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夜と眠りの神モーガン〈夜と眠りの神〉

原初の幽冥界を神格化したエレボスが父。夜の女神ニュクスが母。ヒュプノスはギリシア語で、「眠り」の意味で、眠りを神格化した神です。ローマ神話では、ソムヌス。

ヒュプノス〜ヘシオドスの『神統記』

ヒュプノスの兄弟には死の神タナトス、義憤の神ネメシス、争いの神エリス(トロイア戦争の原因となった)、運命の三女神(クロトー、ラケシス&アトロポス)がいます。

ヒュプノスは兄タナトスとともに、大地のはるか下方のタルタロスの領域に館を構えています。そして母ニュクスが地上に夜をもたらす時には、彼も付きしたがって人々を眠りに誘います。

兄タナトスは非情の性格であるのに対し、ヒュプノスは穏やかで心優しい性格を持っています。人の死も、ヒュプノスが与える最後の眠りであるともいえます。

なお、エレボスとニュクスには、昼の女神ヘーメラー、上天の光明アイテール、地獄の渡し守カロンがいます。ニュクスとヘーメラーが昼と夜の表裏一体であるように、エレボスと息子アイテールも、地下の暗黒と上天の光明という表裏一体をなします。

ニクスの系図
一般的な夜の女神ニュクスの系図:ヘスペリデスはアトラスの子と言われる異説もあります。また、神話には出てきませんが、ニュクスの子としてアパテ(欺瞞)、ピロテス(色事)、ゲーラス(老い)もいます。(ヘロドトス「神統記」より)

ヒュプノス〜オウィディウス『変身物語』

眠りの神ヒュプノスはレムノス島の奥深い洞窟に眠っており、その周りに、モルペウスをはじめとする彼の子・夢の三神(オネイロス)が漂っています。

ヘラクレスを迫害するヘラに頼まれてゼウスを眠らせたことがあり、その後ゼウスに罰せられるところを母ニュクスに助けられたこともあります。

また、トロイア戦争の際にも、戦争からゼウスの気をそらそうとしたヘラに頼まれてゼウスを眠ら、その後ヘラからパーシテアー(美と優雅を司る女神、カリスたちの一人)を妻とすることを許されました。

眠りの神ヒュプノスの館

七色の衣をまとうイリスは、大空に虹をかけながら出かけていきました。

ヒュプノスの館は、どんよりとした空気に包まれ、静寂に支配されています。門もなく、館の中央に黒檀(こくたん)でできた長椅子が一つおいてあり、黒い羽布団がしかれ、黒い垂れ幕がかかっています。

イリスは、まとわりつく夢を追いはらい言いました。
「ヒュプノスよ、もの静かな神よ、心のしずめ役、悩み疲れた胸のなぐさめ役よ、アルキュオネーのところに行って、ケーユクスの死とその遭難のありさまとを知らせなさい」

イリスは伝えると、よどんだ空気、眠気が全身に忍びよってくるのを感じて、その場をすぐ立ち去りました。

ヒュプノスには、人間に変身するのが得意な夢の神モルペウス、鳥獣に変身するイケロス、岩や木、水など物質に変身するパンタソスなどの息子がいます。ヒュプノスはモルペウスにイリスの命令を伝えると、ふたたび枕に頭をのせ、心地よい眠りに身をまかせました。

アルキュオネーとカワセミの話

ニュクス(夜の女神)はカオスから生まれた原初の神

運命の三女神はクロト、ラケシス&アトロポス

眠りの神ヒュプノスと死の神タナトスウォーターハウス〈眠りの神ヒュプノスと死の神タナトスの兄弟〉