ギリシャ神話の絵画も多く、イメージがすぐ頭に浮かび、分かりやすいとお便りをいただいています(感謝)。
ゼウス、アポローン、アテーナ、アフロディーテ(ビーナス)をはじめとして、オリュンポス12神でギリシャ神話をカテゴリー分けしています。
12星座の神話にはアクセス数が多く、人気があります。また、『イリアス』と『オデュッセイア』のあらすじも、多くのエピソードで紹介しています。
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アートバイブル〜絵画でわかりやすい1話5分で読める聖書
始めにカオス[混沌]ありき!
〈カオス - 混沌〉
この世界の始まりはカオス(混沌)といって、どろんとした塊りのようでした。まだ、空や大地もなく、山や河や海もありません。また、どこにも、生き物はいませんでした。
神があるいは優れた自然が天空から大地を、大地から海を引き離し、濃密な大気と澄んだ天空とに分けました。火からなる軽い霊気は舞いあがって、いちばん高い空間を占め、軽さにおいて次の大気は2番目の空間を占めました。
密などろどろの大地は、下のほうへ押しやられます。まわりの水が、その大陸を囲みます。次に、大地をどこから見ても均等な形になるように、大きな球体になっていきました。
世界は平たくて円盤のようなもの。その世界の中心がオリュンポス山であり、アポローンの神託所があるデルポイの聖地です。
ギリシャ神話の5つの時代
黄金の時代
人間と動物、人間と人間が争うこともなく、食べ物に困ることもありません。気候はいつも暖かく、まさにパラダイス!
銀の時代
ゼウスは暖かかった1年を、春・夏・秋・冬の4つの季節にわけました。食べ物を作り、寝る場所も必要になりました。しかし、人間の心は正しくまた優しかったのです。
青銅の時代
人間の心は荒々しくなり、残忍な武器をもち、戦うようになりました。山の木を倒し、木で作った船で海に出ては魚を捕ります。また、地下深く掘っては、黄金、銅を求めます。
大洪水と英雄の時代
「わしは、今の人間を滅ぼし、新しい種族を作ろうと思う。そうすれば、神々への崇拝も復活するであろう!」とゼウス。その手段がゼウスの武器・雷霆(らいてい)でなく大洪水でした。雷霆だと、地上が燃え、オリュンポス山まで影響が出るかもしれなかったからです。
そして、生き残ったのが、プロメテウスの息子デウカリオーンとその妻ピュラー(エピメテウスとパンドラの娘)です。この後に英雄の時代が始まりますが、詳しい説明はありません。
鉄の時代
人間はあらゆる悪行をはじめます。もはや、優しさはありません。悪だくみと暴力にあふれ、人間は我欲で金を欲します。
ヘシオドスは[仕事と日]の中で嘆いています。
『五番目の人々の間に、私はもはやおるべきではなかった。その前に死ぬか、後から生まれるべきだった』
→5時代(黄金・銀・青銅・英雄・鉄)と大洪水をおこしたゼウス
ゼウス、世界の覇王となる!
はじめにカオスありき。カオスの中に大地女神ガイアが生まれ、ガイアは天空神ウラノスを生みます。
天空神ウラノスを倒したのが、その子クロノス。クロノスの兄弟姉妹は、ティーターン神族と呼ばれます。クロノスは、姉レアと結婚し、オリュンポスの神々を生みます。
しかし、クロノスは「自分の子に王座を奪われる」とウラノスに予言されていたので、生まれた子を次々に飲み込んでしまいます。
悲しんだレアは、新たに身ごもった子は助けたいと願い、クレータ島で密かに出産しました。この子がゼウス です。
ゼウスは成長すると、クロノスに飲み込まれた兄と姉たちを助け出すことを決意。助けだすと、オリュンポス山に布陣し、クロノスのティーターン神族と戦います。「ティタノマキア」と言われたこの戦いは10年間続き、ゼウス側が勝利します。
そして、ゼウスが天空と地上、ポセイドーンが海洋、ハーデースが冥界をくじ引きで支配することになったのです。
ギリシャ神話のオリュンポス12神
(カッコ内は、ローマ神話の名前)
1. 大神ゼウス(ユピテル)
大神ゼウスは、オリンポス十二神の首長で、天空と雷の神です。
