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パイエケス人の島から船出するオデュッセウスロラン〈パイエケス人の島から船出するオデュッセウス〉出典

あらすじ

パイエケスの国を出発したオデュッセウスは、深い眠りについたまま船で故郷イタケへ運ばれます。漕ぎ手たちは彼と贈り物の宝物を海辺に残し、静かに去っていきました。

こうしてトロイア戦争から20年ぶりに祖国へ帰還します。しかし海神ポセイドンは、彼を送り届けたパイエケス人に怒り、その船を石に変えてしまいました。

一方、目を覚ましたオデュッセウスは霧に包まれた景色の中で、自分がイタケにいることに気づきません。

そこへ現れた若い羊飼いに話しかけますが、彼の正体は女神アテナでした。アテナは霧を晴らして故郷を見せ、妻ペネロペイアや息子テレマコスの状況を説明します。

そして求婚者たちに正体を知られぬよう、オデュッセウスをみすぼらしい老人の姿に変え、復讐の計画を始めさせるのでした。

ついに故郷イタケへ ― オデュッセウス帰還

オデュッセウスは、パイエケスの王アルキノオスと妃アレテに別れを告げると船に乗り込み、そのまま深い眠りにつきました。

夕暮れに出発した船は、夜の海を静かに進み、明けの明星が輝くころにはイタケの島へと到着します。

そこは二つの岬に守られたポルキュスの入り江でした。
入り江の奥には一本の大きなオリーブの木が立ち、その近くにはニンフたちの聖域となる洞窟があります。

その洞窟には二つの入口がありました。
北側は人間が出入りする入口、南側は神々だけが通る神聖な入口です。

パイエケスの若い漕ぎ手たちは、眠り続けるオデュッセウスと、彼に贈られた数々の宝物をオリーブの木の根元に降ろすと、静かに船へ戻り国へ帰っていきました。

こうしてオデュッセウスは、トロイア戦争に出征してから二十年の歳月を経て、ついに故郷イタケの地へ帰り着いたのです。

ポセイドンの怒り ― 石と化した船

そのころ天界では、海神ポセイドンがゼウスに不満を訴えていました。

「私の血を引くパイエケス人が、私を敬うことなくオデュッセウスを故郷へ送り届けた。
あなたがこれほど早く帰国を許すとは思わなかった。私はもっと長く苦しむものと考えていたのだ。

こうなれば、パイエケスの国の周囲を高い山で囲い、二度と他国と交わらぬようにしてやろう」

ゼウスは答えました。

「彼らが帰国した折、その船を石に変えて見せしめにすればよい。
しかし国を山で囲うほどのことはあるまい」

ポセイドンはこの提案に従い、パイエケスへ戻る船を、人々が見ている前で石に変えてしまいました。
しかし、国を高山で囲うことはしませんでした。

王アルキノオスは深く嘆き、こう語りました。

「父から昔聞かされたポセイドンの予言が、ついに現実となってしまった。
さらに予言では、高い山で国を囲むとも言われていた。

それを避けるため、これからはどのような人間が訪れても、我が国の船で送り届けることはやめよう。
さあ、牡牛十二頭を屠り、ポセイドンに捧げよう」

霧に包まれた故郷 ― 女神アテナの配慮

そんな出来事が起きているとは知らず、オデュッセウスは眠りから目を覚ましました。
しかしそこが待ち焦がれたイタケだとはすぐには分かりません。

女神アテナが、万一にも妻ペネロペイアの求婚者たちに見つからぬよう、あたり一帯に霧を立ちこめさせていたからです。

オデュッセウスはつぶやきました。

「ああ、なんと情けない。
ここはどのような人々が住む国なのだろう。乱暴で野蛮な者たちの国か、それとも客人を親切にもてなす国なのか。

いっそパイエケスの国に留まっていたほうがよかったのではあるまいか。
それにしても、贈られた財宝はすべて残っているだろうか。眠っている間に持ち去られてしまったかもしれぬ」

若き羊飼いの正体

そこへ、身なりのよい若い羊飼いがやってきました。
オデュッセウスは彼に声をかけます。

「友よ、この国で最初に出会った人よ。どうか私に危害を加えず守っていただきたい。
ところで、この国はどのような人々が住む国なのだろうか」

若者は答えました。

「異国の方よ、この国は穀物もぶどうもよく実り、家畜を飼うにも恵まれた土地です。
その名は、ギリシャからトロイアまで広く知られている――イタケの国です」

オデュッセウスは心の中で歓喜しました。
しかし慎重に、嘘の身の上を語り始めます。

「イタケの名はよく知っている。
わしはクレタ島のイドメネウスの息子だ。

トロイアで得た戦利品をオルシロコスが奪おうとしたので、やむなく彼を殺してしまった。
そこでフェニキア船に乗り、エリスの地へ亡命するはずだった。

ところが嵐に遭い、船は進路を外れてしまった。
こうして漂着したのが、この土地というわけだ」

策略家同士 ― オデュッセウスとアテナ

若者は微笑むと、たちまち姿を変え、女神アテナとなりました。

「策略において、そなたを凌ぐ者がいるとすれば、それはよほど狡猾な男だろう。
いや、神々でさえそなたには敵わぬかもしれぬ。

それにしても大胆な男だな、オデュッセウスよ。
自分の国に帰ってきたというのに、まだ作り話をやめようとしないとは。

そなたは知略と弁舌において人間界に並ぶ者はいない。
わたしもまた、知恵と策において神々の中で名高い。
われらは似た者同士なのだ」

オデュッセウスは答えました。

「女神よ、どれほど賢い者でも、人間が神を見分けるのは容易なことではありません」

アテナが霧を払いのけると、イタケの風景が目の前に広がりました。
オデュッセウスは喜びのあまり、大地に口づけしました。

「これからどうするのが最善か、二人でよく考えるとしよう」

アテナは、妻ペネロペイアと息子テレマコスの近況、そしてこれから起こる出来事を語りました。
そしてオデュッセウスが誰であるか気づかれぬよう、彼をぼろをまとったみすぼらしい老人の姿へ変えます。

まず向かうべきは、忠実な豚飼いエウマイオスのもとでした。
そしてアテナ自身は、父の消息を求めてスパルタへ旅している息子テレマコスに会うため出発したのでした。

オデュッセウスの遍歴
〈オデュッセウスの遍歴〉出典

オデュッセウスの漂流経路 トロイアからイタケまで
「Port Scene with the Departure of Ulysses from the Land of the Feaci」