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【永遠の罰】神々に愛されたタンタロスの奇妙な行動

(更新日:2021.11.17)

神々の食卓にもつけるほどゼウスに愛されたタンタロス。そんなタンタロスが、息子ペロプスを殺し、その身体を切り刻んでシチューにして食事に出したということがまったく理解できません。神を試すつもりだったのか、たんなる善意から大切な息子でさえ、料理してしまったのか?
タンタロスの人となりを表すような会話や絵画があればいいのですが、性格を想像できるものはありません。まったくの謎です。

タンタロスの罰
〈タンタロスの罰〉

タンタロスの息子ペロプスの悲劇

人間タンタロスはゼウスの親しい友で、神々しか飲むことを許されぬ神酒ネクタルや、神々の食物アムブロシアーを食べることを許され、オリュンポス山の饗宴にも席を与えられていました。
また、タンタロスは不死の体を得てもいました。

こんなに神に愛されていたタンタロスですが、神を試すつもりだったのか、善意からだったのか、息子ペロプスを殺し、その身体を切り刻んでシチューにして食事に出したのです。

神々はみな料理の正体に気づいて口をつけませんでした。が、デーメーテールだけはその時娘のペルセポネーをハーデースに誘拐されていたため自失状態にありましたので、気付かず左肩の肉を食べてしまいました。このために後にペロプスが復活した際、デーメーテールは彼に自分が食べた左肩の代わりに象牙でできた肩を与えました。

タンタロスを罰してから、ゼウスはヘルメースに命じてペロプスの身体を集め、大釜で煮てまじないをかけました。デーメーテールは自分が食べた左肩の代わりに象牙でできた肩を与え、運命の女神クロートーが四肢を縫い合わせ、レアーが生命を吹き込んだのです。こうしてペロプスは輝くばかりの美少年となって生き返りました。ポセイドーンはペロプスを一目見て愛し、オリュンポスでゼウスがガニュメデスをそうしたように、ペロプスを自分の侍童としました。

ニオベの悲劇に涙を流したのが、ただ一人、兄弟のペロプスだけでした。ペロプスは美少年ですが、優しい心根を持っていたようです。
ニオベーの悲哀、誇りから女神の怒りをかう】参照

タンタロスの永遠の罰

またタンタロスは、オリュンポスでの饗宴から神酒ネクタルと神々の食物アムブロシアーをこっそり持ち帰り人間の友人に分け与えました。
タンタロスの行為は神々の激怒を買い、タルタロス(地獄)に送られました。

タルタロス(地獄)では、タンタロスは沼の上に枝を広げた樹に吊されています。沼の水は増えてくると、タンタロスは沼の水を飲もうとし口を出します。すると、あっという間に水は引いてしまいます。
また、樹の枝にはさまざまな果実が実っていますが、タンタロスが果実に手をのばすと、たちまち一陣の風が吹きだし、枝を舞い上げてしまいます。タンタロスは、永遠に果実を食べることはできません。
タンタロスは不死です、死ぬことはありません。だから、神々に永遠に止むことのない渇きと飢えの罰を与えられているのです。

同じように地獄で永遠の罰を受けているシーシュポス、イクシオン、ダナオスの娘たちと同じなのです。

永劫の罰の神話 ベスト3】参照

ランゲッティ〈タンタロスの拷問〉
ジョヴァン・バティスタ・ランゲッティ〈タンタロスの拷問〉

「タンタロス」という言葉は、拷問を意味します。

ヨーロッパなどでは、タンタロスの名は欲しい物が目の前にあるのに手が届かないじれったい苦しみの代名詞、慣用句に用いられています。
たとえば、英語の動詞「tantalize」は「(見せびらかして)じらす、じらして苦しめる」という意味。また、フランス語の「supplice de Tantale(タンタロスの責め)は「欲しい物が目の前にあるのに手が届かない苦しみ」という意味です。

ドイツ・オーストリア Tantalusqualen タンタロスの拷問
スペイン エル・スプリシオ・デ・タンタロ タンタロスの拷問
オランダ Tantaluskwelling タンタラスの拷問
ベルギー イェン・タンタルスクウェリング タンタルの拷問
セルビア タンタラブ・ムケ タンタロスの拷問
エスペラント タンタラ・スフェロ タンタロスの苦しみ
ブラジル Tãoperto ainda assim, tãolonge まだまだ近い

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