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【眠りの神ヒュプノス】夜の女神ニュクスの息子

(更新日:2023.03.27)

夜と眠りの神
イーヴリン・ド・モーガン〈夜と眠りの神〉

ヒュプノスとは?

ヒュプノスの父は原初の幽冥界を神格化したエレボス。母が夜の女神ニュクス。ヒュプノスはギリシア語で「眠り」の意味で、眠りを神格化した神です。ローマ神話では、ソムヌス。

ヘシオドスの『神統記』では、ヒュプノスの兄弟には死の神タナトス、義憤の神ネメシス、争いの神エリス(トロイア戦争の原因となった)、運命の三女神(クロトー、ラケシス&アトロポス)がいます。

ヒュプノスは兄タナトスとともに、大地のはるか下方、タルタロスの領域に館を構えています。そして母ニュクスが地上に夜をもたらす時には、彼も付きしたがって人々を眠りに誘います。

兄タナトスは非情の性格であるのに対し、ヒュプノスは穏やかで心優しい性格を持っています。人の死は、ヒュプノスが与える最後の眠りであるともいえます。

なお、エレボスとニュクスには、昼の女神ヘーメラー、上天の光明アイテール、地獄の渡し守カローンがいます。ニュクスとヘーメラーが昼と夜の表裏一体であるように、エレボスと息子アイテールも、地下の暗黒と上天の光明という表裏一体をなしています。

ニクスの系図
一般的な夜の女神ニュクスの系図:ヘスペリデスはアトラスの子と言われる異説もあります。また、神話には出てきませんが、ニュクスの子としてアパテ(欺瞞)、ピロテス(色事)、ゲーラス(老い)もいます。(ヘロドトス「神統記」より)

ヒュプノスとヘーラーとゼウス

オウィディウス『変身物語』では、眠りの神ヒュプノスはレムノス島の奥深い洞窟で眠っており、その周りには、モルペウスをはじめとする彼の子・夢の三神(オネイロス)が漂っています。

ヒュプノスはヘラクレスを迫害するヘーラーに頼まれて、ゼウスを眠らせたことがあります。その時ゼウスに罰せられるところを母ニュクスに助けられました。

また、トロイア戦争の際にも、戦争からゼウスの気をそらそうとしたヘーラーに頼まれてゼウスを眠らせ、その後ヘーラーからパーシテアー(美と優雅を司る女神、カリスたちの一人)を妻とすることを許されました。

ヒュプノスの館

七色の衣をまとうイーリスは大空に虹をかけながら、ヒュプノスの館へ出かけていきました。そこはどんよりとした空気に包まれ、静寂に支配されています。

門もなく、館の中央に黒檀(こくたん)でできた長椅子が一つおいてあり、黒い羽布団がしかれ、黒い垂れ幕がかかっています。

イーリスは、まとわりつく夢を追いはらい言いました。
「ヒュプノスよ、もの静かな神よ、心のしずめ役、悩み疲れた胸のなぐさめ役よ、アルキュオネーのところに行って、ケーユクスの死とその遭難のありさまとを知らせなさい」

イーリスは伝えると、よどんだ空気、眠気が全身に忍びよってくるのを感じて、その場をすぐに立ち去りました。

ヒュプノスには、人間に変身するのが得意な夢の神モルペウス、鳥獣に変身するイケロス、岩や木、水など物質に変身するパンタソスなどの息子がいます。ヒュプノスはモルペウスにイーリスの命令を伝えると、ふたたび枕に頭をのせ、心地よい眠りに身をまかせました。

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