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テティスを捕らえようとするペーレウス〈テティスを捕らえようとするペーレウス〉

テティスを諦めたゼウスとポセイドン

海神プロテウスは、テティスに予言しました。「テティスよ、あなたは一人の若者の母となる。その若者が成人した暁には、父より偉大な者として、後世にまで讃えられるだろう」

このため、ゼウスとポセイドンは、テティスを諦めました。自分が我が子に殺されるのではないか、と恐れたからです。オリュンポスの覇者と海の覇者の地位を、明け渡すわけにはいきません。そこで、ゼウスは孫のペーレウスにテティスを与えたのです。

テティスは、海神ネレウスとドーリスの娘たちネレイデスの一人。ギリシャ中部のテッサリアの入り江にテンニンカの木立があり、その中に洞窟があります。ここに毎日、テティスはイルカに乗って、昼寝にやってきます。

待ち伏せしていたペーレウスは、昼寝しているテティスを襲いました。テティスはすぐ目をさますと、鳥となり逃げようとしました。

しかし、ペーレウスは離しません。次にテティスが大木となると、ペーレウスはしがみつきました。今度は、テティスは虎に変身しました。さすがのペーレウスも、虎には怖気づいて彼女から離れざるをえません。

海神プロテウスの助言

ペーレウスは、海神プロテウスに助言を求め祈りました。海に酒を注ぎ、羊の内臓を供え、香をたきました。

やがて、プロテウスは渦巻く波間からこう助言しました。「ペーレウスよ、お前はテティスを花嫁にできるだろう。彼女が洞窟で眠っている時、強い綱の紐で縛りあげるのだ。彼女がどんな姿に変身しようと、元の姿に戻るまでじっと取り押さえているのだ」

次の日、テティスが洞窟にやってきて昼寝をすると、ペーレウスは女神を綱の紐で縛りあげました。その後、彼女に覆いかぶさります。女神は目を覚まし、鳥、大木、虎に変身しました。が、縛りあげられた体は動きません。そんな女神に、ペーレウスは微笑んでキスをしたのです。

「私の負けだわ。これも、大神ゼウスの計らいなのでしょう」女神もため息をつき、ペーレウスに身を委ねました。

テティスとペーレウスの結婚式〈テティスとペーレウスの結婚式〉

テティスとペーレウスの結婚式

結婚式には、すべての神々が招待されました。ただし、争いの女神エリスだけは、とうぜん招かれません。怒った女神は、一個の黄金のリンゴを宴の間に投げ入れました。そのリンゴには、札が付いていました。

「一番美しい女神さまへ」

ゼウスの妃ヘラ、美の女神アフロディテ、知恵の女神アテナは、それぞれ「黄金のリンゴは私のもの」と主張しました。

ゼウスは「わしが決めたら、妻ヘラしか選べない。アフロディテとわが娘アテナは文句を言うに違いない」そう思い、この厄介な審判をイーデー山で羊飼いをしていた青年パリスに任せたのです。

パリスはトロイアの第二王子として生まれました。
しかし、将来トロイアを滅ぼす原因になるとの不吉な予言があり、イーデー山に追放されていたのです。

パリスの審判とトロイア戦争の勃発

女神たちはそれぞれ自分を選ぶよう、パリスに贈り物を約束しました。

ヘラ「世界一の権力と富みを約束しよう」
アフロディテ「人間の中で一番美しい女性を与えよう」
アテナ「男子たるもの、戦場での誉れと名声を約束するぞ」

人間なら女神たちの裸を前に恐れおののくところですが、パリスは動じません。彼はアフロディテに「黄金のリンゴ」を渡します。

こうして、パリスは女神アフロディテの助力もあり、メネラオスの妻「人間の中で一番美しい女性ヘレネ」を略奪することになったのです。

かつて、ヘレネの求婚者には「ヘレネに何かあった場合は、必ず彼女を助ける」との密約がありました。こうして、ギリシャ中の彼女の求婚者はヘレネ奪回のために出征し、トロイア戦争が勃発したのです。

テティスとペーレウスの子がアキレウス。彼はトロイア戦争に参戦し、その名声は天上界から人間界にまで広く知られるようになりました。「父よりもはるかに偉大になる」との予言が、成就されたのです。

テティス、アキレウスに武具を届ける〈テティス、アキレウスに武具を届ける〉

アキレウスの武具をつけた彼の親友パトロクロス。彼はヘクトルに殺されて、武具を奪われていました。怒って出陣を決意するアキレウスですが、武具がありません。

母テティスは、アキレウスのために鍛冶の神ヘパイストスに新しい武具を頼みます。アキレウスの部下たちは、後ほどその武具の神々しさに圧倒され尻込みします。

アキレウスとアガメムノンの和解[第19歌 前編]

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