1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈1話5分で読める聖書-アートバイブル

アーキスとガラテイア

(更新日:2021.02.18)

このギリシャ神話をカテゴリ「アフロディーテ」に入れた理由。
それは、獰猛な一眼巨人キュプロクスでさえ、恋をすると一途でしおらしくなったから。
愛や恋は、それほどのパワーを持っているんだな〜と、改めて思いました。
しかし、そんな変化は一時的なもの。嫉妬に狂うと相手を殺してしまいます。これもまた愛と恋の力か!

キュプロクス
オディロン・ルドン〈一眼巨人キュプロクス〉

スキュラはとても愛らしいニンフで人気者

「何とかならないかしら。私はちっともその気がないのに、言い寄ってくる男がいっぱい」
スキュラはたくさんの人々から求婚されていましたが、それがうっとうしいのです。いつもネーレイデス(海のニンフ)の一人ガラテイアの洞窟にきては、グチをこぼしていました。

ある日、ガラテイアはスキュラに髪をとかしてもらいながら言いました。
「みんないい家柄の人達ばかりじゃない。だから、ちゃんとお断りすれば何もおこらないでしょ。それにひきかえ、私ときたら、獰猛な一眼巨人キュプロクスから海の底に逃げるしかなかったの」

話し始めたガラテイアはのどをつまらせ、目から涙を流しはじめました。スキュラは、その涙を白い指でふきながらたずねました。
「海のニンフ様、どうなさったの。その理由を教えてください」

ガラテイアの悲しい告白

わたしが愛した人はアーキス。彼は両親にとても愛されていて、まだ16になったばかり。私が彼と一緒になろうと思っていると、あの獰猛な一眼巨人キュプロクスがちょっかいを出してきたの。アーキスを慕うわたしの心は、キュプロクスを憎む気持ちと同じくらい大きかった。

でも、さすがアフロディーテ様。恋とは不思議な力を持っています。
あの獰猛で森の恐怖と呼ばれていた、またゼウスをも侮るキュプロクスですら、恋をすると日々の仕事さえ忘れてしまったの。
熊手で髪をとかしたり、鎌でひげを刈り取ったり、自分の顔を水面に映しては、身なりを整えはじめたの。
また、その獰猛さもおさえられ、わけもなく海辺を散歩したり、自分の洞窟にひそんでいたり。その間、彼の洞窟の近くを通る舟も、襲われることがなくなったほどなの。

ガラテイア
モロー〈ガラテイア〉

「見つけた! これがお前たちの最後の逢い引きだ」

ある日、一眼巨人は海に突き出した絶壁の先端に腰をおろすと、葦笛をとりだし、愛の調べを奏ではじめたの。その調べは、森の奥深くまで届きました。それは、わたしへの愛の大きさとわたしの冷たさを責めるもの。
その時は、アーキスとわたしは森の中で寄り添っていたの。そして、一眼巨人は遠くにいるものとばかり思っていた。ところが、葦笛の調べが途切れてからそんなに経っていなかったのに、キュプロクスはすぐ近くまできて、私たちは発見されてしまったの。

私達が逃げ出すと、岩さえも震えるような大声で叫びながら迫ってきたの。私はすぐ海の中へ逃げました。
しかし、アーキスは海に逃げることはできず、丘を走っていきました。
「ガラテイア、助けてくれ〜!助けて〜!お母さ〜ん」
キュプロクスは山の端から大きな岩を砕いて持ち上げると、彼に投げつけたの。岩のほんの一部が当たっただけなのに、アーキスは岩につぶされ死んでしまった。

わたしにはアーキスのためにたった一つのことしかできなかった。彼が押しつぶされた岩の間からは血が流れていたので、澄んだ河に変えてあげたの。今もその河は、アーキスと呼ばれているの。

その後キュプロクスとはどうなったかは、ガラテイアは話すことはありませんでした。

ガラテイア
モロー〈ガラテイア〉

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