストが、アルテミスに化けたゼウスに言い寄られ、妊娠してしまいます。
やがて、お腹が大きくなったカリスト。女神にばれて、クマに変身させられ追放されます。悪いのはゼウスとわかっていたはずなのですが。
[オリュンポス12神⑧]美の女神アフロディテ
夫ヘパイストスは鍛冶の神で不男でした。それが原因かどうかわかりませんが、美の女神アフロディテには、多くの愛人がいました。
たとえば、人間の愛人ではトロイアの武将アンキセス。彼はローマ建国の父アイネイアスの父親です。
そして、女神のツバメ(年下の愛人)がアネモネの花になったアドニス。同じ神では、軍神アレスが女神の代表的な愛人です。その情事のエピソードは次を参照してください。
[オリュンポス12神⑨]鍛冶の神ヘパイストス
天界の『美女と野獣』の組み合わせ。ヘパイストスは神々の中で1番の不男。そんな彼は父ゼウスにより、神々の中でも1番の美女アフロディテを奥さんにしました。ゼウスの雷霆(イカヅチ)を鍛えたからです。
しかし、アフロディテは浮気のし放題。オリュンポスでは、女神と軍神アレスとの関係は知らぬ者がいないほど。
2人の浮気現場をたびたび見ていた太陽神ヘリオスは、ヘパイストスが気の毒になり、密告します。ヘパイストスはじっと耐えて、アフロディテとアレスのベッドに罠を仕かけます。
こうして、アフロディテとアレスの浮気は神々にさらされることになったのです。
[オリュンポス12神⑩]豊穣の女神デメテル
デメテルの娘ペルセポネが失踪しました。デメテルは「ハデスがゼウスにそそのかされてペルセポネを冥界に連れ去った」と知ります。しかし、ハデスは〈名高き人〉〈富者〉〈良き忠告者〉と言われています。
ハデスが自分からそんなことをするはずがないと考え、女神は天界のゼウスに抗議します。
「冥界の王ハデスなら、ペルセポネの夫としては不釣合いではないだろう」
ゼウスはハデスをそそのかしたことを認め、ハデスにペルセポネを天界に戻すよう命じます。しかし、ペルセポネは冥界のザクロの実を食べたため、冥界に1年の1/3はハデスといることになったのです。
デメテルがハデスがペルセポネを略奪したと知ったのは、アレトゥーサの告白からという別説もあります。
[オリュンポス12神⑪]嘘と泥棒の神ヘルメス
早朝に生まれ、昼にはゆりかごを抜けだしたというヘルメス。
アポロンの飼っていた牛50頭を盗みます。牛たちを後ろ向きに歩かせ、偽装までしました。牛がいないことに気付いたアポロン。牛たちの足跡の偽装に戸惑いますが、鳥占いにより、犯人はヘルメスだとわかりました。
アポロンは、ヘルメスの母マイアを責めました。しかし、母はオムツをした赤子を指差し、「???」不可解だと訴えます。今度は、アポロンはゼウスの前にヘルメスを連れて行きます。ヘルメスは牛を盗んだことを否定しましたが、ゼウスは牛を返すように命令しました。
まだ納得できないアポロン。そのとき、ヘルメスは捕らえた亀の甲羅に牛の腸で作ったガットを張った竪琴を奏でました。アポロンは、牛と竪琴を交換することでヘルメスを許します。
さらにヘルメスが葦笛をこしらえると、アポロンはケーリュケイオンの杖と葦笛を交換しました。
[オリュンポス12神⑫]酒神ディオニュソス
ラビリンス(迷宮)でミノタウロスを倒したテセウス。糸玉によって助けてくれたアリアドネを伴い、アテナイに帰る時ナクソス島で休憩しました。
その時、アリアドネの父ミノス王の追手が迫り、テセウスたちは急遽出発。昼寝をしていたアリアドネは誰にも気づかれず、置いていかれたのです。別説では、女神アテナが置いていくように指示したとも言われています。
悲しみに囚われたアリアドネを見つけ、妻にしたのが若き酒神ディオニュソスでした。
[オリュンポス12神+α]冥界の王ハデス
ハデスは〈富者〉〈名高き人〉〈良き忠告者〉といわれ、浮いた話がありません。また、妃になるペルセポネを略奪したのは、彼にとっては珍しく大胆な行動だったようです。それもそのはず、ゼウスがどうもそそのかしたからのようです。
また、ハデスとペルセポネには子供はいません。
オルペウス教に登場する少年神ザグレウスがハデスの子ともいわれますが、彼はゼウスの子ともいわれたり、また酒神ディオニュソスの別名ともいわれています。
冥界は死者が最後に行くところ。だから、死の国で子供が誕生するということはないのかもしれません?