ゼウスの物語には、ティタノマキア(タイタンとの戦い)やギガントマキア(巨人との戦い)が含まれ、また、エウロペやイオなど多くの浮気もありました。
彼は神々の父であり、絶大な権力を持ち、天候を操る能力があります。ゼウスは女神ヘーラーと結婚していますが、彼の浮気は数多くの神話に登場し、人間と神々の物語の背後にも影響を与えました。
ゼウスは神話の中で様々な役割を果たし、その力強さと複雑な性格はギリシャ神話において重要な存在です。
2. 女神ヘーラー(ユノ:ゼウスの妃)
女神ヘーラーはゼウスの妻で、結婚と家庭の女神です。しかし、ヘーラーはエウロペやイオなどの夫ゼウスの浮気に関わることが多くありました。
ヘーラーはゼウスの浮気に対して激しい嫉妬心を抱き、そのたびにゼウスではなく相手の女神や女性に報復を試みました。このため、ギリシャ神話において、ヘーラーはしばしば夫との諍いや神々の物語に登場し、結婚と嫉妬の象徴として知られています。
また、彼女は女性や結婚の守護神としても尊ばれ、多くの祭りや祈りが捧げられました。
3. 海神ポセイドーン(ネプトゥヌス)
海神ポセイドーンは海と地震の神で、彼の妻は美しいアムピトリーテーです。ポセイドーンは大海を統べ、三叉槍トリジェアを持つことで知られています。
時には海を穏やかにし、時には荒れ狂わせ、航海者や漁師に影響を及ぼしました。また、地震も彼の力の一部で、地下の海の神としての側面も持っています。
ポセイドーンの物語には、彼の様々な冒険や競争、神話的な生物との対決などが含まれています。その姿は波高く、荒々しい海を象徴し、ギリシャ神話における重要な神の一柱です。
4. 女神アテーナ(ミネルヴァ、3処女神の一人)
女神アテーナは知恵と戦争の女神で、彼女は純粋で美しい処女神で、ゼウスの頭から生まれました。アテーナは戦争における策略と知恵を象徴し、彼女の加護を受ける者は勝利を収めました。
アラクネーとの織物勝負はその知恵を示す物語の一部です。アテーナの優れた技巧と誇り高い性格が強調され、不遜なアラクネーとの対決を通じて、神々への尊重が語られています。
アテーナはギリシャ文明の重要な守護神であり、知識や芸術にも関連し、アクロポリスなどの聖地に祭壇が捧げられています。
5. 美の女神アフロディーテ(ビーナスorウェヌス)
美の女神アプロディーテは愛と美の女神で、「ビーナスの誕生」というボッティチェッリの美しい絵画がイタリア・フィレンツェのウフィッツィ美術館にあります。
アプロディーテは美と愛によって人々を引き寄せ、恋愛や情熱の神として崇拝されました。アプロディーテはギリシャ神話の中で美と情熱の化身であり、彼女の影響は芸術、詩、そして愛の世界に及びました。
彼女の物語には、美しい青年アドニスとの関係も注目されており、アドニスへの愛を巡る様々な神話が語られています。
6. 太陽神アポローン
太陽神アポローンと月の神アルテミスは、ゼウス とレートーの子供です。
アポローンは芸術、知識、音楽の神で、彼はギリシャ神話の中で非常に多才な存在です。彼は太陽を運ぶ神としても知られています。
アポローンは美しいニンフ・ダプネーとの物語が有名で、彼女を追いかける姿が絵画や詩歌、ミュージカルになっています。
アポローンは音楽や詩の守護神でもあり、彼の予言の聖地としてデルポイに神殿が建てられました。アポローンは知識の神としても崇拝され、ギリシャ文明に多大な影響を与えました。
7. 月の女神アルテミス(ディアナ:3処女神の一人)
月の神アルテミスは、狩猟と処女性の女神で、彼女は双子の姉妹として太陽神アポローンと一緒に神話に登場します。
アルテミスは弓と矢を操り、野生動物の女神として知られています。また、彼女は処女性を保ち、恋愛や結婚から距離を置くことを重要視し、その純粋な性格を象徴しました。
アルテミスの神話には、彼女の狩猟の冒険や矢による復讐(ニオベ)の物語が多く含まれています。彼女は女性や女子供の守護神として崇拝され、特に女性の出産や成人の儀式において重要な役割を果たしました。
8. 豊穣の女神デーメーテール(セレス)
豊穣の女神デーメーテールは、大地の神で、彼女は穀物の成長と収穫を管理し、農業と豊かさの象徴とされました。
