1話5分で読めるギリシャ神話

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ローマ建国の祖アイネイアース3

冥府スティクス河
ピエトロ・テスタ〈冥府スティクス河〉

アイネイアース、クマエの巫女シビュラと冥界へ

アイネイアースたちは、再びイタリアへむけて出発した。
むかし、ゼウスがケルコプスたちの欺瞞、嘘の誓い、その罪を憎んで彼らをしわの多い獣に変えたという「猿ヶ島」(ナポリ湾の二つの島ピテクサエ)。そこをすぎると、クマエの岸に着いた。

アイネイアースはクマエの巫女シビュラに、亡き父に会うために冥界を旅したいとたのんだ。
巫女シビュラは、答えた。
「武勇にかけてはこの上もない英雄よ、あなたの孝心はトロイア陥落の業火が知っております。あなたの父の霊に会えましょう。わたしが道案内をいたします」

巫女は冥界の女王ペルセポネーに捧げられた森の黄金の木の枝をおり取るよう、アイネイアースに伝えた。こうして、父アンキセスに会うと、父は彼に来るべき戦いと子孫が未来のローマの英雄となることを告げた。

冥界の帰途、アイネイアースは巫女に礼をのべた。
「冥界にくだって、父に会い、こうして無事に帰れます。地上につきましたら、あなたの神殿をたて、お礼をしたいと思います」

アポロンに愛された巫女シビュラの悲しい現実

巫女は悲しそうに答えた。
「わたしは神ではありません。そのような神殿は人間のわたしには相応しくはありません。わたしは、かつてアポローン神に望まれました。
『クマエの乙女よ、望みは何でもかなえられよう』
わたしは砂をすくい取り、この砂の数だけの年数を生きられるよう、愚かなにもアポローン様に頼みました。若さをも保てるようにとは忘れていました。もちろん、アポローン様は両方をかなえてくださるつもりだったのですが、わたしはアポローン様をはねのけて、結婚しないままで今に至っています。

ご覧の老婆のわたしは、もう700年も生きながられています。しかも、まだ300もの砂粒(300年分)が残っているのです。誰も、わたしのことは忘れ去る運命なのです。あのアポローン様でさえ」

地上に戻るとしきたりの供犠をおえ、後に乳母の名前カイエタと名のついた次の岸にむかった。

オデュッセウスとポリュペモス
アルノルト・ベックリン〈オデュッセウスとポリュペモス〉

キュクロプスの島に取り残されたアカイメニデス

こんな偶然があるのだろうか。このカイエタの岸には、かつてのオデュッセウスの部下マカレウスが住んでいた。一方、アイネイアースの船にも、かつてのオデュッセウスの部下アカイメニデスが乗っていた。
マカレウスは、元同士に声をかけた。
「おい、アカイメニデス。どうしてお前がトロイアの船に乗っているのだ?」

アカイメニデスは、一つ目巨人ポリュペモスの島に取り残されてしまったのだ。オデュッセウスの機転でかろうじて逃れたあのキュクロプスの島にだ。

「オデュッセウスの船めがけて、切り取った山を投げつけたポリュペモスは叫んだ!
『畜生め、あのオデュッセウスか、仲間のどいつかが戻ってくればよいのだが!そうすれば、俺の怒りで、そいつの手足をちぎり、腹わたを食らってやるのだが。そいつの血でこの喉を潤せたら、失った目など大したことではない』

取り残された俺の気持ちがわかるか!巨人に食われた、痛ましい仲間の姿がありありと頭に浮かんだ。『俺はここにいる!戻ってきれくれ〜』と叫び声を出すこともできず、去っていくオデュッセウス様の船を見ながら隠れているよりほかなかった。そんな巨人の島で日々を過ごしていた時、このトロイアの船が通りかかり、何とか俺は救出されたというわけだ。トロイアの方々、アイネイアース殿には感謝してもしきれないほどだ」

マカレウスの告白

語り終えた後、今度はアカイメニデスがかつての仲間に質問した。
「ところで、マカレウスよ、なぜお前はお頭オデュッセウスとともに行かなかったのだ?」
マカレウスは語った。
キュプロプスの島からかろうじて逃げ出した後、アイアイエ島のキルケでの館で仲間が豚にされた話、イタリア王ピクス王がキルケによってキツツキにされた話、冥界へ向けての出航と待ち受けるキルケの困難な予言を考えると、マカレウスは怖くなり、ここアイアイエ島のカイエタに残ることにしたというのだ。
かつてのオデュッセウスの部下たちのなんとも奇遇な再会であった。

そして、アイネイアースの目の前には、最終目的地ラティウム(イタリア・ローマ)が待っていた。

キュクロプス 後編〉参照

魔女キルケ 前後編〉参照

魔女キルケ2 キツツキの話〉参照