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パトロクロスの死を嘆くアキレウスハミルトン〈パトロクロスの死を嘆くアキレウス〉

あらすじ

夜になるとトロイア軍は戦いを止め、今後の方針を決める会議を開きました。プリュダマスは城へ戻るべきだと進言しますが、ヘクトルはゼウスの加護を信じ、翌朝も船陣を攻撃すると宣言します。

一方ギリシャ軍では、アキレウスが親友パトロクロスの死を深く嘆いていました。彼はヘクトルを討つまで葬儀を行わないと誓い、恐ろしい復讐の決意を固めます。

その知らせを聞いた母テティスは、息子のために新しい武具を求めてオリュンポスへ向かいました。

鍛冶の神ヘパイストスはその願いを受け入れ、宇宙や人間の世界を描いた壮麗な盾をはじめ、アキレウスのための武具を作り上げます。

ヘクトルとプリュダマスの対立

日が暮れると、トロイア軍は一時引き上げました。兵たちは夕食の準備をし、集会を開きます。議題は、アキレウスが出陣してきた今、今後どのように戦うべきかということでした。

まずプリュダマスが語ります。
「今は城へ帰るべきだ。アキレウスがいない時なら船陣を落とせると思っていた。しかし出陣した以上、それは難しい。城門が我らを守ってくれる」

するとヘクトルは彼を睨みつけて言い返しました。
「プリュダマスよ、その言葉は気に入らぬ。ゼウスが今、トロイアに勝利を与えようとしていることは明らかだ。明朝、船陣を攻撃する。アキレウスが立ち上がろうと、痛い目を見るだけだ」

トロイア軍は歓呼の声を上げ、ヘクトルに賛同しました。プリュダマスの意見に耳を貸す者は一人もいません。女神アテナが彼らの思慮を奪い、正しい判断ができないようにしていたのです。

アキレウスの嘆きと復讐の誓い

その頃、ギリシャ軍の陣営ではパトロクロスの死を悼んでいました。とりわけアキレウスの悲嘆は深く、彼は亡骸の胸に両手を置き、いつまでも呻き続けています。

「パトロクロスの父メノイティオスに、彼を無事連れて帰ると誓った言葉は虚しいものになってしまった。その上、私自身もこのトロイアの地で果てる運命だ。

だがパトロクロスよ、そなたを殺したヘクトルの首と私の武具をここに持ち帰るまでは、そなたの葬儀は行わぬ。また、亡骸を焼く火の前で、トロイアの若者十二人の喉を切り裂いてやる」

こうしてアキレウスは恐ろしい復讐の誓いを立てました。

その後、パトロクロスの体を温かい湯で清めさせ、香油を塗り、麻布で包ませ、その上から白布をかけて横たえます。

それを見ながらゼウスはヘラに言いました。
「こうして見ると、ヘラよ、お前の望み通りアキレウスが立ち上がったというわけだ」

ヘラは答えます。
「女神の中で最も高い位にある私が、そうして何がいけないというのですか」

テティス、ヘパイストスを訪ねる

その頃、海の女神テティスはオリュンポスへ向かっていました。

「テティスがあなたにご用があるそうです」
そう告げたのは、鍛冶の神ヘパイストスの妻カリスでした。

ヘパイストスは言います。
「わしにとって大切な女神なのだ。昔、醜さゆえに母ヘラに天から落とされた時、テティスとオケアノスの娘エウリュノメが海の洞窟にかくまってくれた」

やがてテティスが現れると、ヘパイストスは丁重に迎えました。
「どういうご用件でしょう。わしにできることなら、どんなことでもお役に立ちたい」

テティスは言います。
「私は不本意ながら人間ペレウスの子を産みました。その子は今トロイアで戦っています。しかし彼はそこで死ぬ運命なのです」

そしてパトロクロスの死とアキレウスの悲しみを語りました。

「息子のために、新しい武具を一揃い作ってください。明朝までに」

ヘパイストスはうなずきます。
「安心なされ。誰が見ても見事な武具を作ってみせましょう」

ヘパイストスが造ったアキレウスの盾

アキレウスの楯

ヘパイストスはまず五重の盾を作り始めました。

第一層
大地、天空、海、太陽、月、星座、プレアデス星団、ヒアデス星団が描かれ、宇宙の縮図となっています。

第二層
二つの町が描かれています。一つは婚礼と祝宴に満ちた平和な町。もう一つは戦争の町で、軍神アレスと女神アテナが軍勢を率いています。

第三層
農夫が牛で畑を耕し、人々が麦を刈り、ぶどう園では男女が歌いながら働いています。

第四層
牧場へ向かう牛の群れを牧夫と犬が追っています。しかし二頭の獅子が牛を襲い、自然の厳しさが描かれています。

第五層
若い男女が踊る舞踏場が描かれています。ダイダロスがアリアドネのために作った踊り場を思わせる光景です。

そして最も外側には、世界を囲む大河オケアノスが描かれました。

この盾は黄金、銀、錫で作られた神の工芸品でした。この重い盾を扱えるのはアキレウスだけです。

ヘパイストスは続いて胸当て、兜、脛当てなどすべての武具を完成させました。

テティスは燦然と輝く武具を受け取ると、息子のもとへ届けるためオリュンポスを下っていきました。

 

アキレウスの楯・図面〈アキレウスの盾と図面〉