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アガメムノンとされていたミケーネの葬儀用マスクアガメムノンとされていたミケーネの葬儀用マスク

あらすじ

暁の女神エオスが昇ると、ゼウスは争いの女神エリスをギリシャ軍の陣営へ送り込みました。エリスの叫びによって兵士たちは戦意を燃やし、両軍は激しく激突します。

総大将アガメムノンは先頭に立って戦い、トロイア軍を城壁近くまで押し戻すほどの奮戦を見せました。

しかしゼウスは虹の女神イリスを通じてヘクトルに密命を与え、アガメムノンが負傷して退く時を待つよう命じます。

やがてアガメムノンは戦傷を負って撤退し、戦局はトロイア側へ傾き始めました。ディオメデスもパリスの矢に傷つき退却し、戦場にはオデュッセウスが一人取り残されることになります。

暁の号令!エリスが戦いを呼び起こす

暁の女神エオスが天に昇ると、ゼウスは争いの女神エリスをギリシャ軍の陣営へ送りました。

女神は船陣の中央、オデュッセウスの船の傍らに立つと、「休まず戦い、敵と刃を交えよ!」と大声で叫びます。その声は兵士たちの胸に火をつけ、もはや戦いを避け、故国へ帰ろうとする者は一人もいなくなりました。

総大将アガメムノンは武具を身につけると、ただちに出撃を命じます。女神アテナとヘラは王の勇気を称えるかのように雷を鳴らし、戦場を震わせました。

一方、トロイア軍もヘクトルを中心に、パリス、ポリュダマス、アイネイアス、アゲノル、アカマスらが戦列を整えます。こうして両軍は激突し、激しい殺し合いが始まりました。

この光景に喜びを感じたのは争いの女神エリスでした。他の神々はオリュンポスの館に座し、この壮絶な戦いを静かに見守っていました。

総大将アガメムノン、戦場を席巻

この日、アガメムノンは凄まじい奮戦を見せました。

まずトロイア王プリアモスの子イソスとアンティポスを討ち取ります。二人はかつてアキレウスに捕らえられながらも解放された若者でしたが、この戦場で命を落としました。

さらにアガメムノンはペイサンドロスとヒッポロコスを倒します。

この二人は、かつてオデュッセウスとメネラオスが使者としてトロイアに来たとき、「この二人を殺してしまえ、帰してはならぬ」と主張したアンティマコスの息子たちでした。そのためアガメムノンは特に激しい怒りをもって彼らに襲いかかりました。

アガメムノンは決して口先だけの総大将ではありません。自ら先頭に立って戦い、トロイア軍を城壁の近くまで押し戻していきました。

ゼウスの密命、ヘクトルは退け

そのころイデ山の頂に座っていたゼウスは戦場を見下ろしていました。そして虹の女神イリスを呼び、ヘクトルへの伝言を託します。

「アガメムノンが暴れまわっている間は、兵士たちに戦わせ、自らは退いておけ。そしてアガメムノンが傷つき戦車に乗って船陣へ戻ったとき、そのときこそ、ヘクトルよ、お前に力を授けよう。敵の船陣まで攻め入り、夜が訪れるまで敵を討つがよい」

イリスはただちに戦場へ降り、ヘクトルにこの神意を伝えました。

アガメムノン負傷、戦局が変わる

その後もアガメムノンは戦い続けました。彼はアンテノルの子イピダマスを討ち取り、さらにその兄コオンをも倒しました。しかしそのときコオンの槍がアガメムノンの腕を貫きます。

それでも王はすぐには退きませんでした。血を流しながらも戦い続けます。

しかしやがて血が固まり始めたころ、激しい痛みが襲いました。ついにアガメムノンは戦車に飛び乗り、船陣へ戻ることになりました。

ゼウスの予言どおり、戦局はここから大きく動き始めます。

ヘクトルの反撃

アガメムノンが退いたのを見ると、ヘクトルは声を張り上げました。

「諸君、今こそ武勇を示す時だ。ゼウスはこよなき名誉を私に授けたのだ!」

その言葉に奮い立ったトロイア軍は猛烈な勢いで攻めかかります。ヘクトルの後ろには、倒れたギリシャ兵の死骸が山のように積み重なっていきました。

この光景を見たオデュッセウスはディオメデスに声をかけました。

「ディオメデスよ、私の傍らに立ってくれ。ヘクトルに船陣を占領されるようなことになれば、我らの大きな恥辱だ」

ディオメデスは答えました。

「いかにも、わしはここでヘクトルを阻止する。しかし長くは持たぬだろう。ゼウスは明らかにトロイアに力を貸している」

ディオメデス負傷

ディオメデスはヘクトルへ接近し槍を投げました。その槍はアポロンから授かったヘクトルの兜に当たり、彼は一瞬膝をついて気を失いました。しかしヘクトルはすぐに立ち上がり、軍勢の中へ逃れました。

「またしてもアポロンに助けられたな。今度会えば必ず仕留めてみせる」

そう叫んだディオメデスに、弓を引き絞る男がいました。パリスです。放たれた矢はディオメデスの右足の甲を貫きました。

パリスは叫びます。
「矢は無駄にならなかった。だが貴様の腹に当たればよかったものを」

ディオメデスも負けずに怒鳴り返しました。
「弓しか使えぬ女たらしめ、一騎打ちになれば弓など役に立たぬ。この程度の傷など気にもならぬ。わしの槍は相手の命をすぐ奪うのだ」

オデュッセウスは傷ついたディオメデスを守るように前へ立ちました。その間にディオメデスは足から矢を抜き、戦車に乗って自陣へ戻ります。しかし傷は思った以上に深く、彼は戦場を離れざるを得ませんでした。

こうして戦場には、一人残されたオデュッセウスが立つことになります。