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アンキセスを運ぶアイネイアスルー〈父アンキセスを運ぶアイネイアス〉

あらすじ

アイネイアスは女神アフロディテとトロイアの武将アンキセスの息子で、トロイア最後の希望でした。

トロイア陥落時、老いた父親と息子を連れて脱出し、デロス島でアポロンの神官アニオス王に迎えられました。

アニオス王の娘たちはディオニュソス神の力で白いハトに変わる悲劇に見舞われ、アンキセスはアニオス王に同情します。

翌朝、アニオス王はアポロンの神託でトロイアの未来のためにクレタ島を目指すよう助言を得ました。

アイネイアスは、トロイア最後の希望!

アイネイアスは、女神アフロディテとトロイアの武将アンキセスの息子です。

トロイア陥落時に、彼は老いた父親アンキセスを背負い、息子アスカニオスの手を引いて逃げました。また、アイネイアスを慕う数少ない避難民も一緒でした。わずかですが、財宝も持ち出せました。

アイネイアスたちは、アンタンドロス港から海に出ました。対岸はトロイアの王子ポリュドロスの血に汚れたトラキアの地です。

まず、立ち寄ったのが、アポロンの聖地デロス島。この島で、女神レトはアポロンとアルテミスの兄妹を生みました。島の王アニオスはアポロンの神官でアンキセスの古い友でしたので、アイネイアスたちを受け入れました。

宴会になると、アンキセスはお礼を言ったあと、アニオス王に尋ねました。
「アニオス王よ、私の思い違いかもしれないが、確か、あなたには一人のご子息と四人の娘さんがいたはずです。姿が見えないのはどういうことですか?」

デロス島の王アニオスの五人の子供たち

アニオス王は悲しげな表情をして、アンキセスに答えました。
「アンキセス殿、思い違いではありません。私には、確かにかつて五人の子供がおりました。アポロンから予言の力を与えられた一人息子のアンドロスは、自分と同じ名前がついているアンドロス島で、私に代わり支配しております。

娘たちは、神ディオニュソスから別の力、信じられない恩恵を受けたのです。それは、触れるものは皆、穀物、ブドウ酒、オリーブ油に変わるのです。これは、たいへんな富になります。

その恩恵を知ると、ギリシャの総大将アガメムノンは武力に訴え、嫌がる娘たちを奪い去りました。兵士を養わせるためです。しかし、彼女たちは逃げ出し、兄のアンドロス島に渡りました。

当然、アガメムノン王の軍隊が追ってきて、アンドロスを脅しました。息子にはどうすることもできません。息子はトロイアの英雄ヘクトルでも、あなたの息子アイネイアス殿のような武勇もありませんから」

アフロディテとアンキセスリッチモンド〈アフロディテとアンキセス〉

女神アフロディテの鳥と白いハト

アニオス王は語り続けます。
「娘たちはまさに捕われる時、両手を天に差し出し叫びました。『父なるディオニュソス神よ、どうか私たちを助けたまえ!』と。すると、アンキセス殿、娘たちはあなたの女神の愛鳥、白いハトに変わってしまったのです」

「そんな悲しい運命が、あなたの子供たちに起きたのですか」
アンキセスは逃げてきた運命も忘れ、友アニオス王への同情を禁じ得ません。

次の朝、アニオス王はアポロンの神託所に向かい、トロイアの友のために神のお告げをうかがったのです。お告げには、「いにしえの母なる地、トロイア一族発祥の地(クレタ島)をめざすように」とありました。

ローマ建国の祖アイネイアス[2]シケリア(シチリア)島へ