※本ページにはプロモーションが含まれています。

ザールブリュッケンにあるテレマコス像〈ザールブリュッケンにあるテレマコス像〉

あらすじ

スパルタのメネラオスの宮殿に滞在していたテレマコスのもとに、女神アテナが現れ、すぐに故郷イタケへ帰るよう助言します。

求婚者たちが財産を食い荒らし、さらにテレマコスの帰路を待ち伏せして殺そうとしているからです。

テレマコスはメネラオスとヘレネに別れを告げ、贈り物を受け取って出発します。旅の途中には、亡命中の預言者テオクリュメノスを船に乗せることにもなりました。

一方その頃、イタケではオデュッセウスが豚飼いエウマイオスの牧場で身を隠していました。

やがてテレマコスは求婚者たちの罠を避けてイタケへ帰還します。すると神のしるしとして鷹が現れ、テオクリュメノスはテレマコスの王家の運命を予言します。

こうしてテレマコスは一人、エウマイオスの牧場へ向かうのでした。

女神アテナ、テレマコスに帰国を命じる

テレマコスは、ネストルの息子ペイシストラトスとともに、スパルタのメネラオスの屋敷に滞在していました。
しかし、その夜、彼はなかなか寝つくことができませんでした。

そこへ女神アテナが現れ、そっとささやきます。

「テレマコスよ、いつまでも家を離れていてはいけない。
あの無法な求婚者たちが、そなたの財産を食いつぶしてしまう。

すぐにメネラオスに帰国の許しを願いなさい。
祖父や親族は、ペネロペイアに『エウリュマコスに嫁げ』と迫っている。

贈り物も結納金も、ほかの求婚者を圧倒しているからだ。
ペネロペイアがいかに貞淑でも、いつオデュッセウスを諦めるか分からぬ。
女とはそういうものだ。

それに求婚者たちは、そなたの帰りを待ち伏せして殺そうとしている。
イタケとサモスの間で待ち構えているのだ。

イタケに近づいたら、船員たちは町へ向かわせよ。
そなたは一人、豚飼いエウマイオスのもとへ行くのだ。

一夜をそこで過ごし、彼をペネロペイアのもとへ使いに出して、帰国を知らせるとよい」

そう告げると、女神アテナはオリュンポスへ帰っていきました。

テレマコスはペイシストラトスを揺り起こします。

「おい、目を覚ましてくれ。
すぐ出発できるよう、馬を車につないでくれ」

しかしペイシストラトスは答えました。

「テレマコスよ、いかに急ぐとはいえ、暗闇の中で馬車を走らせるわけにはいかぬ。
それにメネラオス王に挨拶もせねば失礼だ。
きっと土産も用意してくださるだろう。親切は受けるべきだ」

メネラオスとヘレネの贈り物

やがてメネラオスは、ヘレネの傍らから起きてきました。
テレマコスはすぐに帰国したい旨を伝えます。

それを聞いたメネラオスは言いました。

「帰国を望む者を引き留めるつもりはない。
だが、少し待ちなさい。土産を用意し、何より食事を整えさせよう」

食卓にはメネラオスとヘレネ、そして妾の子メガペンテスが座りました。

メネラオスはテレマコスに盃を渡しながら言います。

「これはヘパイストスが作った混酒器だ。銀製で、縁には黄金の細工が施されている」

メガペンテスがその混酒器をテレマコスの前に置きました。

続いてヘレネが贈り物を差し出します。

「かわいいテレマコスよ。私を思い出すよすがとして、これを贈りましょう。
そなたが結婚するとき、花嫁にこの衣装を着せてあげなさい」

ペイシストラトスは、それらの豪華な品々を車に積みに下がりました。

メネラオスは言います。

「では若者たちよ、さらばだ。
老雄ネストルによろしく伝えてくれ。トロイアでは、彼は私たちに父のように優しくしてくれた」

テレマコスは答えました。

「メネラオス王よ、必ずネストル殿にお伝えします。
また、いつか父オデュッセウスに再会したなら、あなたの歓待と貴重な贈り物をいただいたことを伝えます」

そのとき、右手に一羽のガチョウをつかんだ鷲が空を横切りました。
吉兆でした。

メネラオスは言いました。

「オデュッセウスはきっと帰国し、報復を遂げるであろう。
もしかすると、すでに帰っており、求婚者たちに災厄の種を蒔いているかもしれぬ」

テレマコス、急ぎスパルタを去る

テレマコスは言いました。

「ペイシストラトスよ、急いでいる。
すまぬがネストル殿には会わず、このまま帰国したい」

ペイシストラトスは答えます。

「急いで船へ向かい、船員を乗せるがよい。
もし父ネストルに会えば、きっとそなたを簡単には帰さぬだろう」

こうしてペイシストラトスは家へ戻り、
テレマコスは船に乗り込み、出航の準備を始めました。

亡命者テオクリュメノスの乗船

そのとき、一人の男が近づいてきました。
スパルタの隣国ピュロスの名家メランプスの子孫で、預言者テオクリュメノスでした。

彼は自己紹介をすると、こう語りました。

同族の一人を殺してしまい、追われる身となった。
亡命するため、船に乗せてほしい――と。

テレマコスは答えます。

「乗船を断ることはいたしません。
イタケに帰ったなら、できる限りのもてなしをいたしましょう」

しかし心の中では、求婚者たちの罠から逃れられるかどうか不安に思っていました。

一方そのころ、豚飼いの牧場では

その頃、オデュッセウスは豚飼いエウマイオスの牧場にいました。
彼は父ラエルテスや妻ペネロペイアの近況を聞き出していました。

母アンティクレイアがすでに亡くなっていることは知っていましたが、
改めてその話を聞くと、胸を痛めます。

そして、町へ行って物乞いをするべきかどうかを相談しました。

エウマイオスは彼を引き止め、自分の生い立ちを語ります。

かつてはシュリエ島の王子だったこと、
さらわれてイタケへ連れてこられたこと、
そしてラエルテスに買われてここで働くようになったこと――。

テレマコス、ついにイタケへ帰還

鷹

やがてテレマコスたちは求婚者の目をかいくぐり、イタケのとある海岸へ船をつけました。

テレマコスは仲間たちに言います。

「皆はこのまま船を町へ向けてくれ。
私は一人、牧場を見回りに行く。
夕刻には町に戻り、明日の朝には旅の礼として、うまい肉と酒をふるまおう」

そのとき、右手に鳩をつかんだアポロンの鷹が飛びました。
鳩のちぎれた翼が、船とテレマコスの間に落ちます。

預言者テオクリュメノスは、テレマコスを人々から離れた場所へ連れて行き、ささやきました。

「テレマコスよ、この鳥が右手に飛んだのは神意によるもの。
良い知らせに違いありません。

このイタケにおいて、あなたの一族より王位にふさわしい家系はありません」

こうして船は町へ向かい、
テレマコスは一人、豚飼いエウマイオスの牧場へと向かったのでした。