モロー〈求婚者の誅殺〉
求婚者たちとの戦いの中、女神アテナはメントルの姿で現れ、オデュッセウスを鼓舞します。
求婚者たちは槍で反撃しますが、女神の加護によって攻撃はことごとく逸らされました。
オデュッセウス、テレマコス、そして忠臣の豚飼いエウマイオスと牛飼いピロイティオスは力を合わせ、求婚者たちを次々と討ち取っていきます。
占い師レオデスは命乞いをしますが許されず、戦いはついに終結しました。助命されたのは楽人ペミオスと伝令メドンのみです。
その後、不義を働いた女中や裏切り者メランティオスも裁かれ、長く続いた求婚者たちの横暴は終わりを迎えました。
女神アテナの鼓舞 ― 戦いを見守る神
女神アテナは、オデュッセウスの旧友と同年代のメントルの姿に身を変え、広間に現れました。そして静かにオデュッセウスへ歩み寄ります。
オデュッセウスは、その人物が女神であることを察し、声をかけました。
「メントルよ、わしに力を貸してくれ!」
すると女神は厳しく言います。
「オデュッセウスよ。そなたには、もうトロイア戦争のころの気概も力も残っておらぬのか」
そう言い残すと、女神はすっと姿を消しました。
その言葉は、オデュッセウスの闘志を奮い立たせるための神の試しだったのです。
そのころ、求婚者たちの側ではアゲラオスが叫びました。
「各々方よ! まず六人が槍を投げ、オデュッセウスを仕留めよ!」
求婚者たちは一斉に槍を投げつけます。
しかし――
女神アテナが見えぬ力で槍の軌道を逸らしました。
オデュッセウスたちも槍を投げ返し、応戦します。
広間は激しい戦場となり、求婚者たちは次々と倒れていきました。
牛飼いピロイティオスは、クテシッポスの胸を槍で貫くと叫びます。
「クテシッポスよ! この一撃は、オデュッセウス王に投げつけた牛の足の返礼だ!」
最後の命乞い ― 占い師レオデスの運命
求婚者の一人レオデスは、戦いの中でオデュッセウスの前に進み出て、膝にすがりつきました。
「オデュッセウスよ、どうかお許しください。私は屋敷の女たちには手を出しておりません。
皆にも、そうしてはならぬと諭していたのです。
しかし、誰一人わしの言葉を聞こうとはしませんでした。
わしは占い役を務めていただけで、悪事には加わっておりません。それでも、他の者と同じく死ぬ運命なのでしょうか」
しかしオデュッセウスは冷たく言い放ちます。
「占い役であったのなら、わしの帰国を予見していたはずだ。
それでも貴様は、わしが帰らぬよう願い、ペネロペイアが他の男の子を産むことを望んでいたのだろう」
そう言うと――
オデュッセウスは一刀のもとに、レオデスの首をはねました。
女神の盾 ― 求婚者たちの最期
そのとき、女神アテナはアイギスの盾を掲げました。
神の威光にさらされた求婚者たちは恐怖に駆られ、
広間の中を右往左往し始めます。
その隙を逃さず、オデュッセウスたちは次々と敵を討ち取りました。
やがて広間には、倒れた求婚者たちの屍が積み重なります。
この戦いで命を許されたのは、わずか二人だけでした。
テレマコスが助命を願った
楽人ペミオスと
伝令使メドンです。
不義の女中たちへの裁き
モンシアウ〈女中を罰するオデュッセウス〉
戦いが終わると、オデュッセウスは老女エウリュクレイアに尋ねました。
「この屋敷で不義を働いた女中は誰だ」
名を確かめると、オデュッセウスはテレマコス、豚飼いエウマイオス、牛飼いピロイティオスに命じます。
不義を働いた女中たちは、
首吊りの刑に処されました。
さらに裏切り者の山羊飼いメランティオスは捕らえられ、
鼻と耳を切り落とされ、
陰部をむしり取られ、
手足までも切断されるという、
凄惨な刑を受けました。
血の戦いの終わり ― 屋敷の浄化
すべてが終わると、オデュッセウスは老女エウリュクレイアに言いました。
「婆やよ、硫黄と火を持ってきてくれ。
この屋敷を清めたいのだ。
それから、ペネロペイアと女中たちに
ここへ来るよう伝えてくれ」
こうして――
長く続いた求婚者たちの宴は終わり、
復讐の一日は静かに幕を閉じようとしていました。
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