
求婚者たちを討つ決戦の前夜、オデュッセウスは怒りを抑えながら耐え忍んでいました。女神アテナは彼を励まし、ゼウスも雷鳴で前兆を示します。
屋敷ではいつものように求婚者たちが宴を始めますが、テレマコスは主人として威厳ある言葉を放ち、客人である乞食に無礼を働かぬよう命じました。
しかし求婚者たちは嘲笑をやめません。さらに女神アテナは彼らの心を狂わせ、嘲りと高笑いを引き起こします。
牛飼いピロイティオスや豚飼いエウマイオスも集まり、運命の時は刻々と近づいていました。
やがて預言者テオクリュメノスが、求婚者たちに迫る破滅を告げます。しかし彼らはその警告を笑い飛ばし、迫る運命に気づくことはありませんでした。
殺戮の前夜 ― 忍耐を試されるオデュッセウス
「耐え忍べ、わが心よ」
求婚者たちのもとへ通う淫らな女中たちに苛立ちながらも、オデュッセウスはなんとか自らの心を抑え込みます。
眠れぬ彼のもとに、女神アテナが現れて励ましました。
「私とゼウスが、そなたを守っている」
するとオデュッセウスは祈ります。
「父神ゼウスよ、どうか何らかの前兆をお示しください」
朝方、快晴の空に突然、ゼウスの雷鳴が轟きました。
そのとき小麦の臼を挽いていた女中の一人が、ふとつぶやきます。
「雲一つ見えないのに、雷が鳴るなんて……きっと神さまが何かの前兆を示されたのでしょう。どうか、この辛い粉挽きの仕事から解放され、あの連中が宴を開くのも今日が最後になりますように」
こうしてまた、いつもの朝が始まりました。
求婚者たちは、いつものようにオデュッセウスの屋敷へ集まりだします。
豚飼いエウマイオスも、牛飼いピロイティオスもやってきました。
そして豚飼いは、乞食姿のオデュッセウスを牛飼いに紹介します。
テレマコスの覚悟 ― 若き主人の威厳
やがて、いつもの食事が始まりました。
テレマコスはオデュッセウスにも席を設け、はっきりと言い放ちます。
「いかなる者も、この客人に手をあげたり、ののしったりしてはならぬ。ここはオデュッセウスの屋敷である。求婚者たちよ、暴言や手荒な振る舞いは慎んでもらいたい」
この大胆な発言に、求婚者たちは驚きました。
アンティノオスが冷笑しながら言います。
「ゼウスのお許しさえあれば、我らはとうにその口を封じていただろうに」
しかし今のテレマコスは、この言葉にも動じません。
彼はすでに、以前の気弱な青年ではなくなっていたのです。
狂気の宴 ― 女神アテナの策略
女神アテナは、求婚者の一人クテシッポスをそそのかし、オデュッセウスに牛の足を投げつけさせました。
しかしオデュッセウスは、首をわずかに傾けただけで、それを難なくかわします。
さらに女神は、求婚者たちの心を狂わせました。
彼らは理由もなく高笑いし、目は狂気のように輝きます。
それはすべて、復讐の時を前にしたオデュッセウスの心を鼓舞するためでした。
迫る破滅 ― 預言者の警告
そのとき、テレマコスの客人であり預言者でもあるテオクリュメノスが、求婚者たちを見渡して言いました。
「ああ、憐れな者どもよ。そなたたちは、何と無残な憂き目にあうことか」
するとエウリュマコスが怒鳴ります。
「この狂った客人を、誰かこの屋敷からつまみ出せ!」
しかしテオクリュメノスは、落ち着いた声で答えました。
「エウリュマコスよ、案内人など要らぬ。わしには二本の足がある。それに――そなたらの災厄が迫っているのが、はっきりと見えるのだからな」
その言葉は、
まもなく訪れる血の嵐を告げる、最後の警告でした。
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