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ゼウス

運命の秤は、まずはトロイア方に

「わしの言うことに、いかなる者も逆らう行動に出てはならぬ。トロイア、あるいはギリシャの加勢に向かってはならぬ。逆らった者はわしの雷撃を受け、惨めな姿でオリュンポスに戻ってくることになろう。

あるいは、冥界のはるか下のタルタロスに放り込んでやろう。わしの力は、神々と人間界の中でも卓越している。誰もわしに逆らうことはできない」

すると、ギリシャ方を応援しているアテナが
「父上の力は、われらはよく承知しており、戦いからは手を引きます。ただ、ギリシャ勢がことごとく戦死しないよう、何か知恵を授けるつもりです」

ゼウスはアテナに答えて
「案ぜずともよい。可愛い娘よ、わしはそなたには優しい父でありたいと思っている」
こう言うと、ゼウスは黄金の鎧をまとい、黄金の鞭を使い、二頭の馬に引かせた戦車に乗り、イデの山並みのガルガロン峰に向かいました。ここはゼウスの聖域です。

一方下界では、ギリシャ、トロイア両軍は総力戦となり、大地は血の海となりました。戦いが昼になった時、ゼウスは秤を取り出すと、トロイア方とギリシャ方の運命を秤に乗せます。すると、トロイアの方が上がりました。

ヘクトルvsディオメデス&老ネストル

ゼウスは雷光をギリシャ軍の中に投げると、ギリシャ勢はみな肝を冷やし、後ずさります。そんな中、老ネストルだけはその場に留まっています。パリスの矢で馬が射抜かれていて、動けなかったのです。

これを見逃さず、へクトルは老ネストルに迫ってきます。ディオメデスがそれに気づくと、老ネストルに言葉をかけます。
「老ネストルよ、さあ、わしの戦車に乗りヘクトルに立ち向かおう」

まず、ディオメデスが槍を放つと、槍はヘクトルの御者の胸に当たりました。ヘクトルは新しい御者の手に手綱を委ねます。が、このままではヘクトルは負けてしまい、トロイアの壊滅につながってしまう。

そう判断したゼウスはディオメデスの戦車の前に雷火を落としました。老ネストルは、すかさず
「ディオメデスよ、今は引き下がろう。ゼウスはヘクトルに名誉を授けるつもりだ」

ディオメデスの無念

ディオメデスは、口惜しさにつぶやきます。
「へクトルは大口をたたくであろう『ディオメデスはわしに歯が立たないので、船に逃げ帰った』と。なら、いっそのこと、大地よ裂けてわしを呑み込んでくれ」

老ネストルは若いディオメデスをいさめます。
「お主とあろうものが、何を言っておる。お主に打たれたトロイア戦士の妻たちがヘクトルの言葉など信じるはずがないではないか」

こうして、二人が引きあげていくと、すかさずヘクトルが
「とっとと逃げ帰るがいい、女同然の木偶の坊めが」

ディオメデスは引き返し戦うか思案していると、ゼウスが三たび雷を鳴らします。

ヘクトルは、大声でトロイア勢を呼びます。
「ゼウスの神意は我らトロイアにある。あのやわな防壁が、私の力を防げるはずがない。あの濠だって、私はやすやす飛び越える。さあ、ギリシャ勢の船を焼きに行くぞ」

ヘレと海神ポセイドン

ギリシャ勢を手助けする女神ヘラは憤然とし、椅子の上で身を震わせ言います。
「ポセイドンよ、ギリシャ勢が次々に倒れていくのを見ながら、指をくわえているのですか。どうか、彼らに勝利を。そうすれば、ゼウスだってイデの峰でふさぎ込むことでしょう」

「ヘラよ、それはまた乱暴な。ゼウスには逆らえないのを知っておろう」