1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。姉妹サイト〈1話5分で読める聖書-アートバイブル

ラオコーン〈トロイアの運命〉が決まった瞬間

ヴァチカン美術館の〈ラオコーン像〉。このドラマティックな彫刻を、写真で見たことがある人は多いと思います。しかし、この彫刻にはどんな物語があるのか、知っている人は少ないのではないでしょうか。
なんと、〈トロイアの運命〉が決まった瞬間のシーンだったのです。このラオコーンの物語をとりあげている映画を観たことがありません。今のSFXでは、簡単に表現できるかもしれません。しかし、初期のSFXでは難しかったのだと思います。

ラオコーン〈トロイアの運命〉
ギリシャ彫刻〈ラオコーン〉ヴァチカン美術館

なぜ? 息子たちが、海蛇に襲われているのか?
「助けなくては!」と手を出そうとしたが、動けません!
ラオコーンは、一瞬なにがなんだか分らなくなっていました。
「あの木馬に...」

オデュッセウスの策トロイアの木馬

トロイア戦争末期、英雄ヘクトールが死んだ後も、ギリシャ軍は武力により勝利を手にすることができずにいました。なかば諦めかけてもいました。そこで、智将オデュッセウスの策を取ることにしました。
まず、ギリシャ軍は撤退の準備を始め、船団の一部を島かげに隠しました。その後、大きな木馬を作り、女神アテーナへの捧げものとして置いていったのです。残ったギリシャの軍団もこれで最後といったよそおいで出帆して行きました。

次の日、城壁の上からギリシャ軍のいる浜辺を眺めたトロイアの見張り。ギリシャ軍の船を一隻も見ることはありません。
「ギリシャ軍がいないぞ!我々は勝利したのだ!」
「お〜い、みんな、ギリシャ軍が一人もいないぞ!撤退したのだ」
城壁の中から外に出てきた半信半疑のトロイアの人々。ギリシャ軍の陣地までやってくると驚きました。

「何なんだ!この大きな木馬は?」
「これは、我々の戦利品だ!街にもって帰ろう!」
「いや、これはギリシャ軍のワナかもしれぬ、そばに近づかないことだ!」

意見は、真っ二つに分かれました。

神官ラオコーンの忠告

そこへ、ポセイドーンの神官ラオコーンがやってきて叫びました。
「街に運ぶなど狂気の沙汰だ!
ギリシャ軍の悪巧みが分からないのか!警戒しろ!
普段ギリシャ人が贈り物をしてくれる時ですら、私は彼らを恐れるくらいだ」
そう叫びながら、手に槍を持つと木馬の横腹に投げつけました。

ドス!ヒェー!

それは人の呻き声にも似ていました。ここで、ラオコーンの忠告を聞いて木馬の中を確かめていれば、トロイアの滅亡は避けられたのです。

捕われたギリシャ人シノーンの告白

が、ちょうどその時、街の人々が恐ろしさに口も聞けないギリシャ人を引っ立ててきました。
「何でも正直に答えろ、命だけは助けてやろう」
トロイアの武将は、約束しました。男はシノーンと名のり、語りはじめました。

「自分はオデュッセウスの怒りを買い、置き去りにされました。木馬は女神アテーナヘの捧げものです。大きくしたのは城壁の中に運べないようにしたためです。予言者カルカースが、『もし、木馬をトロイア軍が手に入れたなら、ギリシャ軍は敗走するだろう』と、言ったからです」
この言葉が、トロイアの人々の心を一変させました。どのようにこの大きな木馬を運び、縁起の良い予言を実現させるにはどうしたらよいか、みんながみんな考えはじめていました。

そんなトロイアの人々を眺め不安になったラオコーン。もう一度、大声を出して説得しようとしました。
その時です、二匹の大きな海蛇があらわれました。

ラオコーン親子に襲いかかる二匹の海蛇

トロイアの人々は四方八方へ逃げ出しました。二匹の海蛇は最初ラオコーンの二人の息子を襲い、助けようとしたラオコーンにも巻きつきました。ラオコーンは締め付けられ、一瞬気を失いかけました。が、息子ヘの思いで気を取り戻します。しかし、もはや助けることも、動くこともできません。

「あの木馬に...槍を投げつけたばかりに、女神アテーナの怒りを買ってしまったのか!」
ラオコーンは力つきて、二人の息子ともどもは絞め殺されてしまいました。

今やラオコーンの忠告は完全に無視され、トロイアの人々は木馬を街に運び始めました。
〈トロイアの運命〉が決まった瞬間です。

ラオコーン
エル・グレコ〈ラオコーン〉ナショナル・ギャラリー(ワシントン)

前のページへ 次のページへ