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オデュッセウス

求婚者殺戮の前夜

「耐え忍べ、わが心よ」
求婚者のもとへ通う淫らな女中に苛立ちながらも、なんとか気持ちを落ち着かせるオデュッセウス。

眠れぬ彼に、女神アテナは励まします。
「私とゼウスがそなたを守っている」
「父神ゼウスよ、なんらかの前兆を示してください」

朝方になって快晴の空にゼウスが雷を轟かすと、小麦の臼を挽いていた女中がつぶやきました。
「雲の影が見えないのに、きっと神さまがなんらかの前兆を示されたのでしょう。私もこの辛い粉挽きから解放されて、宴を催すのも今日が最後になりますよう祈っています」

こうしてまた、いつもの朝、求婚者たちはオデュッセウスの屋敷に集まりだします。豚飼いエウマイオスも牛飼いピロイティオスもやってきました。豚飼いは、オデュッセウスを牛飼いに紹介しました。

「何と無残な憂き目にあうことか」

いつもの食事が始まると、テレマコスはオデュッセウスにも席を設けます。
「いかなる者もそなたに手をあげたり、ののしったりさせぬ。ここはオデュッセウスの屋敷である。求婚者たちよ、暴言や手荒な振る舞いは慎んでもらいたい」

この大胆な発言に求婚者たちは驚き、アンティノウスは言い放ちました。
「ゼウスのお許しがあれば、我らはとうにその口を封じていただろうに」

今のテレマコスは、この言葉をなんとも思わぬほど成長していました。

女神アテナが求婚者の中のクテシッポスをそそのかし、オデュッセウスに牛の足を投げつけさせました。オデュッセウスは首を傾け難なくこれをかわします。

また、女神は求婚者の心を狂わせ、高笑いを彼らにさせます。すべて、オデュッセウスを鼓舞させるためでした。

テレマコスの客人であり預言者のテオクリュメノスが求婚者たちに言います。
「ああ、憐れな者どもよ、そなたたちは何と無残な憂き目にあうことか」

「この狂った客人を、誰かこの屋敷から外に連れ出せ」と、エウリュマコス。
「エウリュマコスよ、案内人はいらぬ。二本の足があるからな。また、そなたらの災厄が迫っているのが分かるからな」