デーメーテールの有名な神話の一つには、娘のプロセルピナが冥界の神ハーデースに略奪される物語が含まれています。この出来事は季節の変化を説明し、冬の到来を象徴しています。
デーメーテールの神話は、大地の収穫と恵みを祈願し、農業における宗教的儀式と結びついており、古代ギリシャ社会において重要な役割を果たしました。
9. 軍神アレース(マルス)
軍神アレスは、戦争と紛争の神で、彼は戦闘の熱情と暴力を象徴しています。アレスはゼウスとヘーラーの子とされ、戦場において恐れられました。
アレスは戦争や紛争に駆り立てる存在として、人間の武士や勇者に戦いの勇気を与えました。しかし、彼の性格は衝動的で無分別な側面もあり、他の神々や人間との関係がしばしば複雑で衝突に満ちています。
アレスは勝利と栄光の神アテーナと対照的な存在として、ギリシャ神話の中で重要な役割を果たしました。
10. 鍛冶の神ヘーパイストス(ウルカヌス)
鍛治の神ヘパイストスは、技術と工芸の神で、彼は神話の中で様々な工作物を創り出しました。
彼は知識と熟練の鍛冶師で、特に火と金属加工に長けています。ヘパイストスはアテーナによって助けられ、神々の武器や道具を製作しました。
また、パンドラの物語にも登場し、パンドラの箱を作成し、人間に災厄をもたらす出来事を引き起こしました。ヘパイストスは技術と職人の神として、ギリシャの工芸品や建造物の制作において重要な役割を果たしました。
11. 嘘と泥棒の神ヘルメース(メルクリウス)
泥棒の神ヘルメースは、速さと盗みの神で、彼はメッセンジャー神としても知られています。彼は神々と人間の間を取り持ち、情報伝達や神託を司りました。
ヘルメースは売れてすぐアポローンの牛を盗んだことが特筆されます。また、ヘルメースは旅行者や商人の守護神として崇拝され、彼の特徴的な帽子とサンダルは速さと行動力を象徴しました。
なお、日本の『金の斧と銀の斧』に水の中から出てくるのは女神ですが、元になった『イソップ物語』ではヘルメースです。
12. 酒神ディオニュソス(バッカス)
酒神ディオニュソスは、宴会、酒、狂気の神で、バッカスとしても知られます。彼は葡萄の収穫と醸造を司り、酒宴や祭りの象徴とされました。
ディオニュソスの神話には、彼の母セメレー、妻アリアドネー、叔母アガウエーやアウトノエーなど多くの女性との運命が含まれ、特にバッカスの祭り(バッカナリア)と呼ばれる祭りは彼に捧げられました。
ディオニュソスは酒と解放の神として、宴会や演劇においてギリシャ文化に大きな影響を与え、狂気の要素も彼の神話に反映されています。
冥界の王ハーデースは、オリュンポス12神ではありません。
冥界の神ハーデースは、プロセルピナの略奪に関与し、死者の支配者として知られています。プロセルピナの略奪は、彼の冥界支配と関連があり、季節の変化を象徴しています。
ハーデースはセゼリューネの兄弟で、冥界で亡くなった魂を受け入れ、その運命を決定しました。ハーデースは地下の世界を統治し、死者の霊魂を導く役割を果たしました。
彼は光を持たず、冥界を支配するその冷酷な性格から、恐れられる神として描かれました。冥界を守っているのは、3つの頭を持つケルベロスと冥界の河ステュクスです。
ギリシャ神話・人気エピソード8選
1. チャンスの神は前髪しかない!
チャンスの神カイロスには前髪しかありません。若いイケメンなのに後頭部に髪がないのです。
人生に何回もめぐってくる運(前髪)と不運(後頭部)。あなたには、この運をつかみ、不運を回避する準備ができていますか?
たとえば、回転寿司。食べたいネタがあれば、回ってくる前から注意していなければ、取れませんよね。
2. エウロペの誘拐[ゼウス の浮気]
ゼウスはドンファンよりはるかに昔からの元祖プレイボーイ。ゼウスの浮気で、最も有名なのがエウロペーの誘拐です。
ゼウスはこの時「白い優しい雄牛」になって、エウロペーや乙女たちの気をひきます。そして、牛に慣れたエウロペーが背に乗ったまさにその時、海に入り連れ去ります。
このように、ゼウスは恋のためなら、どんなことでもします。見習うべき実行力かもしれません!
