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12の斧の穴を通す弓の競技〈12の斧の穴を通す弓の競技〉

あらすじ

ペネロペイアは、長年屋敷に居座る求婚者たちに向かい、夫オデュッセウスの弓を使った競技を宣言します。

その内容は、逆さ弓に弦を張り、十二本の斧の穴を射通すという難しい試練でした。

まずテレマコスが挑みますが成功できず、続いて求婚者たちも次々と試みます。しかし誰一人として弓に弦を張ることさえできません。

競技の途中、オデュッセウスは豚飼いエウマイオスと牛飼いピロイティオスに正体を明かし、復讐の計画を整えます。

そして老いた乞食として競技への参加を願い出ました。求婚者たちは反対しますが、ついに弓が彼の手に渡ります。

オデュッセウスは難なく弓に弦を張り、矢を放つと、見事に十二の斧の穴を射通しました。

運命の競技 ― 求婚者たちの弓試し

ペネロペイアが高らかに宣言しました。

「長き年月、このオデュッセウスの屋敷で飲み食いに明け暮れている求婚者たちよ。もし私を娶りたいというのなら、さあ、この競技に挑みなさい。
この逆さ弓に弦を張り、十二の斧の穴を射通した者に、私は嫁ぐことにしましょう」

逆さ弓とは、弦を張る前には逆向きに反り返っている、非常に強力な弓のことです。
競技は、刃に穴のあいた十二本の斧を一直線に並べて地面に立て、その穴を矢で射通すというもの。
並外れた腕力と、正確無比の技が求められる試練でした。

まずはテレマコスが、父オデュッセウスの弓を受け継ぐ者として挑戦します。

しかし――弓に弦を張ることさえできません。

「なんということだ。こんなことでは、私は非力な意気地なしのままで終わってしまうではないか。さあ、各々方も試みられよ」

弓を前にした男たちの挫折

テレマコスのあと、食卓の席順に従い、求婚者たちが次々と弓に挑みました。

しかし、誰一人として弦を張ることすらできません。

火で弓を温め、油を塗って柔らかくしようとしても、やはり無理でした。

競技の途中、オデュッセウスは豚飼いエウマイオスと牛飼いピロイティオスを外へ呼び出します。
二人の忠誠心を確かめると、ついに自らの素性を明かしました。

二人は驚き、そして嬉し涙をはらはらと流します。

オデュッセウスは、これから弓の競技に出るつもりであることを告げました。
当然、求婚者たちの反対があることも見越し、それぞれに役目を与えます。

やがて三人は、何事もなかったかのように広間へ戻りました。

その頃、求婚者の筆頭エウリュマコスが弓に挑戦していました。
しかし彼もまた、弦を張ることすらできません。

苛立った彼は吐き捨てます。

「なんたることだ、情けない。ペネロペイアとの結婚がかなわぬのは無念だが、この国には女などいくらでもいる。

だが、弓に弦すら張れぬとなれば、オデュッセウスに力で劣ることが後の世に知られてしまう。これは恥辱ではないか!」

すると、もう一人の首領アンティノオスが言いました。

「エウリュマコスよ、そこまで気にすることはあるまい。今日はここまでにしておこう。
明朝、山羊飼いメランティオスに山羊を届けさせ、弓の神アポロンに腿肉を献じよう。そのうえで再び弓を試み、この競技を終えればよい」

老乞食、弓に挑む

そのとき、オデュッセウスが静かに口を開きました。

「エウリュマコス殿、アンティノオス殿。この老いぼれにも、どうか試させていただきたい。若い頃の力がまだ残っているか、確かめてみたいのだ」

するとアンティノオスが怒鳴ります。

「この他所者め、分別というものがないのか。こうして食卓につかせているだけでもありがたいと思え!」

そこへペネロペイアが口を挟みました。

「アンティノオスよ。この老人が、たとえ弓に弦を張り、斧の穴を射通したとしても、私を妻にしようなどとは夢にも思っておられますまい。そんなことはありえぬことでしょう」

しかしエウリュマコスは顔をしかめて言います。

「賢明なペネロペイアよ、我らもそんなことはないと分かっている。だが問題はそこではない。

もしも、『ペネロペイアに求婚する男たちは、オデュッセウスに劣る腰抜けばかりで、弓の弦すら張れぬ。ところが、素性も知れぬ老いぼれの乞食が、易々と弓を張り斧を射通した』などと世間に知られたらどうなる?
それこそ我らの恥ではないか!」

するとテレマコスが、きっぱりと言いました。

「エウリュマコスよ。我が家の資産を食い荒らし、我らを辱めている者に、良い評判などあり得ようがないではないか。

母上、どうかお部屋へお戻りください。この客人の申し出については、私に任せていただきたい。

エウマイオスよ、その弓を客人に渡してくれ」

英雄の弓、ついに引かれる

豚飼いエウマイオスは弓をオデュッセウスに渡すと、老女にそっと言いました。

「エウリュクレイアよ、テレマコス若様の命令だ。扉を閉めよとのことだ」

その間に、牛飼いピロイティオスは中庭へ通じる門を閉めました。

――ついに、舞台は整ったのです。

オデュッセウスは弓を手に取り、壊れたところがないか丁寧に確かめました。

そして――

いとも容易く弓に弦を張ると、
矢を放ちました。

矢は一直線に飛び、
十二の斧の穴を見事に射通したのです。