1話5分で読めるギリシャ神話

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トロイアの木馬とラオコーン

ラオコーン〈トロイアの運命〉
ギリシャ彫刻〈ラオコーン〉ヴァチカン美術館

なぜ? 息子たちが、海蛇に襲われているのか?
「助けなくては!」と手を出そうとしたが、動けません!
ラオコーンは、一瞬なにがなんだか分らなくなっていました。
「あの木馬に...」

トロイアの木馬
戦争末期、トロイアの英雄ヘクトールが死んだ後も、ギリシャ軍は武力により勝利を手にすることができず、なかば諦めかけていました。そこで、智将オデュッセウスの策を取ることにし、ギリシャ軍は撤退の準備を始め、船団の一部を島かげに隠しました。
そして、あの大きな木馬を作り、女神アテーナーへの捧げものとして置いていったのです。残ったギリシャの軍団もこれで最後といったよそおいで出帆して行きました。

「とうとう、ギリシャ軍が去っていった、我々の勝利だ!」
喜んだトロイアの人々は、みんな城壁の中から出てきて、ギリシャ軍の陣地までやってきました。
「何なんだ!この大きな木馬は?」
「これは、我々の戦利品だ!街にもって帰ろう!」
「いや、これはギリシャ軍のワナかもしれぬ、そばに近づかないことだ!」
意見は、真っ二つに分かれていました。

神官ラオコーンの忠告
そこへ、ポセイドーンの神官ラオコーンがやってきて叫びました。
「街に運ぶなど狂気の沙汰だ!
ギリシャ軍の悪巧みが分からないのか!
警戒しろ!
普段ギリシャ人が贈り物をしてくれる時ですら、私は彼らを恐れるくらいだ」
そう叫びながら、手に槍を持つと木馬の横腹に投げつけました。
ドス!ヒェー!
それは人の呻き声にも似ていました。ここで、ラオコーンの忠告を聞いて木馬の中を確かめていれば、トロイアの滅亡は避けられたのです。

捕われたギリシャ人の男
が、ちょうどその時、街の人々が恐ろしさに口も聞けないギリシャ人を引っ立ててきました。
「何でも正直に答えるなら、命だけは助けてやろう」
トロイアの武将は、約束しました。男はシノーンと名のり、語りはじめました。

「自分はオデュッセウスの怒りを買い、置き去りにされました。木馬は女神アテーナヘの捧げもので、大きくしたのは城壁の中に運べないようにしたためです。予言者カルカースが、『もし、木馬をトロイア軍が手に入れたなら、ギリシャ軍は敗走するだろう』と、言ったからです」
この言葉が、トロイアの人々の心を一変させました。どのようにこの大きな木馬を運び、縁起の良い予言を実現させるにはどうしたらよいか、たたただ考えはじめたのです。

海蛇に襲われるラオコーン親子
その時です、二匹の大きな海蛇があらわれました。人々は四方八方へ逃げ出しました。海蛇は最初ラオコーンの二人の息子を襲い、助けようとしたラオコーンにも巻きつきました。ラオコーンは締め付けられ、一瞬気を失いかけましたが、息子ヘの思いが気を取り戻させました。が、もはや助けることも、動くこともできません。

「あの木馬に...槍を投げつけたばかりに、神々の怒りを買ってしまったのか!」
ラオコーンは力つきて、二人の息子ともどもは絞め殺されてしまいました。

今やラオコーンの忠告は完全に無視され、トロイアの人々は木馬を街に運び始めました。〈トロイアの運命〉が決まった瞬間です。

ラオコーン
エル・グレコ〈ラオコーン〉ナショナル・ギャラリー(ワシントン)