3. アポローンとプネー[月桂樹]
エロースは恋心を燃やす〈黄金の矢〉でアポローンを射抜き、恋をはねつける〈鉛の矢〉で河神の娘ダプネーの胸を射ぬきました。
アポローンは初めて見たダプネーへの恋にとらわれ、ダプネーは「恋など汚らわしい」とアポローから逃げます。
アポローンは逃げるダプネーを優しく追いかけ、ついに彼女を捕まえる瞬間がやってきました。
ダプネーは叫びます!「お父さま、助けて〜。私の姿を変えてください」と。すると、彼女は月桂樹へと変身しはじめたのです。
4. イカロスの墜落
「テーセウス様 ラビリンスの入り口にこの糸の端をくくりつけてから、奥に入ってください。そして、ミノタウロスを倒したら、その糸をたどって入り口に戻ってください」
クレータ島の王ミーノースは娘アリアドネーにラビリンスからの脱出法を教えたのがダイダロスであると確信し、彼と息子イカロスをラビリンスに閉じ込めました。
ダイダロスはラビリンスで決意します。
「ミーノース王は陸と海を支配できても、大空を支配することはできないだろう。私は、この大空から逃げてみせよう!」
息子イカロスを連れ、ダイダロスは大空へ舞い上がります。しかし……
5. ビーナスの誕生と浮気
ゼウスの父クロノスが、その父ウラノスの男根をアダマス金属鎌で刈り取り、海に投げ入れました。落ちたところから白い泡が湧き立ち、その中から女神アフロディーテ(ビーナス)が誕生しました。
なんとも、ショッキングなビーナスの誕生です。
しかし、愛は愛欲、性器に関係しているのは間違いありません。こんなビーナスの誕生を、最も美しく描いたのがルネサンスの画家ボッティチェッリです。
ところで、ビーナスには愛人が多くいたのです。神では軍神アレース、人間ではトロイアのアンキセスでアイネイアースの父、ツバメではでアドニス。さすが愛の女神です。
6. 純愛と試練「エロースとプシュケー」
プシュケーの美しさは、たくさんの人々を引きつけました。そのため、アフロディーテの神殿を訪れる人々が減り、女神はプシュケーに嫉妬し憎みました。
女神の嫉妬から始まる「純愛」物語。ここには、愛、妬み、嫉妬心、姉妹の憎悪、親子愛、試練、とすなわち人生のすべてがあります。
「愛は疑いとは一緒にはいられない!」との名言をアフロディーテの息子エロースは語り、プシュケーの元からさっていきます。はたして、二人の運命は?
7. ペルセウスとメドゥーサ
メドゥーサは、もとは美しい乙女でした。特にその髪をとても自慢にしていました。その彼女の自慢が、女神アテーナと美しさを競わせたのです。
女神が怒らないはずはありません。髪は生きた蛇で、その目を見たものは石になってしまうゴルゴンに変身させられました。2人の姉は不死で、メドゥーサのみが死すべき運命でした。
ペルセウスに妹メドゥーサが殺された時、二人の姉はどうしていたのでしょうか。
その時、ペルセウスは恐れから慌てて、全速で逃げ出していたのです。2人の姉は、彼を捕まえるべく追いかけますが……
(ヘシオドス『ヘレクレスの楯』より)
→ペルセウスとメドゥーサ。殺されたメドゥーサの2人の姉は何をしてた?
8. パリスの審判とトロイア戦争
アキレウス母テティスとペーレウスの結婚式当日。宴に投げ入れられた黄金のリンゴ。「一番美しい女神に」と書かれた札がついていました。ヘーラー、アフロディーテ、アテーナは、それぞれ「黄金のリンゴはわたしのもの」と主張。
ゼウスはこの厄介な審判を若者に任せます。『パリスの審判』です。パリスは「一番美しい女性を与える」と約束したアフロディーテに黄金のリンゴを渡したのです。
「一番美しい女性」それがメネラオスの妻ヘレネーです。パリスは彼女をトロイアに連れ去ります。トロイア戦争の勃発です。
『イリアス』と『オデュッセイア』
ホメロスの『イリアス』は、トロイア戦争10年間の最後の1年を扱っています。ですから、トロイア戦争の有名なエピソード、たとえばパリスの審判、アキレウスの死、トロイアの木馬とラオコーン、ローマ建国の祖アイネイアースの脱出などのエピソードは書かれていません。
『イリアス』には、ギリシャ総大将アガメムノンへの「アキレウスの怒り」から「アキレウスの出陣拒否とギリシャの苦戦」「アキレウスの戦線復帰」「アキレウスvsヘクトール」「ヘクトールの死と葬儀」までが書かれています。
その後、トロイア戦争に勝利したギリシャ勢は、10年間の遠征から故郷への帰途につきます。しかし、小アイアースが女神アテーナ神殿でトロイアの姫カッサンドラーに暴力をふるったため、アテーナの怒りを買ってしまいます。
ギリシャ勢は苦難を乗り越えなければ、帰国で着なくなってしまったのです。そんなギリシャ勢の一人がオデュッセウスで、彼のトロイア戦争後10年間のエピソードが『オデュッセイア』です。
前半はオデュッセウスの諸国でのエピソード、後半はオデュッセウス家の財産を食い潰す妻ペネロペイアの求婚者に鉄槌を下すエピソードです。イタケの領主オデュッセウスは死んだと思われていたので、多くの求婚者がペネロペイアを狙っていたのです。