1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈アートバイブル〉も、絵画でわかりやすい聖書です。

曙の女神エーオース

ティトノスとオーロラ
グェルチーノ〈ティトノスとオーロラ〉カジーノ・ルドヴィージ

あなたは〈不死〉になりたいですか?
なれるとしても、〈もう1つ〉のことをけっして忘れないでください。

夜明けに太陽神アポローンの馬車の前を行くのは、金色の馬車に乗った曙の女神エーオース(オーロラ)。夜の闇を払い、夜明けを告げるのが女神の仕事です。

曙(あけぼの)の名から清く正しいイメージがありますが、地上に美しい青年を見つけるやいなや連れ去ってしまうという、じつは恋多き奔放な女神なのです。
エーオースは愛の女神アフロディーテの愛人である軍神アレースと一夜をともにしました。アフロディーテは怒り、彼女を年がら年中人間に恋をするようにしてしまったからです。

曙の女神エーオース
イーヴリン・ド・モーガン〈エーオース〉

ある日、エーオースはトロイア王ラオメデスの美貌の息子ティトノスを連れ去りました。ティトノスは人間、寿命は短くはかないものです。
「ティトノスと永遠に一緒にいたい!」
エーオースはゼウスにお願いして、ティトノスを〈不死〉にしてもらいました。
エンデュミオンのお話とは矛盾していますが)

やがて、エマティオンとメムノンという二人の息子が生まれ、二人は幸せに暮らしていました。エマティオンはヘラクレスに殺されました。メムノンはエチオピアの王になり、トロイア戦争にも参加。かなりの英雄でしたが、アキレウスに殺されました。息子を忘れられない母親エーオースが流す涙が、今でも朝露の玉になって草の葉に宿っているということです。

〈不死〉であっても〈不老〉ではなかったティトノスは、どんどん老けてしまいました。

エーオースは老いていくティトノスを見るに耐えられなくなり、王宮の一室に閉じ込めてしまいました。今や彼ははひからびて小さくなり、手足も動かなくなり、細い声しか出せなくなってしまいました。

後悔したエーオースはティトノスに見切りをつけ、彼をセミに変えてしまいました。

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メムノンを抱き上げるエーオース
アッティカの赤絵〈メムノンを抱き上げるエーオース〉ルーヴル美術館