1話5分で読めるギリシャ神話

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イカロスの翼

イカロスの墜落のある風景
シャガール〈イカロスの墜落〉ポンピドゥー・センター

ダイダロスは思った。
「ミーノース王は陸と海を支配できても、大空を支配することはできないだろう。私は、この大空から逃げてみせよう!」

アテーナイのテーセウスが、ラビリンス(迷宮)の怪獣ミノタウロスを倒して逃げました。
ラビリンスを脱出できたのは、クレタ島の王ミーノースの娘アリアドネーのおかげ。アリアドネーは、生け贄としてアテーナイからきたテーセウスに一目惚れをしていました。なんとかテーセウスを助けたいと思い、テーセウスに教えたのです。
「ラビリンスの入り口に糸をくくりつけてから中に入ります。ミノタウロスを倒したら、その糸をたどって入り口に戻ってください」

ミーノース王は、不審に思いました。
「アリアドネーにそんな知恵があったのか...?そうだ!あのダイダロスが教えたのに違いない!」ダイダロスはラビリンスの設計者。ミーノース王の信頼を得ていましたが、こうして王の不興を買い、息子イカロスとともにラビリンスに閉じ込められてしまったのです。

「私は、この大空から逃げてみせよう!」

さっそく、ダイダロスは翼を作りはじめました。小さい鳥の羽はロウでかため、だんだんと大きな羽を糸で結わえます。完成した翼をつけ、羽ばたいてみました。すると、体が宙に浮きあがります。

ダイダロスとイカロス
ヴァン・ダイク〈ダイダロスとイカロス〉アートギャラリー・オブ・オンタリオ

イカロスにも翼をつけさせ、飛び方を教えました。
「イカロスよ。必ず中空を飛ぶのだぞ。低すぎると海の水しぶきで羽が重くなる。高く飛ぶと、太陽の熱でロウが溶けてしまう。まぁ、私についてくれば安心だ」

二人は飛び立ちました。ダイダロスは、たびたび振り返ります。息子がちゃんとついてきているか、確かめるためです。イカロスは、はじめ父についていくことが精一杯です。が、しばらくすると空を飛んでいることがたんだん楽しくなってきました。そして、いつのまにか父を見失い、空高く飛んでいたのです。

イカロスの翼は太陽に近づいて、ロウが柔らかくなりとけてしまい、羽がバラバラになってしまいました。少年は、海に真っ逆さまに落ちていきました。
「イカロス!イカロース!」ダイダロスは叫びましたが、手遅れです。

ダイダロスは、近くの島にイカロスの遺体を埋め、その島をイカリア(エーゲ海にある島)と名づけました。自分はシケリア(イタリアのシチリア島)に行き、ここにアポローンの神殿を建て、その翼を捧げました。

一方、ミーノース王は怒りでモンモンとしていましたが、ついに一計を案じ、「トリトン貝(巻き貝)に糸を通した者には、賞金を与えよう」と、近隣の国に布告しました。〈この難問を解く者はダイダロスしかいない〉と、王は確信してしたのです。

シケリア王は、ダイダロスの回答をミーノース王に伝えました。
「貝殻の先端に穴を開け、そこに蜂蜜をぬり、糸を付けたアリをもう片方の穴から這わせて通します」

「ふふふ、してやったり」
喜んだミーノース王はシケリアに乗り込み、ダイダロスの引き渡しを迫りました。が、シケリア王はダイダロスを失いたくありません。そこで、風呂に入っているミーノース王に熱湯をかけ、殺してしまいました。偉大なクレタ文明を作った王のなんとも儚い運命でした。

イカロスの墜落のある風景
ブリューゲル〈イカロスの墜落のある風景〉ベルギー王立美術館