〈古代オリンピックの想像図〉
パトロクロスの火葬が終わると、アキレウスは亡き友を讃えるために壮大な競技会を開きました。これは後にオリンピックの起源とも言われる葬送競技です。
戦車競争では神々の助けを受けたディオメデスが勝利し、拳闘ではエイペイオスが豪腕を振るいました。
大アイアスとオデュッセウスの角技は互角で引き分けとなり、徒競走ではアテナの助けを得たオデュッセウスが勝利します。
さらに槍試合、鉄の塊投げ、弓競技など多くの競技が続き、神々も密かに勝敗に関わりました。
最後の槍投げではアガメムノンが賞品を受け取り、それをメリオネスに与えます。
こうしてアキレウスとアガメムノンの確執は解け、ギリシャ軍の和解が成就しました。
目次
パトロクロスの葬送競技、英雄を讃える戦い
薪はすべて燃え尽き、パトロクロスの骨は丁寧に集められ、黄金の壺に納められました。その後、アキレウスは帰ろうとしていたギリシャ勢を引き止め、亡き友を讃えるための競技会を開きます。
賞品として、自らの船陣から多くの財宝や美しい女たちを運ばせました。こうして、後にオリンピックの起源とも語られる葬送競技が始まったのです。
第一の競技 戦車競争
「馬と戦車に自信のある者は、誰でも競技に参加してもらいたい」
エウメロス、ディオメデス、メネラオス、アンティロコス、メリオネスの五人が名乗りを上げました。
エウメロスの馬は神アポロンが育てた名馬でした。そのためアポロンは、エウメロスを追うディオメデスの鞭をはたき落とします。しかしこの出来事に気づいたアテナが鞭を拾ってディオメデスに返し、馬にも力を与えました。
やがてアテナはエウメロスの戦車の轅を折り、彼を転倒させます。その結果、ディオメデスが見事な勝利を収めました。
第二の競技 拳闘
「力に優れた二人に、しっかり身構えて拳で打ち合ってもらいたい」
エイペイオスとエウリュアロスが名乗りを上げました。戦いが始まると、エイペイオスの強烈な一撃がエウリュアロスの頬を打ち抜きます。エウリュアロスはその場に崩れ落ち、もはや立つことができませんでした。こうしてエイペイオスが勝利しました。
第三の競技 角技(レスリング)
大アイアスとオデュッセウスが組み合います。二人の戦いは壮絶で、互いに投げ合い、体を絡め合いました。ついには両者とも足を絡ませて倒れてしまいます。
そこでアキレウスが言いました。
「二人とも、もう十分だ。これ以上戦えば疲れ果ててしまう。賞品は両者に同じものを与えよう」
こうして勝敗は引き分けとなりました。
第四の競技 徒競走
俊足で知られる小アイアスが先頭を走り、その後ろをオデュッセウス、さらに若いアンティロコスが追います。競技の終盤、オデュッセウスは女神アテナに祈りました。
「女神よ、どうか私の足に力を与えてください」
するとアテナは小アイアスの足元を乱し、彼は牛の糞の上で足を滑らせて転倒してしまいます。その結果、オデュッセウスが勝利しました。
小アイアスは不満そうに言いました。
「確かに、ある女神がわしの足を取ったのだ。いつもオデュッセウスに母親のようについている女神だ」
最下位のアンティロコスも笑いながら言いました。
「皆さんご存知のように、神々はどうやら年長者を大切にするようですな。小アイアスは私より少し上ですが、オデュッセウスとなると、我らの一世代前の青いお年寄りです」

英雄たちの技と誇り、さらに続く競技
第五の競技 武装槍試合
アキレウスは、パトロクロスに討たれたトロイアの勇将サルペドンの武具を賞品として、完全武装の槍試合を宣言しました。
大アイアスとディオメデスが対峙します。二人は三度突撃し、激しく槍を交えました。その後、ディオメデスが大アイアスの首を狙ったのを見て、ギリシャ勢は彼の身を案じ、試合を止めさせます。
アキレウスはディオメデスが優勢であったとして、彼に賞品を与えました。
第六の競技 鉄の塊投げ
重い鉄の塊をどこまで投げられるかを競う競技です。ポリュポイテス、レオンテウス、大アイアス、エイペイオスの四人が参加しました。
エイペイオスは笑われるほど短い距離しか投げられません。レオンテウスと大アイアスはそれより遠くへ投げました。しかし最後にポリュポイテスがさらに遠くへ投げ、見事勝利しました。
第七の競技 弓競技
船の帆柱に紐で足を結ばれた鳩が的です。弓の名手テウクロスが最初に名乗りを上げ、次にメリオネスが挑みました。
くじ引きの結果、まずテウクロスが矢を放ちます。矢は鳩には当たりませんでしたが、鳩を縛っていた紐を射抜きました。鳩は空高く舞い上がります。
テウクロスが的を外したのは、弓の神アポロンに羊の供え物を誓わなかったからでした。
メリオネスはテウクロスから弓を受け取ると、まずアポロンに初子の羊を捧げることを誓います。そして矢を放つと、空高く飛んでいた鳩に見事命中しました。もちろん、これはアポロンの加護によるものでした。
第八の競技 槍投げと和解
最後の競技は槍投げです。賞品は槍と釜でした。総大将アガメムノンとメリオネスが立ち上がりましたが、アキレウスは宣言します。
「アトレウスの子アガメムノンよ。あなたが万人に優れ、力と投げ技に秀でていることは皆が知っている。どうか賞品を受け取ってください。メリオネスにも槍を与えよう」
アガメムノンも異議を唱えず、受け取った賞品の槍をメリオネスに与えました。こうしてアキレウスとアガメムノンの間の確執は完全に解け、和解が成就したのです。
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