処女神アルテミスの厳粛なる掟
(更新日:2021.02.11)
ギリシャ神話では、処女神はアルテミスとアテーナとヘカテーだけ。アルテミスは、エピソードを見ていると、あまりに頑なとも言える一途な少女のようです。
だから、アルテミスの怒りの制裁は「無慈悲」です。人間への優しさはありません。
ヨハン・ボックホルスト〈アポローンとアルテミス、ニオベーの子供を射殺〉
アルテミスは、アポローンと双子です。
ギリシャ神話では、処女神はアルテミスとアテーナとヘカテーだけ。
女神を崇拝するニンフたちもみな処女です。妊娠が発覚すると追放されます。また、狩りが好きで男神や人間の男には一切興味がありません。
アルテミスのエピソードを見ていると、あまりにも頑なで一途な少女のよう。その性格は、母神レートーから受け継いでいます。
処女神アルテミスの厳粛なる掟
「神の掟」には、愛や思いやりはいっさいありません。いや、愛や思いやりは存在しないのかもしれません。なぜなら、宇宙(神)の支配は、寸分の狂いもあってはならないからです。ちょっとした思いやりは大きな狂いを生み、崩壊へと導くからです。だから、「神の掟」は人間には計り知れない遥かな高みにあるのでしょう。
絵画は、〈ニオベーの悲哀〉を描いたものです。上の1枚を除いて、以下の絵ではアルテミスの部分を切り取ってみました。
その表情を、あなたの目で確かめてください。
ローマ神話では、アルテミスはダイアナあるいはディアーナと呼ばれています。女神を描いた絵画では、ほとんど頭に月の飾りを付けています。
〈この不気味なアルテミスの顔、微笑んでいます〉
青年アクタイオーンの悲劇
青年アクタイオーンは鹿狩りをしている時、アルテミスが水浴している泉に迷い込んでしまいました。
女神は、すかさず彼に言い放ちます。
「さぁ、できるなら、このアルテミスの裸を見たとふれまわるがよい!」
すると、アクタイオーンは鹿に変身させられ、彼の鹿狩りの仲間と猟犬に殺されてしまいます。
アルテミスは神ですから、アクタイオーンが覗きに来たのではないことくらい分かっていたはずです。
ただ女神の頭の中にあるのは「わたしの裸を見られた」ことだけなのです。とても大人の女性の対応とはいえません。
「見たでしょ! もっと見たい?」と微笑んで誘惑するようことは、とても言えないのがアルテミスなのです。
【鹿になったアクタイオーン】を読む
〈アルテミスの顔は狂気じみています〉
カリストーを熊に
ゼウスがアルテミスに変身して、女神を崇拝している従者の一人カリストーを妊娠させます。彼女のお腹が大きくなり、妊娠がバレてしまいます。
妊娠を祝福するどころか激怒したアルテミスは、カリストーを熊に変えて追放します。ゼススが自分に変身して、カリストーを妊娠させてことには気づいていなかったかもしれません。
しかし、女神の怒りには、ためらいは少しももありません。
生まれたカリストーの子供は、アルカスといいます。後に、この親子が「大熊座」と「子熊座」になります。
【おおくま座:カリストー】を読む
〈狩り-人殺しを楽しんでいるかのようです〉
ニオベーの子供14人を兄アポローンと一緒に射殺!
ニオベーは、群衆の前で言い放ちました。
「どうしてレートーなどが崇拝されて、
私はなんの敬意も払われないのか?
私には7人の息子と7人の娘がいる。
が、レートーには2人しか子供がいないではないか!」
激怒した母神レートーは、アポローンとアルテミスに
「私は今日までお前たち2人を誇りにしてきました。
大神ゼウスの妃ヘーラーを除いては、けっして他の女神に劣らぬと思っています。
その私が、今や自分はほんとうに女神なのかと疑い始めています。
お前たちが母さんを守ってくれないと、人間たちの崇拝を奪われてしまいます...」
この時、レートーは〈ニオベーにどんな罰を与えるか〉言わなかったのです。
ふつうに考えれば、ニオベー本人に罰を与えれば良いと考えられます。子供には罪はありません。
しかし、アポローンとアルテミスは、ニオベーの子供14人全員射殺しました。
アポローンとアルテミスが生まれたばかりの頃、レートーは子供たちに水を飲ませようとして、農夫たちに水を濁されたことがあります。すかさず、その農夫を全員カエルに変えてしまいました。
レートーの怒りには理由がありますが、その報復の即断には迷いがありません。
最後に、アルテミスのオリオンへの恋
恋には理由がないかもしれませんが、アルテミスがポセイドーンの子である漁師オリオンに惚れた理由がよく分かりません。ひょっとすると、この恋が成就しなかったトラウマが、女神の心を愛情から遠ざけてしまったのかもしれません。
【オリオン座】を読む
【ニオベーの悲哀】を読む
【レートーと蛙になった農夫】を読む
〈優しい顔で、子供を狩る〉
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