1話5分で読めるギリシャ神話

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第八歌前編:ゼウスの厳命と運命の秤

ゼウス

(イリアス 第八歌 前編)

ゼウスの厳命

「いかなる者もわしの言うことに、逆らう行動に出てはならぬ。トロイア、あるいはギリシャの加勢に向かってはならぬ。逆らった者はわしの雷撃を受け、惨めな姿でオリュンポスに戻ってくることになろう。あるいは、冥界のはるか下のタルタロスに放り込んでやろう。
わしの力は、神々と人間界の中で卓越している。誰もわしに逆らうことはできないぞ」

すると、ギリシャ方を応援しているアテネが
「父上の力は、われらはよく承知しており、戦いからは手を引きます。ただ、ギリシャ勢がことごとく戦死しないよう、何か知恵を授けるつもりです」
ゼウスは娘に答えて
「案ぜずともよい。可愛い娘よ、わしはそなたには優しい父でありたいと思っている」

ギリシャ、トロイアの運命の秤

こう言うと、ゼウスは黄金の鎧をまとい、黄金の鞭を使い、二頭の馬に引かせた戦車に乗り、イデの山並みのガルガロン峰に行った。ここはゼウスの聖域である。

ギリシャ、トロイア両軍は総力戦となり、大地は血の海となった。戦いが昼になった時、ゼウスは秤を取り出すと、トロイア方とギリシャ方の運命を秤に乗せた。トロイア方が高く上がった。

ヘクトル vs ディオメデス&老ネストル

ゼウスは雷光をギリシャ軍の中に投げると、ギリシャ勢はみな肝を冷やし、後ずさった。老ネストルだけはその場に留まったが、パリスの矢で馬が撃ち抜かれていて、動けなかったからだ。

これを見逃さず、へクトルは老ネストルに迫ってきた。ディオメデスがそれに気づき、老ネストルに言葉をかけた。
「老ネストルよ、さあ、わしの戦車に乗りヘクトルに立ち向かおう」

まず、ディオメデスが槍を放つと、槍はヘクトルの御者の胸に当たった。ヘクトルは新しい御者の手に手綱を委ねた。が、このままではヘクトルの負けとトロイアの壊滅になると、ゼウスはディオメデスの戦車の前に雷火を落とした。老ネストルは、すかさず
「ディオメデスよ、引き上げよう。今日のところは、ゼウスはヘクトルに名誉を授けるつもりなのだ」

ディオメデスの無念

「へクトルは大口をたたくあろう『ディオメデスはわしに歯が立たぬので、船に逃げ帰ったぞ』と。なら、いっそのこと、大地よ裂けてわしを呑み込んでくれ」
「お主とあろうものが、何を言っておる。お主に打たれたトロイア戦士の妻たちがヘクトルの言葉など信じるはずがない」

こうして、二人が引き上げていこうとすると、ヘクトルが
「とっとと逃げるがいい、女子同然の木偶の坊め」
ディオメデスは引き返し戦うか思案していると、ゼウスが三たび雷を鳴らした。
ヘクトルは、大声でトロイア勢に呼びかけた。
「ゼウスの神意は我らトロイアにある。あのやわな防壁が、私の力を防げるはずがない。あの濠だって、私はやすやす飛び越える。さあ、ギリシャ勢の船を焼きに行くぞ」

ヘレと海神ポセイドン

ギリシャ勢を手助けする女神ヘレは憤然とし、椅子の上で身を震わせ言い放った。
「ポセイドンよ、ギリシャ勢が次々に倒れていくのを見ながら、指をくわえているのですか。どうか、彼らに勝利を。そうすれば、ゼウスだってイデの峰で鬱ぎ込むことでしょう」
「ヘレよ、それはまた乱暴な。ゼウスには歯向かえぬ」

第八歌後編:ヘレとアテナ、立ち上がるが...】へ続く

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