メーデイア、キルケ、パーシパエー
〈メーデイア、キルケ、パーシパエー〉

魔女と忌まわしき血の家系!

メーデイア、キルケ、パーシパエーの家系
家系図を見てください。ギリシャ神話に登場する超有名な魔女2人(メーデイアとキルケ)がいます。
魔女キルケは『オデュッセイア』に登場し、オデュッセウスの部下を豚に変えてしまいます。また、スキュラに恋するグラウコスへの嫉妬心から彼女をを有名な怪物「スキュラ」にしてしまいます。
魔女メーデイアは『アルゴー船の遠征』のイアソーンに一目惚れし、彼を父コルキス王の罠から助けます。また、イアソーンと一緒にアルゴー船で父の船団から逃げる時には、弟を殺しバラバラにして海に投げ入れます。船団の乗員がバラバラになった弟の死体を回収することがわかっていたからです。その隙に逃げたのです。
また、イアソーンに新しい恋人ができると、イアソーンとの子供2人を殺しアテナイのアイゲウス王のところに逃げていきます。王の子テーセウスがアテナイに帰ってくると、彼を殺そうとしましたが失敗します。そして、故郷コルキスへ帰っていきました。
そして、パーシパエー。彼女も魔女で、夫は有名なクレータ島の王ミーノースです。王は女好きで浮気する時、パーシパエーは夫に魔法をかけます。王が女を抱こうとすると体から獣(あるいは蛇やムカデ、サソリ)を放って相手の女を殺してしまうのです。

ミノタウロスの母パーシパエー

パーシパエーが有名なのは、あのラビリンスに幽閉された怪物ミノタウロスの母だからです。ミノタウロス誕生の裏には理不尽ですが、夫ミーノース王の海神ポセイドーンヘの裏切りがありました。
ミーノース王がクレータの王である証のために、ポセイドーンから美しい牡牛を授けてもらいます。王になったら、その牡牛をポセイドーンに捧げる約束だったのです。しかし、王は約束を破り、普通の牡牛を捧げたのです。
ポセイドーンは怒り、その怒りは王ではなく妃パーシパエーに向いたのです。彼女は牡牛に欲情するようになりました。その結果、ダイダロスに作らせた牡牛のハリボテに入り、牡牛に犯されました。生まれたのがミノタウロスです。
牡牛に恋した理由には、他にも2つの説があります。
一つが、女神アフロディーテとアレースの浮気をパーシパエーの父である太陽神ヘーリオスが女神の夫ヘーパイストスに告げたからです。これまた、女神の怒りが太陽神ではなく娘に向けられた理不尽な理由です。
もう一つは、パーシパエー自身が女神アフロディーテの崇拝をしなかったため、女神が牡牛に欲情させたというものです。
どんな理由があるにせよ、恋愛の女神アフロディーテの恋の力には、人間も、神々さえも無力です。そんな牡牛に恋してしまう母パーシパエーの娘二人も、すぐ恋のとりこになります。テーセウスに恋した姉アリアドネーとテーセウスの前妻の息子ヒッポリュトスに恋した妹パイドラです。

テーセウスに恋したアリアドネー

ミノタウロスを退治して、「アリアドネーの糸」によってラビリンスを脱出したテーセウス。彼はアリアドネーを伴って、クレータ島を脱出します。途中、ディオニュソスの島ナクソスで休憩中、ミーノース王の追っ手が近づいてきました。テーセウスたちは急いでナクソス島を出発しました。
しかし、アリアドネーは昼寝をしていて出発に気づかず、取り残されてしまいます。この後、酒神ディオニュソスの妃になります。恋に狂ったとしても、神の妻になったのですから、妹のパイドラーと比べればまだ幸せと言えるでしょう。

前妻の息子ヒッポリュトスに恋したパイドラー

テーセウスの後妻になったパイドラー。2人の子供を産んだ後、あろうことか前妻の息子ヒッポリュトスに恋をします。しかし、このヒッポリュトスは男でありながら、処女神アルテミスの狩りにお伴するほどでの堅物で、恋に全く関心がなかったのです。
ヒッポリュトスは、継母パイドラーの恋をはねつけました。その結果、パイドラーは夫テーセウスにばれることを恐れ、「ヒッポリュトスに襲われた」と嘘の手紙を残し、首をつって死んでしまいました。テーセウスはその手紙を真実とし、息子を呪い、海神ポセイドーンに息子の死を願います。ヒッポリュトスは死んでしまいます。
なぜ、前妻の息子に恋をするようになったのか?
パイドラーが女神アフロディーテをないがしろにしたからだといいます。ギリシャ悲劇『ヒッポリュトス』(エウリピデス作)に詳しく書かれています。
このように、この家系は「魔女と忌まわしき血の家系!」と言えるのではないでしょうか。
牡牛に恋したパーシパエー
ミノタウロスの誕生
テーセウスに見捨てられたアリアドネー
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前妻の息子に恋したパイドラー
【テーセウス物語 後編 ヒッポリュトスの死とペイトリオスと冥界へ
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