1話5分で読めるギリシャ神話

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第四歌前編:メネラオス射られる

神々の饗宴
コルネリス・ファン・プーレンブルフ〈神々の饗宴〉

(イリアス 第四歌 前編)

ゼウスの提議

神々はトロイアを見下ろしながら、宴を開いていました。ネクタルを注いで回るのはへべ、ゼウスとヘラの娘です。

そんな中、ゼウスは話し始めました。
「ギリシャのメネラオスには、二人の神がついている。アテネとヘラお前だ。一方、パリスにはアフロディテがつきっきりで守っている。今まさに、死を覚悟したパリスを救ってやったところだ。勝利は明らかにメネラオスだ。さて、我らはこのまま戦争を終わらせ両軍に和平をもたらすか、再び戦わせるか思案せねばならぬ」
(ヘラ、お前はどうしたいのだ、トロイアを滅ぼしたいのだろ!)

ゼウスの妃ヘラの言い分

トロイアに一泡吹かせたいヘラとアテネは、口をもごもごして沈黙していました。が、ついにヘラが胸中の怒りを抑えきれずに言い出しました。
「あなた、何をおっしゃいます。わたしのこれまでの苦労を無駄にしてしまうのですか。さんざん、トロイアを痛い目にあわそうと馬も軍勢も集めさせたのに」

「ヘラよ、そなたはトロイアを滅ぼしたいと望んでおる。しかし、彼らは滅びに値するどんな悪事を犯したと言うのか? わしは、プリアモス王とトロイアの民を大切にしているものだ。まぁ、好きなようにするがよい。わしは、そなたとは争いたくはない。

しかし、言っておきたいことがある。しっかり心に留めておけ。いつか、わしがそなたの可愛がっている人間どもの国を滅ぼしたいと望んだら、思う通りにさせてくれるのだぞ。今回はそなたの言うことを聞いてやったのだからな」

「わたしが愛するアルゴス、スパルタ、ミュケネが憎いとお思いでしたら、どうぞ滅ぼしてくださいませ。わたしよりもずっとお強いあなたですもの。しかし、今回はわたしの苦労を無駄になさっては困ります。さっそく、アテネを使わせ、トロイア方から誓約を破り、ギリシャ軍に攻撃を仕掛けなさいませ」
「アテネよ。トロイア方がまず誓約を破り、ギリシャ勢に打撃を与えるよう手配せよ」

ゼウスとヘラの娘へべ
ジャックルイス・デュ・ボワ〈ゼウスとヘラの娘へべ〉

パンダロス、メネラオスを射る

そばで気負い立って聞いていたアテネは、オリュンポス山をさっと降りました。ゼウスは再び戦いを始める合図に、空に雷鳴をどどろかせました。

アテネはアンテノルの一子ラオドコスに姿を変え、愚かな弓の名手パンダロスに近づき声をかけました。
「もし、お主が勇気をふるってメネラオスに矢を射かければ、トロイア勢みんなからほめられるぞ。特にあのメネラオスに不覚をとったパリス様からはな」

アテネにそそのかされた愚かなパンダロスは、自ら狩った野山羊の角から作った弓を取り出しました。部下たちはパンダロスの前に盾を並べ、主人をギリシャ軍から隠しました。パンダロスは新しい矢を取り出すと、『成功の暁には、いけにえを捧げます』とアポロン神に祈り、矢を放ちました。

しかし、アテネがメネラオスの前に立ちはだかり、矢を少し逸らせました。しかし、矢はわき腹を突き刺し、どす黒い血が地面にしたたり落ちました。

メネラオス像
ジャコモ・ブロージ〈メネラオス像〉バチカン美術館

「至急、医師マカオンを呼んでくれ」

メネラオスは最初身震いしましたが、傷が深くないことがわかると、再び勇気を取り戻しました。そばにいたアガメムノンは身震いしましたが、
「メネラオスよ、国と国との戦いなのに、そなた一人を代表として決闘に行かせてしまった。すまぬ、トロイア方は誓約を破り、ギリシャの代表のそなたを狙った。だが、神にいけにえを捧げた誓約は決して無になったわけではない。ゼウスはこの裏切りを憤って、必ずトロイアを陥落させるであろう」

「兄者、矢は急所を逸れた、心配なさるな」と、メネラオス。
アガメムノンは側近に命じました。
「メネラオスよ、そなたの言う通りであれば良いが、まずは傷の手当だ。タルチュビオスよ、至急マカオンを呼んでくれ、名医アスクレピオスの倅じゃ」
伝令使は、すぐさまマカオンの元に行きました。
「アスクレピオスの御子よ、アカメムノン王がお呼びです。勇士メネラオスが、弓矢に撃たれました」

こうしている間にも、トロイア軍は盾をかまえ、戦列を整え、攻め寄せてきました。

〈イリアス第四歌後編:アガメムノン隊列を回る〉

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