〈オデュッセウスとテレマコスの再開。後ろにアテナ〉
テレマコスは無事イタケへ戻り、忠臣エウマイオスの牧場を訪れます。エウマイオスは若主人の帰還を涙ながらに喜びました。
その後、女神アテナの力によってオデュッセウスは元の姿に戻り、ついに父と子は再会します。二人は求婚者たちを討つ計画を立て、館にある武器を密かに隠すなど慎重な策略を練りました。
一方その頃、求婚者たちはテレマコス暗殺を企てて密談をしていました。
ペネロペイアはその陰謀を知り、怒りを込めて彼らを非難しますが、求婚者たちは表向きは否定します。
さらに新たな刺客が到着したとの知らせも入り、状況はますます緊迫していきます。
こうしてオデュッセウスとテレマコスの復讐計画は、静かに動き始めたのでした。
テレマコス、忠臣エウマイオスの牧場へ帰る
テレマコスが牧場に近づいても、番犬たちは吠えませんでした。
犬たちは彼のことをよく知っていたからです。
豚飼いエウマイオスも、テレマコスの姿を見るや、大粒の涙をはらはらと流しました。
彼は若者をしっかり抱きしめ、喜びの声を上げます。
「ピュロスやスパルタへ船出なさった時には、もう二度とお目にかかれぬのではないかと思っておりました」
「心配をかけてすまなかった。ところで爺や、母上は再婚を決意されたのか」
「いいえ、奥方様は苦しみに耐えながら、なんとか求婚者たちの問いをはぐらかしておられます」
テレマコスは家の中に入ると、今後のことを話しました。
「爺や、私がスパルタから無事に帰ったことを母上に知らせに行ってほしい。
だが、決して他の者に知られてはならぬ」
エウマイオスはうなずきます。
「承知いたしました。では、ラエルテス様にも知らせましょうか。
若様が旅立ってからというもの、老殿は落胆し、ため息ばかりついて衰える一方です」
「それは気の毒なことをしてしまった。
だが今は大事な時だ。誰にも悟られてはならぬ。
母上から誰かを使いに出して、祖父に知らせてもらおう」
こうしてエウマイオスは、ペネロペイアに知らせるため町へ向かいました。
父と子、ついに再会
そのころ女神アテナは、オデュッセウスにだけ見える姿で現れました。
彼を小屋の外へ連れ出し、黄金の杖で触れると、彼の姿はたちまち元の立派な体へ戻りました。
「オデュッセウスよ、すべてをテレマコスに明かし、求婚者どもを討つ策を練るのだ」
オデュッセウスが小屋に入ると、テレマコスは驚いて立ち上がりました。
「あなたは、さきほどのぼろを着た老人ではありませんか。
まさか天に住まう神だったのですか。どうか私たちに力を貸してください」
オデュッセウスは静かに言いました。
「テレマコスよ、わしは神ではない。そなたの父、オデュッセウスだ」
そう言って息子に接吻しました。
テレマコスは驚き、思わず後ずさります。
「そんなはずはありません。
人間がこのようにたちまち姿を変えることなどできるはずがない」
父は微笑みました。
「これは女神アテナの力によるものだ」
テレマコスは父に抱きつき、涙を流しました。
オデュッセウスは自分の帰還の経緯を語り、これからのことを話し合いました。
父子の復讐計画
やがてオデュッセウスは言いました。
「さあ、求婚者どもの数を教えてくれ。
策を練らねばならぬ」
テレマコスが館の様子を説明すると、父は計画を語りました。
「館に入ったあと、わしが求婚者どもに殴られようと足蹴にされようと、決して怒るな。
合図を出すまで耐えるのだ。
合図をしたら、広間にある武器という武器をすべて蔵に運び込め。
ただし、わしらのために太刀二本、槍二本、盾二つだけは残しておけ。
もう一つ大事なことがある。
女中や召使いの中で、誰が味方で誰が求婚者に媚びているか、見極めねばならぬ」
求婚者たちの密談
その頃、町では豚飼いエウマイオスと船の若者が偶然出会い、
ペネロペイアに報告しました。
「奥方様、ご子息はただいまご帰国なされました」
この知らせは、女中を通じて求婚者たちの耳にも届きました。
彼らは広場から中庭へ移り、密談を始めます。
エウリュマコスが口火を切りました。
「テレマコスめ、思いのほか大したことをやってのけた。
海に配置した刺客は引き上げさせよう」
するとアンティノオスが言います。
「いや、こうなった以上、テレマコスはここで殺してしまうべきだ。
あの若者は頭も切れる。領民を集める前に始末しておかねばならぬ」
しかし、ペネロペイアに最も気に入られていたアンピノモスが反対しました。
「私はテレマコスを殺すことには賛成できぬ。
王家の血を絶やすなど恐ろしいことだ。
まず神の意思を伺うべきだ」
この意見に、多くの求婚者たちも同意しました。
ペネロペイアの怒り
テレマコス暗殺の企てを聞いたペネロペイアは、
意を決してアンティノオスに訴えました。
「アンティノオスよ、そなたは思慮深く弁舌に優れていると評判だ。
だが、私はそうは思わぬ。そなたは乱心者だ。
なぜ、わが子テレマコスを殺そうとするのですか。
そなたの父が海賊に加担し、テスプロトイ国に害をなそうとした時、
領民は怒り、そなたの父を討とうとした。
それを止めたのが、わが夫オデュッセウスでした。
それなのに、わが家の財産を食いつぶし、私に求婚し、
息子まで殺そうとするとは――もうやめてください」
エウリュマコスが答えました。
「賢明なペネロペイア様、どうかご安心ください。
テレマコスに手をかける者など、今もこれからもおりません。
もしそんな者がいれば、我らの槍で血を流すことになりましょう。
もっとも、神が望む死だけは、誰にも避けられませんが……」
しかし、この男こそ、最もテレマコスを殺そうとしていた人物でした。
新たな危機の影
そのころ、豚飼いエウマイオスが牧場へ戻ってきました。
「ヘルメスの丘を通っていた時、快速の船が一艘、入江に入るのを見ました。
見ていると、槍や盾を持った者どもが降りてきたのです。
おそらく――テレマコス様を狙う刺客でしょう」
静かな牧場に、再び不穏な気配が忍び寄っていました。
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