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老女エウリュクレイア、オデュッセウスに気づくポインター〈エウリュクレイアとオデュッセウス〉出典

あらすじ

乞食姿のオデュッセウスは、求婚者を討つ計画のため、テレマコスに広間の武器を隠すよう命じます。その後、20年ぶりに妻ペネロペイアと向き合いますが、まだ正体は明かしません。

女中メラントの無礼をペネロペイアが叱りつける中、オデュッセウスは客人として夫の消息を語り、彼が近く帰るだろうと伝えます。

やがて老女エウリュクレイアが足を洗う際、猪の牙による傷跡から彼の正体に気づきますが、復讐の計画のため口止めされました。

さらにペネロペイアは、20羽のガチョウを鷲が殺す夢を語り、求婚者を選ぶため弓の競技を開く決意を明かします。オデュッセウスはその競技の前に必ず帰還すると断言しました。

性悪女中メラントの罵声

オデュッセウスは、テレマコスに広間の武器と盾を隠すよう命じました。

「求婚者たちには、武器を片付けるのは酔って互いに傷つけ合うのを防ぐためだと言っておこう。終わったら、そなたはもう寝るがよい。わしはペネロペイアと話してみる」

テレマコスが寝室へ下がると、ペネロペイアが二階の部屋から降りてきました。女中たちも付き従い、食事の後片付けを始めます。

すると、あの性悪女中メラントが、再びオデュッセウスに毒づきました。

「この乞食め、まだここにいるのか。とっとと出て行かぬと、痛い目にあうぞ!」

オデュッセウスは落ち着いて答えます。

「そなたは何に腹を立てて、わしを目の仇にするのだ。ボロを着た乞食だからか。こう見えても、昔は裕福な貴族であったのだ」

それを聞いていたペネロペイアが、メラントを厳しく叱りました。

「そなたは何という厚かましい女、恐れを知らぬメス犬よ。わたしは気づいているのだ。お前は、やがて自分の首でその罪を償うことになるだろう」

メラントはたちまち気勢をそがれ、後ろへ下がりました。

運命の再会 ― オデュッセウスとペネロペイア

ペネロペイアは、オデュッセウスに椅子をすすめました。
実に、これが二人にとって二十年ぶりの再会です。

しかしオデュッセウスは、まだ真実を明かしません。

「オデュッセウス殿がトロイアへ出征された折、風に流されキプロス島に来られたことがあり、その時わたしがもてなしたのです」

そう語りました。

ペネロペイアは静かに問いかけます。

「では、そなたを試させてください。その時の夫はどのような男で、どのような衣服を身につけていましたか。また、家来の様子はどうであったでしょう」

オデュッセウスがその問いに一つ一つ答えると、ペネロペイアは懐かしさに涙ぐみました。

「客人よ、そなたの申す通りでした。これまでは気の毒な人と思っておりましたが、これからはこの屋敷で、そなたを大切な方としてお迎えいたしましょう」

するとオデュッセウスは言いました。

「奥方様、悲しみをおやめください。わしの言うことをお聞き願いたい。オデュッセウス王は、近くのテスプロトイ国で元気にしておられます。そこの国王は、多くの財宝とともに王をこの国へ帰すため、船も船員もすでに用意していると語ってくれました。

今、王は樫の神木によってゼウスの神意を伺うため、ドドネに向かっています。公然と帰るべきか、密かに帰るべきか、それを知るためです。必ず年内には戻られるでしょう」

ペネロペイアは静かに答えました。

「客人よ、願わくば、そなたの言葉どおりになってくれますように。それでも私は……もう夫は帰ってこないと思っているのです」

オデュッセウスという名 ― 「憎まれっ子」の由来

涙を流しながら、ペネロペイアは女中たちに命じました。

「誰か、この方の足を洗って差し上げなさい。寝所も整えなさい。明朝には風呂に入れて、油も塗ってあげましょう。テレマコスの傍らで食事ができるようにもして差し上げて」

しかしオデュッセウスは言いました。

「そのようなことは不要です。粗末な寝所には慣れておりますゆえ。足も洗っていただかなくて結構です。どうしてもとおっしゃるなら、わしと同じような老女にお願いしたい」

ペネロペイアは、その役を老女エウリュクレイアに命じました。

この老女は、オデュッセウスが生まれたときのことをよく覚えています。
その時、祖父アウトリュコスが名づけをしました。

「アウトリュコス様、この子に名前をつけてくださいませ」

すると祖父は言いました。

「よかろう。わしは若いころ、多くの人間に憎まれてきた(オデュッサメノス)。それゆえ、この子には“憎まれっ子”を意味するオデュッセウスという名がよい」

傷跡が語る真実 ― 老女エウリュクレイアの発見

老女エウリュクレイアは金だらいに湯を満たし、客人の足を洗おうとしました。

オデュッセウスは、足の傷から正体がばれるのを避けるため、暗がりの方へ身を向けました。
祖父の国で狩りをしていたとき、猪の牙で足に深い傷を負ったことがあったからです。

しかし老女は足に触れた瞬間、その傷跡に気づきました。
驚いて手を離すと、足は金だらいに落ち、湯が飛び散ります。

「あなたは……ああ、間違いなくオデュッセウス様ですね」

老女の胸は喜びと悲しみでいっぱいになりました。

すぐペネロペイアに知らせようとする老女を、オデュッセウスは慌てて止めます。

「婆やよ、今はまだ黙っていてくれ。求婚者どもと悪しき女中を成敗するまでは。今は密かに計画を進めねばならぬ」

老女エウリュクレイアはうなずき、こぼれた湯を取り替えるためその場を離れました。

ペネロペイアの夢 ― ガチョウと鷲、そして二つの門

やがてペネロペイアは胸の内を語り始めました。

「客人よ、成人した息子テレマコスは、求婚者たちが財産を食いつぶしているのに耐えかね、わたしに実家へ帰ってくれと頼むのです。

それに、こんな夢を見ました。解いてくださらぬか。

20羽のガチョウが小麦をついばんでいるのです。わたしが楽しそうに眺めていると、突然オオワシが飛んできて、そのガチョウすべての首をへし折ってしまうのです。

わたしが泣いていると、鷲がこう言いました。

『ペネロペイアよ、安心せよ。これは夢ではない。ガチョウは求婚者たち、私はそなたの夫だ。彼らを成敗するために帰ってきたのだ』と」

オデュッセウスは静かに答えます。

「奥方様、その夢はまさしく現実になるでしょう」

しかしペネロペイアは首を振りました。

「夢には二つの門があるといいます。磨かれた角の門から来る夢は真実となり、象牙の門から来る夢は偽りとなると。

この夢は、わたしには象牙の門から来たものとしか思えません。それに、もう時間がないのです。明日、弓で12の斧を射抜く競技を催します。それに勝った求婚者に、わたしは嫁ぐつもりです」

するとオデュッセウスは言いました。

「奥方様、その競技はどうか実行なさい。
その競技の前に――オデュッセウス王は必ず帰ってこられます