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テティス、新しい武具をアキレウスに届ける〈テティス、新しい武具をアキレウスに届ける〉

あらすじ

母テティスは、鍛冶の神ヘパイストスが作った新しい武具をアキレウスのもとへ届けました。神の武具を見たアキレウスは戦う決意を固めます。

一方テティスは、パトロクロスの遺体が腐らないよう神の霊薬アンブロシアとネクタルを注ぎ守りました。

やがてアキレウスはギリシャ軍を集め、アガメムノンへの怒りを収めると宣言します。アガメムノンは自らの過ちを迷妄の女神アテのせいだと弁明し、贈り物で償うと約束しました。

しかしアキレウスは一刻も早く戦場へ向かうことを望みます。オデュッセウスは兵に食事を取らせるよう諭し、出陣前の準備が進められていきます。

テティス、神の武具をアキレウスに授ける

アキレウスの母テティスは、ヘパイストスが作った新しい武具を携えて戻ってきました。そして、パトロクロスの遺体にすがりついて嘆く息子に語りかけます。

「息子よ、パトロクロスは神々の定めによって討たれたのです。今はそのまま静かに休ませておきなさい。そして、このヘパイストスの武具を受け取りなさい」

アキレウスが武具を見ると、その両眼は炎のように輝きました。ミュルミドネスの兵たちは、神が作った武具の威厳と美しさに圧倒され、思わず後ずさりします。

アキレウスは言いました。
「母上、確かにこれは神の作った武具です。人間に作れるものではありません。出陣の支度を整えますが、パトロクロスの遺体をそのままにしておくのが心配です」

テティスは答えます。
「心配はいりません。すべて私に任せなさい。今はアガメムノンへの怒りを断ち切り、戦いに心を向けるのです」

そう言うと女神は遺体の鼻からアンブロシアとネクタルを注ぎ込みました。こうしてパトロクロスの体は腐敗することなく保たれることになりました。

アキレウスの楯

アキレウス、怒りを収めて戦場へ

やがてアキレウスは船陣に立ち、雷のような声でギリシャ軍を呼び集めました。

すると傷を負ったディオメデスとオデュッセウスが姿を現し、続いて総大将アガメムノンも現れます。

アキレウスは言いました。
「アガメムノンよ、私は怒りを収めることにした。いつまでも怒っていてはならない」

アガメムノン、迷妄の女神アテを持ち出す

アガメムノンはアキレウスに向き直ると、集まった将兵にも語りかけました。

「わしの言うことをよく聞いてくれ。あの日、アキレウスの恩賞の女ブリセイスを奪ったとき、わしの心には迷妄の女神アテが入り込んでいたのだ。ゼウスでさえ、この女神に惑わされたことがある。

そのため、わしは狂気じみた迷いに陥り、過ちを犯した。今、その代償を支払う決意をしている。

アキレウスよ、そなたは立ち上がり、ギリシャ軍を鼓舞してくれ。以前オデュッセウスに伝えさせた贈り物と女たちを、ただちに持ってこさせよう」

アキレウス、戦いを急ぐ

アキレウスは言いました。
「アガメムノンよ、贈り物はいつでもよい。今は戦いのことだけを考えてくれ。のんびり議論している時ではない」

オデュッセウスの助言

しかしオデュッセウスが口を開きました。

「アキレウスよ、おぬしは勇猛な戦士だが、まず兵に食事と酒を取らせてくれ。何も食べずに一日中戦える男などいない。アガメムノンよ、贈り物は集会場に運ばせればよい。そうすれば皆も納得するだろう。また、王であっても今後はより公正な態度を取るべきだ」

アガメムノンはうなずきました。
「オデュッセウスよ、その言葉はもっともだ。アキレウスよ、戦いを急ぐ気持ちは分かるが、しばらく待ってくれ。贈り物を運ばせ、われらが誓いを交わすのを見届けてほしい。

オデュッセウスよ、若者たちを選び、わしの船から贈り物を運ばせよ。また女たちも連れて来させよ。そしてゼウスと太陽神に誓うため、猪一頭を用意せよ」

しかしアキレウスは首を振りました。

「ヘクトルに殺された者が大勢地に横たわっているのだ。冗談ではない。私なら今すぐ食事も取らず戦場に出て、報復を済ませる。その後で豪勢な食事を用意すればよい。それまでは、親友の死を思うと食べ物など喉を通らぬ」

オデュッセウス、戦う者の心得を説く

オデュッセウスは静かに言いました。

「アキレウスよ、武勇においておぬしは誰よりも優れている。しかし思慮においては、わしの言葉を聞いてほしい。戦場では毎日多くの兵が死ぬ。だが人はその日一日泣き、食べ、飲み、力を取り戻してこそ、次の日の戦いに向かえるのだ」

そう言うと、オデュッセウスは勇将の息子たちを選び、アガメムノンの陣屋へ贈り物を取りに行かせました。